水の匂い、鈴の音、愛おしいあの人の気配 〜朝〜
太陽が燦々と輝く今日という日も従者の朝は早い。自分の支度だけではなく、主人の準備もあるからだ。
「じゃみる〜俺一人でもできるぜ!」
「そう言ってこないだもワイシャツのボタンズレてたろうが」
「うっ…それを言われると…」
「なら黙って手伝われろ」
カリムがうーだのあーだの言っている隙に手早く準備を済ませてしまう。最近のこいつは自分のことは自分でやりたがるようになった。周りの人間から「普通の友人の距離感」なるものを聞込みしているらしい…。まったく、黙って俺だけに面倒を見られていればいいものを、なんて口が裂けても言ってやるつもりはない。
「ほら、行くぞ」
「へへっ、ありがとな、ジャミル」
ターバンをキュッと絞めてやる。
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