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    9660moyunata

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    webオンリー開催おめでとうございます!
    サークルカットがそのまま挿絵になっています。
    https://twitter.com/CLweb2020/status/1381080260259680256

    FEH時空(盟主クロード視点)
    仲が悪い学生クロと盟主クロ
    ※口調が同じで発言者がわかりにくいので、学生クロードのカギ括弧を『』にしてあります
    ※ギャグ時空ゆえにキャラ崩壊気味なのでご注意を

    ##風花
    ##クロロレ

    俺が今いるのはアスク王国。なんでも異界の英雄を召喚できるとかなんとかで、俺もそれに倣いこの地に立ったと言うわけだ。全くとんでもない仕組みがあったもんだ。
    しかしこの俺に英雄だなんて大層な肩書きが付く日が来るとはな。自分の夢を追いかけていただけとはいえ、複数の国を統一し国交までガラリと変えてしまったんだ。改めて思い返せば、この無謀さは奇跡に等しいと言ってもいいだろう。
    と考えたところでローレンツの事が頭をよぎる。あの完全に浮かれきった海パンと俺は同じ英雄として扱われているのか。少し頭が痛くなった。
    ローレンツといえば、俺は元いたフォドラでまだ想いを告げていなかった。これは恋愛感情だと自覚をし、さぁ言うぞと意を固めたところでこちらに召喚されてしまったわけだ。

    この召喚という仕組みで驚くべき点というのは、英雄を呼び出せるということだけではない。同じフォドラから来たと言っても、そのフォドラの年代や迎えた結末は様々だったんだ。色々な可能性のフォドラが複数存在し、それぞれから英雄を呼び出せる。つまり同じ名前を名乗る人物が複数存在できてしまう。この俺、クロードもそうだ。ガルグマク修道院の制服を着た俺が5人ほどわらわらしているのを見て思わず叫びそうになったのは記憶に新しい。なんでも城の庭を俺で埋めつくしたいとかなんとか。全くこの召喚士は何を言っているんだ?
    ローレンツもついこの間までは11人いたらしい。くそっ、見たかったな。もう少し俺が早くここへ呼ばれていれば......じゃなくて、複数の英雄を一人に統合するってどういう理屈なんだ? やたらたくさんいる学生の方の俺も1つにまとめておいてくれよ。

    それにしてもあのローレンツがあんな開放的な服を着るだなんてな。ローレンツに想いを寄せる身であればもちろん、生肌を見てみたいと考えたことはある。前線に出て戦うローレンツへ、自身の回復手段として瞑想を習得するべく格闘術を極めるのはどうかと提案したことがあった。きちんとした戦略半分、邪な気持ち半分だ。何度か持ちかけても頷いてはくれなかった。グラップラー装備を試着してみないかと聞いた時は即行で断られた。なるほどなぁ、海へ連れて行けばよかったのか。こんな意外すぎる可能性のローレンツを見つけ出してくるだなんて、あの召喚士もなかなか侮れん。
    たしかにあれはローレンツだが、俺が元いた世界にあんなローレンツはいなかった。つまりは俺が想いを告げるべき相手ではないんだろう。

    さて、話を俺たちの方へ戻そうか。自身を猜疑心の塊だなんて呼称するような人間が集まったところで仲良くなれると思うか? 当然否だ。たしかにあいつらは紛うことなき俺だが、それはつまり信用してはならないということの裏付けだ。他人へ真意を明かさずこっそりと自分が有利になるように裏から手を回す。それは昔も今も変わらない。
    案の定、学生の俺からは随分な嫌われっぷりだ。会う度会う度おっさん呼ばわりされているが、違いはたったの5年程度なんだがな? 過去の自分から名前で呼ばれるのももどかしいから放置しているんだが。
    俺たちは普段なら正面切って誰かと対立するようなことはしない。真意はどうあれ、表面的な顔くらい取り繕っておくのが無難だ。ただ、相手が自分となるとタガが外れるんだろうな。毎度毎度言い争いが絶えない。
    そして今日は言い争いの末、ついに追いかけっこが始まった。

    「くそっ、我ながらすばしっこいやつだな......」
    今の俺はとんでもなく頭に血が上っている。自分なら1発くらい殴ったって許されるよな?
    窓から飛び出した学生の俺の後に続く。しばらくは建物に沿ってぐるぐると走っていた。学生の俺は進路を変えたと思うと、城壁の下部に空いたギリギリ人が通れる程度の穴をひょいとくぐり抜けた。あいつが通れるなら俺だって通れる。そう考えたのが間違いだった。
    「?!なんだ? 服が引っかかったのか」
    5年経とうが俺の身長は1ミリたりとも伸びなかった。横幅だって別に増えなかったさ。だけど厚手の服の上からさらに飾り布をかけている分着膨れてしていたんだ。
    肩まで通ったものの腰周りがつっかえている。この穴を通り抜けることはできない。仕方なく後退しようとするも、穴のささくれに服が引っかかって嫌な音を立てている。身動きの取れなくなった俺の前に、もう1人の俺が引き返して近付いてくる。
    『まったく、威厳なんか出そうとして無理に大きい服を着るからこういうとこになるのさ』
    片手にハサミ、もう片方の手に剃刀を持った奴がにやにやしながらこちらを見下ろしていた。
    (こいつ、絶対ろくな事考えてないぞ......)
    相手も自分ゆえにそう確信できてしまうが、同時に無駄な殺生もしないはずだと祈るしかなかった。


    『よし、こんなところだな。俺の見立て通りだ』
    癪な話ではあるが、わざと大きめの服を着ているというのはこいつの言う通りだ。童顔な自覚はある。そうすると相手からなめられることも多いが、盟主としてやっていくには不利なわけだ。縦に伸びなかった分、恰幅を良く見せるためにあえてゆったりした服を着た。髪を伸ばして髭も貯えた。そのせっかくの髪と髭を、こいつ切り落としやがった!
    「......」
    5年間で身長も変わらなかったが、顔立ちもこれといって変わらなかった。右側の髪のひと房を切らずに残し、三つ編みにして下げれば目の前のこいつと瓜二つだ。いや、似ているどころか同じと言ってもいいだろう。
    『それじゃ、しばらくは俺の身代わりってことでよろしく頼むぜ』
    そう言って学生の俺はぱちりとウインクをしながら去っていく。くっそー、ムカつくな。俺もよくやるけどこれ止めようかな......。
    慎重に身を捩ってもぞもぞと穴から這い出したところで後ろから声をかけられた。
    「ああ、丁度いいところに。同盟の在り方についてご意見をお伺いしたいのですが......」
    ローレンツか。礼儀や作法にうるさいこいつは、年上でさらに盟主になっていた俺に初めは戸惑っていた。しかしよそよそしさは次第に消え、今では会話をする機会もそれなりにあった。ローレンツから敬語を使われるというのはどうにも不思議な感覚だが、こちらもそれに慣れ始めた頃だ。
    「なんだ、ただのクロードではないか」
    「ただのクロードって何?!?!」
    振り返った俺を見るなりローレンツの態度が一変した。眉がきゅっと吊り上がり口元から穏やかさが消えた。あー、懐かしいなこの顔。これから小一時間お説教を始める時の顔だ。
    「やはり君にも盟主に憧れがあったのだな。しかし、本物の盟主殿を困らせるのは感心しないな。早くその服を返してきたまえ」
    ローレンツは俺のことを学生の俺だと思い込んでいるようだ。身代わりってこういうことかよ。ようやく合点がいったがもう遅い。
    「いや、違うんだ。これには深いわけがあってだな......」
    これまでの経緯を正直に話してみるもローレンツは全く信じようとしない。しかし同じ顔をしている以上これといった証拠が出せない。このままでは不毛なので、お小言を垂れ続けるローレンツを引き連れて学生の俺に引き合せるべく歩き出した。流石に2人の俺と対峙すれば信じてくれるだろう。
    「こら、クロード。人の話はきちんと聞きたまえ。この程度の礼儀もなっていないようでは先が思いやられる」
    安心してくれローレンツ。昔っからこんな調子で通しているが、なんだかんだ俺はちゃんと盟主になってるから。
    ローレンツを撒いてでも学生の俺が行きたがる場所はどこだ? ベタだがこの世界の書庫だろうな。修道院の書庫だって膨大な量の情報が詰まっていたが、アスク王国のもまた貴重な情報源だ。世界の成り立ちが違うのだから、俺たちのフォドラの根本的な解決に繋がるようなものはないだろう。しかし数々の異界のことが記されているということは、今まで考えたことも無いような話が転がっているに違いない。常識に囚われず世界の構造を変えてしまいたいと思う俺なら、できる限り多くの国の在り方を知っておきたいと思うはずだ。

    今度はきちんと入口を使い城の中へ戻る。相変わらずローレンツの声はよく通る。この城の分厚いドア1枚くらい優に通り抜けるだろう。ひたすら1人で小言を言い続けるローレンツと適当に流し続ける俺は、面識のない英雄の面々から変な目で見られやしないかと心配していたのだが、どうやら杞憂だったらしい。ここにいる英雄たちは変人に慣れているのか。ありがたく思いながら階段を上がりついに書庫へたどり着く。
    分厚い扉を両手で押せば低い摩擦音を立てながら開く。
    『げ、おっさんもう来たのかよ』
    やっぱりここにいたか。机に本を山積みにし、頬杖を付きながらそれらを読みふけっていたもう学生の俺が顔を上げて嫌そうな声を出した。
    「お前の行きそうな場所くらいわかるさ。異界の出とはいえ俺なんだからな」
    学生の俺は椅子の背もたれにだらんと寄りかかり、気だるげに伸びをした。
    後ろから付いてきていたローレンツを見れば、目と口を開きっぱなしにして固まっていた。視線だけが左右に動き、俺ともう1人の方の俺を行ったり来たりしている。
    「ただのクロードじゃ......ない!!」
    「だから言ったろ? 俺は盟主の方のクロードなんだって」
    「とんだ御無礼を...... クロード、お前のせいで恥をかいたじゃないか!」
    『いやー、俺たちの見分けが付かないなんてローレンツの目も案外節穴だな?』
    ローレンツは頭を抱えぎりぎりと歯を食いしばっている。今にも走り出してどこかへ行ってしまいたいのをなんとか堪えているといった様子だ。
    「そんなに気にすることじゃないと思うぜ? 俺は堅苦しいのは好きじゃないし、なんとなく懐かしい気分になれたくらいだからな」
    「しかし......」
    「そんなに気になるなら俺からのお願いを1つ聞いてくれるか?」
    「ええ、僕にできることであれば」
    ローレンツがあまりにも真剣な眼差しで見つめてくるものだから、ちょっとイタズラして無理難題を出したくなってしまう。が、今はそんな欲に蓋をして。
    「さっきまでみたいにさ、俺には気楽に接してほしいんだ。ここに来て日も浅いし、変に気を使わずにいられる間柄の知り合いが欲しくてね」
    「む......。あなたがそう仰るのであれば。慣れるまで少し時間はかかるでしょうが、そのように努めましょう」
    「ああ、よろしく頼むぜ。お前この後は出撃の予定もなかったよな? 散歩がてら城の案内でもしてくれないか?」
    「ええ、もちろん。この僕にお任せを!」
    ハキハキと答えるローレンツにはいつもの調子が戻ってきた。学生の方の俺はというと、少し距離の近くなった俺たちを見て面白く無さそうな顔をしていた。
    「さて、お前には何をしてもらおうかな」
    顎に手を添えながらもう1人の俺の方へ体を向ける。お互いに無言のまま瞬きもせず睨み合った。
    「よし決めた、当分の間ローレンツは俺の方で借りていく」
    『はぁ? なんだよそれ。元々ローレンツは俺のもんでもないし勝手にすれば......いや、だめだ。おっさんがローレンツと一緒にいていいのは俺が調べ物してる間だけだ』
    自分からローレンツを離して置いて随分な矛盾だ。察するに、こいつはまだローレンツに対しての感情に名前を付けきれてないんだろう。俺の方からちょっかいを掛けてみて、ようやく自覚ができてきたか?
    なんにせよ、このローレンツと俺が愛するローレンツは別人だ。俺が元の世界に戻るのが先か、俺と同じ世界のローレンツがこちらに来るのが先かはわからない。それまでは程々にからかって遊ばせてもらうとするかな。


    〜ぷち後日談〜
    アスク王国に俺が何人もいたのには驚いたが、先生もとい俺のきょうだいはもっと凄いことになっていた。
    水着の先生がいるのはまだいい。ローレンツと同じようなもんだ。しかし性別が違うっていうのは一体どういうことなのかね。そうすると俺にも女に生まれていた世界が......? と考えてそうになってぶるぶると頭を振った。

    学生の俺との入れ替わり事件のあとに先生と会ったが、やはり不思議そうな顔をされてしまった。ただローレンツと違って、すんなりと俺の説明を信じてくれたのが救いだった。
    先生は無表情ながらに考え込んだ後、いい考えがあるから待ってて欲しいと言ってどこかへ行ってしまった。程なくして戻ってきた先生は、手のひらサイズの細い棒を握っていた。俺たちの世界には無かったものだが、マジックペンと言うらしい。いちいちインクを付け足さなくても文字を書くことができる、まさに魔法のようなペンだと。そしてこれで文字を書くとちょっとやそっとじゃ落ちないんだと。
    先生はそのペンを使って剃り落とされてしまった髭をちまちまと描いてくれた。要するに刺青みたいなものなのかね。元々の俺の毛色に比べると少々黒すぎる気もするが、先生の好意は有難く受け取っておくことにしよう。
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