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    rosso_addict

    @rosso_addict
    犬辻のDom/Subユニバース長編書いた人。
    荒奈良も書きます。

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    ランク戦ラウンド8直後の犬飼と辻の2人反省会です。
    アニトリ3rd14話直後に情緒がめちゃくちゃになって書いたもの。

    空に落ちる「いやぁ荒れてたねぇ、二宮さん。」
    隊室から逃げるように出てきた辻は黙って頷いた。
    二宮は暴言こそ吐かなかったものの、やり場のない怒りに満ちていて、即解散とだけ指示したのは建設的な議論ができない自らを自覚してのことだろう。
    「ログ見直すのヤだなぁ。雨取ちゃんが撃ったのは防ぎようがないし、三雲君のハウンドもわかんないでしょ、あんなの。」
    「気づくとしたら犬飼先輩くらいですね。」
    「え?おれ?」
    「ヒュース君の仕掛けは気づいてたじゃないですか。」
    「そっか。三雲君ノーマークだったの裏目にでたなぁ。」
    すれ違うC級隊員達が遠巻きにこちらを見ている。
    B級以上の知り合いに会ったら笑いながら色々言われそうだ。
    「先輩、本部出て少し話しませんか?」
    「ん?いいよ。」
    「今日は気持ちがまだ落ち着かなくて……。」
    無表情な後輩の、伏せたまつげが目に留まる。
    「そうだね。どこがいい?いつもの店とかじゃない方がいいよね。」
    犬飼は端末を取り出すと周辺検索をかけた。
    「一駅向こうのカフェとかでいいかな?」
    「あ、はい。ありがとうございます。」
    辻の言葉に、犬飼の胸の中にもさざ波が立つ。
    「じゃ、行こうか。」



    犬飼が探してくれたカフェは、ジャズの流れる少し古風な喫茶店と言った方がいいような店だった。
    「あんまり学生は来なさそうでしょ。」
    「そうですね。」
    カウンターのサイフォンがコポコポと音を立てる。
    「ごゆっくり。」
    寡黙そうな店主がコーヒーを置くと犬飼はテーブルの上にノートを広げた。
    「頭ん中ぐちゃぐちゃな時は全部書き出して見るといいんだって。」
    辻にもペンを渡して、書くように促す。
    まず、犬飼は大きく『玉狛に負けた!』と書いた。
    辻はその下に『悔しい?』と書いて矢印を引く。
    「うーん、おれはそんなに悔しくはないかな。辻ちゃんは?」
    「悔しい、というのとは少し違う気がします。」
    犬飼が『そんなに悔しくない』と書き添える。
    「じゃあ視点を変えてみよう。」
    『玉狛に負けた!』の横に矢印を引いて『どうすれば勝てた?』と書く。
    「難しいですね。」
    辻は口元に手をあてて考えこむ。
    「まあ、さっき本部で話してたアレだよね。」
    『・犬飼がハウンドに気づく』と書き込む。
    辻も続けて『・三雲君を早めに落とす』と書く。
    「今回、三雲君もかなり潜んでたからなぁ。」
    後ろ頭をかきながら『・犬飼がハウンドに気づく』の上に『トリオン少ないから差異はわずか』と書き込む。
    「あと、今回のランク戦の目的が勝つことじゃないんですよね。」
    辻は戻って『悔しい?』のところに『B級1位は達成』と書く。
    「そうだね。二宮さんの指示も『雨取ちゃんが撃てるかどうか確かめる』だったし。」
    『雨取ちゃんが人を撃てるか確かめる』『撃てた』『達成!』と続けて書き込んで行く。
    「二宮さんはさ、雨取ちゃんが人を撃てないまま遠征に行くのだけは、許せなかったんだよね。」
    「鳩原先輩が……人を撃てなかったから。」
    『雨取ちゃんが人を撃てるか確かめる』へ『鳩原ちゃんが人を撃てなかったから』と書き足そうとして
    「ハトってどんな字?」
    と辻を見上げる。
    「漢数字の九に鳥です。」
    「ありがと。」
    書きながら気がついた。
    「雨取ちゃんと鳩原ちゃんの違いって、人を撃てるかの他はトリオン量だけなのか。」
    「……鳩原先輩に雨取さん並のトリオンがあったら、人を撃てなくても近界ネイバーフッドには行けたかも、ということですか?」
    「そう。ま、その場合は戦闘員じゃないらしいけど。」
    犬飼の口端が歪んだ。
    「皮肉なもんだね。」
    辻が黙ったまま『悔しい?』のところから『鳩原ちゃんが人を撃てなかったから』のところまで長く矢印を引いて横に『悔しい』と書いた。
    「……鳩原ちゃんが、人を撃てたら良かった?」
    「撃てなくても、連れて行けるくらい俺達が強かったら、良かったです。」
    「そうだね。もっとなりふり構わず鳩原ちゃんの願い、叶えてやれば良かったのかな。」
    冷めたコーヒーに口をつける。
    ミルクも砂糖も入れなかった。 



    END

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