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    akaminikyu

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    akaminikyu

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    創作BL「つゆしらず」
    ワンライかなんかで書いたやつ

    #創作BL
    creationOfBl
    #創作
    creation

    「ほら、辿兄ぃ、起きて!」
    「んー……」
     ジリリリリと目覚ましが鳴る。けれど、その音は俺にとってはただのBGMで。おそらく数分間鳴り続けていたであろうそれに焦れて、俺の耳元で奏太が叫んだ。
    「……おはよ」
    「おはようじゃないよ、もう何時だと思ってんだよ。スヌーズ何回かけりゃ気がすむの」
    「まじか」
    「マジだって。はよ支度して出社しなよ」
    「うー……」
    「うー、じゃない!」
     布団をひっぺがされても、うううう、と唸っていたら、ドンっと体重が乗っかってきた。
    「おもっ!」
    「はよしろ!」
    「ぅえーい……」
    「ったく、こんなんでよくサラリーマンやってられんなぁ」
    「寝起きがダメなんだよ、俺、低血圧」
    「知ってるよ」
     そんな会話をしながら、少しずつ目を覚ましていく。時計の針を見て、やべ、マジでやべえわ、と一気に覚醒した。バタバタと洗面所に入り、トイレに入り、キッチンへ出ると、奏太が呆れた顔をしながらカウンターテーブルの上を指す。
    「はい」
    「っ、サンキュ!」
     いただきます、と慌てて座って、焼かれているトーストと卵を頬張った。
    「うま」
    「それは何より」
     俺とは違い、ゆったりとしている奏太は、俺の隣でコーヒーを飲みながら優雅に新聞を読んでいる。大学は?と聞くと、今日は二限、と羨ましい答えが返ってきた。俺はそのトーストを頬張り、絶妙なヌルさに仕上げてくれたカフェオレを胃に流し込むと、悪い!行ってきます!とスマホを手に取り、家を出た。キッチンから、だるそうな声で「行ってらっしゃーい」と聞こえてくる。十近くも下とは思えないしっかりした相手の声は、今日もいつもと同じくだらしない俺の胸に刺さる。


    「林田さんってルームシェアしてるんですか?」
    「え?あ、うん」
     営業アシスタントの森さんからの質問に俺は答えながら、でけー胸だなとセクハラな感想を胸にしまった。
    「実家近所の子とね。って言っても、相手が大学生だから」
    「えっ、めちゃくちゃ歳離れてません?」
    「おい……。まあ、十近く離れてるね。十九と二十八だから……」
    「小さい頃から仲良かったんですか?」
    「親同士が仕事の関係もあって、休みもよく一緒に出かけててさ。俺が社会人になるまでは結構家族ぐるみのおつきあいっていうか」
    「へえー」
     すごいですね、と何がすごいのかわからないが、そんな感想を持たれる。俺と奏太は少し年の離れた幼馴染というところだ。まあ、俺はあいつが生まれた時から知っているし、オムツだって変えたこともある。抱っこしてあやしたり、虫見せて泣かせたり……なんか色々ないたずらばっかりした気がするけれど。俺が二十三で都内に出るまでは結構べったりだったから、あいつの中学ぐらいまでの記憶はある。その頃、奏太はクラスでも一番小さくて、目が大きくてクリクリの可愛らしい……女の子みたいな子だった。あだ名が美少女とか言われて、同級生だけじゃなく高学年からもからかわれてたぐらい。
    (なのに、今はああだもんな……)
     色素の薄い髪の毛とタレ目は変わってないが、いつの間にか俺の身長を越したあいつは、身長180オーバーの水泳選手になっていた。大学はスポーツ推薦ではなく、実力で国立大に入っていて、よく大会などにも出ている。いわゆる文武両道。ノリと口のうまさだけで生きてきて、現在営業成績もそこそこの俺(言っておくが常にノルマはクリアしているので悪くはない)とは大違いだ。
    (そういや、あいつ大学に友達とかいんのか?試合と練習以外、俺といる気がするけど)
     そもそも、彼女の一人や二人いそうなものだが、そういう話を聞いたこともない。まあ、歳の割には落ち着きすぎているから、そんな話もしたことがない。まあ、いま俺に突っ込まれると、彼女いない歴2年(絶賛更新中)なので困るのだけれど。
     奏太の大学が決まって、都内に出てくると聞いたとき、一緒に住むか?と提案したのは俺の方だった。あいつの大学と俺の職場の中間地点がちょうどいい場所で。けれど、一人で部屋を探すには少し割高だった。お互いに家賃や生活費の節約にもなるし、俺の方が会社の福利厚生で多少援助はしてやれる。水泳で忙しく、バイトなんかもできないだろうし、家事も分担できればWin-Winってやつ。家事は奏太に負担がいってるかもしれないけれど、土日は一緒にしたりしてるし。今のところ不満はなさそうだ。
    「今の大学生ってなに好きなんですか?」
    「さあ?そんな話あんまりしないし……おとなしい奴だから。水泳やってるんだけど」
    「えー、写真とか見たーい。筋肉過ごそう〜」
    「……森さん、紹介はしないよ?」
     女子とは恐ろしいもので、なんとなくこれは奏太のイケメンっぷりをセンサーで感じ取ってそうだと思う。写真を見せるのはなんだか危険な気がして戸惑ってる俺に、森さんは遠慮なく聞いてきた。
    「大学生とか、大学デビュー!とか彼女がー!バイトがー!で元気なんじゃないですか?」
    「うーん、落ち着いてる奴なんだよね。あんまりそういうのわかんない。水泳に真剣だし」
    「えー、ますます気になる」
    「なに、なんの話?」
    「林田さんのルームシェア相手がイケメン大学生だって話」
    「俺はそんなこと一言も言ってない」
    「女の勘です」
    「こわっ」
     俺はゾッとしながらも、ダラダラ会話を続けていた。彼女、ねえ。奏太にもそりゃあできてそうだが、できていたとして俺にわざわざ報告するだろうか?
    (隠しそう〜うまくやってそうだけど)
     あいつが酒でも飲めるようになったら、酔わせて聞いてみるか……そう思ってふとスマホを見て気づく。
    「あ」
    「?どうしました?」
    「いや、なんでもない」
     俺はとあることに気づいて、ちょっとトイレ、とその場から抜け出し、スマホであることを調べ始めた。





    (やー、間に合ってよかった)
     深夜まで空いているケーキ屋を探し、小さなホールケーキを買った。電車も混んでそうだったので、二駅だし、とタクシーで帰る。マンションのすぐ側のコンビニで安いワインとビールを買い、このぐらいしてやんねーとな、とギリギリ今日中に家に帰れそうなことにホッとする。
     昔から、奏太の家とは家族ぐるみの付き合いで……お互いの誕生日はよく一緒にお祝いをした。去年もギリギリ思い出してコンビニケーキを買って帰ったけど、流石に二十歳はホールだろ、と俺の方が浮かれてしまう。ケーキ屋さんでもらったプレートには、ネタで「そうたくん」と書いてもらったのだが、お店の人の「息子さんお誕生日おめでとうございます」の言葉がきつかった。
    「……あれ?」
     部屋に帰ろうとすると、俺の部屋の前に誰かいる。奏太じゃない影は俺よりも少し年上ぐらいの男性だった。ひょろっとした体格のその人の前に奏太がいる。
    「奏太?」
    「あ……辿兄、おかえり。今日、終電じゃなかったの」
    「あ、うん」
     俺がちらっとその相手を見ると、相手は俺のことを値踏みするような目で見て、同居人?とだけ聞いてきた。なんだか少し柄が悪そうというか。スポーツマンや普通のサラリーマンではなさそうな感じを受ける。
    「どうも、奏太がお世話になってます」
    「ああ、はい。じゃあ……また」
    「うん」
     バイバイ、と奏太はその相手に手を振って、そして俺の方を見た。すぐにそらされた視線に違和感を感じたけれど、そのまま部屋へと入っていく。
    「会社の飲み会だって言ってたから、いつもみたいに日付変わるのかと思ってた。ごめん、人入れちゃって」
    「いや、別に。俺だって入れることあるし」
    「連絡しとくべきだったよね」
     なんだか後ろめたそうな態度に、変なビジネスとか仮想通貨とかそういうのに引っかかってんじゃないだろうな!?とか余計な心配をしてしまう。いや、けど、今はそんなことよりもあれだ。
    「だから気にしてないって。いや、今日、あれじゃん?」
    「あれ?」
    「お前、誕生日だろ」
     二十歳、おめでとう、とケーキを酒を出すと、奏太は目を見開いて驚く。え、あ、マジで、と目をパチクリさせるのが少し可愛くて、コーヒー入れてやろうか、と俺よりも高いところにある頭を撫でた。
    「あ、ありがと……よく覚えてたね」
    「そりゃ、毎年やってたじゃん?」
    「でも、去年はおばさんからのラインで気づいたって。あ、今年も?」
    「違うわ。ちゃんと覚えてたわ。ケーキもあるだろ。コンビニじゃねーし。新宿のうまいとこのだし」
     知らねーけど。検索でそう書いてあったからオッケーだろ。実は飲み会まで忘れてたけど。よし、ぎり今日中だしオッケーだ。夜だし、あんまり濃いのもな、と薄めにインスタントコーヒーを作り始め、はい、とケーキを出す。奏太は嬉しそうにケーキを写真に撮って、いそいそとそれを切り分けていた。
    「うわ、めっちゃ嬉しい」
    「プレゼントはまだ無いけどな。今度なんか買ってやるよ」
    「え、マジで」
    「おー。あんまり高いのは無理だけどな。何か欲しいもんあるなら言えよ」
    「え……マジで!?」
     わー、と、いつもより少しだけテンションの高い様を気にしながら、ケーキをコーヒーを前に俺は満足していた。後で酒も飲もうぜ、と見せてはたと気づく。
    (奏太、ちょっと酔ってる……?こんなテンション珍しいな……)
     さっきの男と飲んでいたのだろうか?明らかに大学の友人ではなさそうだし、気になるが……カタギな感じもしなくて切り出すのも憚られる。しかし、さらっと話題に出しておくか、これは人生の先輩として。ケーキにいただきますをしてフォークで突きながら、さりげなく聞いてみた。
    「さっきの人、大学の人かなんかか?俺より年上っぽかったけど」
     さりげなく誘導尋問に入っていこうとすると、奏太はケーキをパクパクと食べながら、上に乗っているイチゴを頬張りつつ、ちょっと考えた。
    「んー……セフレ?」
    「っ!?」
     俺は……その年下の幼馴染の口から出てきた「想像もしていなかった言葉」に驚いて、フォークを落としそうになる。今、お前、なんて言った?
    「せ、せふ……っ?」
    「あ。しまった」
    「しまった、じゃない!お、前……」
     いや、明らかにあれは男だった。男性同士ってこと?だよな?と俺はぐるぐると混乱する頭のを整理しながら、待て待て、と奏太に事実を確かめようとする。
    「お前、酔ってるんだろ。からかうのはやめなさい」
    「お酒は飲んだけど……。いや、まあ、いいじゃん。ごめん、忘れて」
     ハハ、と奏太は少しだけ乾いた笑いをこぼし、まずったなあ、という表情を見せた。これは突っ込まない方がいいんだろう。いいんだろうけれど、衝撃だ。
    (いや、でも、これからも同居続くわけだし、俺に否定されると辛いのでは!?)
     俺だって今日は飲み会で酔っている。けれど、その酔いは一気に冷めてしまった。まあ、とりあえず、こっちも開けるか!とビール缶を開けて、無駄に乾杯をして奏太に酒を勧める。奏太はあまり語らず、けれど、一気にそれを飲み干す勢いで飲んでしまった。いや、お前……今日、初飲みなんだよな?確かにおじさんは酒に強かったけど……。
    「奏太……?飲み過ぎじゃないか?平気か?」
     ちょっと心配になって話しかけるが、奏太はそれには答えずに、あのさ、と俺に問いかけた。
    「……辿兄、俺のこと、気持ち悪いって思う?」
    「え、いや、その……驚きはしたけど」
     マジなのか。マジなのか、お前。え、どっち?お前が抱かれるの?いや、抱く方だよな?体格的に?わからん!いや、こんな想像は下世話だろう。俺はお前の赤ん坊の頃からの姿も記憶にあって、オムツも変えたことがあれば、可愛い女の子みたいな時期も知ってて……。
     いろんな思考がぐるぐる回る中、凹んだように視線をそらす奏太の体はなんだか小さく幼く見えた。俺は、気持ち悪いなんて思ってないよ、と伝える。
    「そういうのは自由だろ。せ、セフレはどうかと思うけど……心配って意味でだぞ!?やめろって意味じゃなくて……」
    「……そう」
     少し声のトーンの落ちた奏太にどきりとする。傷つけたかなあ、なんて思いつつ、隣に座ってるそいつの表情を見て……ギョッとした。
    「ご、ごめん……、俺、変なこと言ったか?」
    「……んーん」
    「悪い、何か傷つけるようなこと……」
     そういって覗き込んだ瞬間、ぐっと引き寄せられる。
     え、と思った瞬間には唇が触れていて、嘘だ、と思った時には頭を掴まれ、そのまま深くまで。
    「っ!」
    「い……った……」
    「っ、そ、ぅた!お前、酔ってるだろ!」
    「……うん」
     酔ってる、と俺が噛んで切れた唇も気にせずに、奏太の顔がまた迫ってくる。やめろ、やめなさい、となぜか敬語で諭しながら体を押し返しても、向こうの腕力の方が強くて、俺はびっくりしてその腕に抱き込まれた。
     必死で顔をそらして、やめろ、と胸のあたりをどんどんと殴ると、奏太は諦めたように力を抜き、そして、涙を目の端に浮かべたまま俯いた。
    「……どうでもいいんだよね、俺のこと」
    「お前が、酔ってるからだろ!」
    「……酔ってるけど、酔ってないもん」
    「モンって……お前……あのなあ……」
     呆れたように声をかけると、奏太はその潤んだ視界を拭って、いい加減自覚してよ、と吐き捨てた。
    「……大人になったら、結婚するって言ったのに」
    「は?」
    「俺が二十歳になったら、結婚してくれるって言ったのに」
    「……え」

    「辿兄は俺がどんな気持ちでこの一年半過ごしてたか、わかんないんだろうね」

     まっすぐな視線で射抜かれた俺は、そのまま言葉を失った。窺うように触れるだけのキスを拒めずに、そして、ため息とと共にそこを去った奏太に声もかけられず。
     唇の端に残ったアルコールの味は、吐き気がするほど苦かった。
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    akaminikyu

    TIRED創作BL「つゆしらず」
    ワンライかなんかで書いたやつ
    「ほら、辿兄ぃ、起きて!」
    「んー……」
     ジリリリリと目覚ましが鳴る。けれど、その音は俺にとってはただのBGMで。おそらく数分間鳴り続けていたであろうそれに焦れて、俺の耳元で奏太が叫んだ。
    「……おはよ」
    「おはようじゃないよ、もう何時だと思ってんだよ。スヌーズ何回かけりゃ気がすむの」
    「まじか」
    「マジだって。はよ支度して出社しなよ」
    「うー……」
    「うー、じゃない!」
     布団をひっぺがされても、うううう、と唸っていたら、ドンっと体重が乗っかってきた。
    「おもっ!」
    「はよしろ!」
    「ぅえーい……」
    「ったく、こんなんでよくサラリーマンやってられんなぁ」
    「寝起きがダメなんだよ、俺、低血圧」
    「知ってるよ」
     そんな会話をしながら、少しずつ目を覚ましていく。時計の針を見て、やべ、マジでやべえわ、と一気に覚醒した。バタバタと洗面所に入り、トイレに入り、キッチンへ出ると、奏太が呆れた顔をしながらカウンターテーブルの上を指す。
    「はい」
    「っ、サンキュ!」
     いただきます、と慌てて座って、焼かれているトーストと卵を頬張った。
    「うま」
    「それは何より」
     俺とは違い、ゆったりとしている奏 5629

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