おねだり真田はリョーマを布団にそっと寝かせてやった。そして、床に散らばった衣服を拾い集めると、自身のそれを手早く身に着ける。
「さ、なださ……どこ、ぃく……の……?」
真田が蒸しタオルを作って持ってこようと思い立ち、襖に手を掛けた途端、掠れた小さな声が鼓膜に届く。振り返ると、横たわりながら重くなった瞼をほんの少しだけ開いて己を見つめる、リョーマの姿。
「身体を拭こうと思ってな。台所で蒸しタオルを作ってくる」
「たおる……?ん……すぐ、かえってくる……?」
「そう時間は掛からん。だが、お前はそんなこと気にせずに、もう眠ってしまえ」
再び枕元に戻って来た真田は、膝を付くと、眠りを促すようにリョーマの目元に手を覆わせ、撫でる。
「明日は打ち合いに行くのだろう?」
「ん、いく……」
「なら、先に眠れ」
「やだ……さなださんも、いっしょにねる……」
「俺のことは気にするな」
「でも……さなださんだって、ねむそう……」
リョーマは力の入らない指で真田の手を掴んで、視界を取り戻す。
「……ほら、やっぱり……いつもおれより、はやねなんだから……」
確かに、現在時刻は既に零時を回っている。いつもならばこんな時間まで起きていることなど殆ど無い真田は、先程から何度も欠伸を噛み殺す仕草を見せ、瞼が重くなっていく感覚を抱いていた。
「しゃつと、ずぼんだけ……くれれば……」
「そんな状態では、自分で履けないだろう?」
「……じゃあ、さなださんが、きせてよ」
布団を肌蹴させると、"早く着せて"と甘えたようにとろりと緩んだ瞳を向けて真田の方へ腕を伸ばした。