10/27新刊チラ見せ進捗*プロローグ*
ザザン……ザザン……。
逢魔時、島の空は夕闇に包まれた。
わずかな夕陽の残影を映すばかりの暗い海の波打ち際に向かって、吸い寄せられるように歩みを進めた。草履を脱いで、冷たく湿った砂浜に足跡を残す。
パチャ……チャプ、チャプ……。ザザン……ザザン……。
寄せては消える波が、素足を砂ごと浚っては戻っていった。砂だけが海に連れられて、俺の生白い足は浜辺に沈んだまま、動かない。立っているだけの水死体だな、と自嘲するのは何度目だろうか。
そんな俺を、ミャァーオ、マーオ、と頭上のウミネコが寄ってたかって笑いものにした。睨み返す気力もなく、ただ廃棄されて役目を失った澪標のように立ち尽くす俺の肩に、一羽のカモメが留まった。
33659