星見する托恩ごうんごうんと低い唸り声を上げながら、艦は荒野を進んで行く。
カジミエーシュ駐在員のムリナールは滅多な用事でなければ、或いはドクターの呼び出しが掛かったという状況でなければ、この艦に滞在することは無い。今回の場合は後者だった。走行路が大騎士領を通りがかるルートだったこと、また戦闘経験が豊富なオペレーターを求めていたことからムリナールに白羽の矢が立ったのだ。
現場付近の移動都市まで艦を進めて、そこから現地へ車で向かうとのことだった。まだ暫く日数が掛かることから、ドクターからはこの艦でゆっくりしていてくれという言葉を掛けられていた。
何気なく窓の外を見ると、夜になっていたようだった。十数年間オフィスで仕事漬けの日々を送っていたムリナールには、休日の過ごし方があまり分かっていなかった。強いて言うなら、街の外に出て兄夫婦の足取りを探すことくらいだ。彼らは夜空に輝く星々のように美しいひとたちだった。
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