シャフ観SS(仮/まだ冒頭)※観主に固有の名前はないです。(観主表記)
「はーい!地球旅行ツアーご参加の皆様、こちらにお集まりくださーい」
『ーーご案内します。ひまわり銀河・ウェーマルトへお越しのお客様は11番乗り場へーーー』
この時代にアナログな旅行添乗員の声と、時折聞こえる機械音声とは思えないほど滑らかなアナウンス。
地球生まれの現地人や獣の特徴を持った別惑星のヒト、果ては機械の体を持ったヒトなどあらゆる人種が行き交うオリエントシティ近郊の宇宙港ロビーにて、観主はやや緊張した面持ちで壁際に立ち尽くしていた。
しかしその姿はいつもの…パラレルフライト社のオペレーターとしての制服ではなく、動きやすくカジュアルな私服。
さらにその背には大きめのリュックを背負っており、これから小旅行にでも向かうような様子だった。
「はぁーー、緊張してきた……」
事の発端は約1ヶ月前。
ヒーロー達と共に惑星テントテレスにて慰霊碑群を怪盗ヴィランのウルペクラの手から守り抜いたあの日のことに遡る。
『えっと……何かあれば、じゃないな。何も無くてもいいんです。今度、ドライブでもしませんか?』
『その時は、お客さんではなく、友達として乗ってくださいね。堅苦しいのは無しです』
荒れ果てたテントテレスの地での、星空が輝いていた静かな夜。
身を寄せ合い、たき火に当たりながらそんな風にお誘いをしてくれた『とあるヒーロー』の事を思い浮かべると、観主は無意識に顔をほころばせてしまう。
(友達……友達、かぁ……)
複雑な事情があり『友達』と呼べる相手はまだまだ少ない観主にとって、あの夜のことはとても喜ばしい思い出だった。
……そうして思い出に浸っているうちに待ち合わせの時間がやってくる。
観主が緩んでいた顔を引き締めウェアラブル端末で時刻やメールなどを確認していると、少し離れたところから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「観主さん!」
「あ…!」
早歩きで観主の方へと向かってくるのは遠目に見ても体格のよい、それでいて温和そうな顔をした男性。
彼こそが観主の待っていた相手、グローバルドライバーズユニオン所属のヒーロー・シャフトだった。
「お待たせしてしまって申し訳ないです。ちょっと…またドジをやってしまって」
そう言って照れ笑いを浮かべるシャフトはいつものタクシードライバーとしての制服ではなく、タンクトップにアロハシャツというラフでカジュアルな私服を着ていた。
「………シャフトさんの、私服………」
「ん?観主さん、どうかされましたか…?」
「あ、い、いえっ…その、私服、お似合いだなあ、と…」
見慣れないシャフトの私服姿に観主は何故か顔を赤くしてしまい、それにつられてシャフトも同じように顔を赤らめる。
「そ、そんな、俺なんてっ……それより観主さんこそ、私服がお似合いで……」
「いやいや、俺なんてホント適当な服で……」
お互いがお互いを誉め、照れ合う異様な光景に周囲の視線が刺さったが、やがてその場の空気を無理矢理誤魔化すように観主がわざとらしい咳払いをした。
「……こ、こほん。と、とにかく!」
そして観主は未だ赤くなったままの頬をそのままに、目の前のシャフトへ手を差し出す。
「今日はよろしくお願いします。…お客さんとしてではなく、『友達』として」
「っ…は、はい!」
最初はただの乗客として、次に自分に道を示してくれた恩人、そして今は『友達』として。
変わりゆく関係と胸に渦巻く温かな感情に思いを巡らせながら、シャフトは力強く観主の手を取った。
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