prank communication寒さも本格的になって久しい真冬の夜長。
都内某所に建つマンションの一室。
暖房の効いた暖かい部屋の中でソファに凭れながら、桜河こはくは台本を読み耽っていた。
読んでいるのはつい先日、結成が決まったばかりのシャッフルユニット『La Mort』が出演する映画の台本だ。
こはくはその選抜オーディションに見事受かり、初めて従来のユニットとは異なるメンバーでシャッフルユニットを組むことになった。
一通り台本に目を通し終わると、こはくは心の裡で小さく呟いた。
──アイドルの仕事っちいうんは、ほんま、いろんな種類があるんやなあ。
これまでこはくが主に受けてきた仕事はライブや歌番組で歌って踊ったり、バラエティ番組で仲間たちと和気藹々と喋って場を沸かせるといったものばかりで、演技についてはまったくの未経験、ド素人だった。
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