6/25 犬辻オンリー無配用SS その日は辻の帰りが遅いというので、犬飼がスミさんの散歩に行った。
毎日朝晩散歩しているからか、スミさんは近所ではちょっとした有名犬で犬好きな人々からよく挨拶される。
「あら、スミさん。今日は違うお兄さんとお散歩なのねえ」
庭先にいたおばあちゃんから声をかけられたと思ったら、スーパー帰りの親子連れにも、
「スミさん撫でていいー?」
と元気よく聞かれるし、同じく犬の散歩をしている人にも、もちろん挨拶される。
「辻ちゃんも普段これくらい挨拶してるってこと?」
そこんとこどうなの、と犬飼はスミさんを見るが、スミさんはしっぽを揺らしながら軽快に歩いていく。
一時間ほどの散歩を終えて家に戻ると辻はもう帰宅していた。
「ただいまー。辻ちゃんも帰ってきたの? 」
リビングの方に声をかけるが返事がない。シャワーでも浴びてるのかなと浴室をのぞいたがそこも真っ暗だ。
「辻ちゃん? 」
首を傾げる犬飼の横をスミさんが通り抜けてリビングのソファへ歩いて行った。
「うっわ、寝てんじゃん」
よっぽど疲れていたのか、辻は仕事着のままソファで寝ていた。辻の体とソファのすき間には、しーちゃんがちゃっかり収まっている。
スミさんも辻󠄀と添い寝したいようだが、それにはソファはちょっと狭い。辻の脇腹に頭をこすりつけて『入れて』のお願いをしてるが、辻が目覚める様子はない。
「あ、スミさんちょっと動かないで」
不思議そうに振り向いた隙を狙って写真を撮る。最近、デスクに家族の写真を飾る人の気持ちがわかるような気がする。
「毛布とってきてあげようか」
犬飼がそう声をかけるとスミさんもちゃんと着いてきてくれた。
END