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    千ゲ

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    口説く時には直球で

    口説き文句も直球なのだろう、とは誰に言われたのだったか。否定するべくもない。する気もない。回りくどく言葉を選んで意志を伝えるのはお言葉どおり、不得手なのだし、どうしても必要ならば誰かに任せればいいと俺はもう知っている。下手に気を回すのは俺にとって完全に非合理的だ。だからいわゆる火の玉ストレート、豪速球、ど真ん中、直球。

    「愛してる。付き合え」
    「う〜ん、そうかあ」

    だから事実をただ、ひとつ。要求もたったひとつ。
    目の前の男はひくりと口の端を動かした。いつも通りの直球を一旦受け止めてみせて、後ろ頭をかりかり掻く。

    「愛しちゃってるかあ」
    「ああ、愛しちゃってる」
    「付き合って欲しいかあ」
    「付き合って欲しい」
    「……やだあなんかそういう言い方するとおぼこい高校生みたいでカワイーッ、あの千空ちゃんが!もぉ一回言ってよォほらっ、付き合って欲・し・い!」
    「あんだテメェ、おぼこい高校生だわこちとら、誤魔化すなイカサマメンタリスト!」
    「あーそういうこと言う〜?千空ちゃんってほんと千空ちゃん〜」

    愛する男は呆れたように口元を紫色の袖で隠した。とぼけるようにあらぬところを眺めるそいつのまぶたが柔らかく三度閉じて、開いて、それからやっとそいつはこっちを向いた。

    「なんとか上手く言おうとか思わなかった? ド直球なんですけど」
    「こんなセリフを言う日がくるとは思わなかったがな、それしか知らねえ」
    「やー俺も聞く日が来るとは思わなかったナ」
    「それで、四の五の戯言は非常に全く死ぬほどどうでもいい。要求に対する返答は?」

    のらりくらりとしたやり取りにじわじわと絶望感が心に染みるのをどうにか隠して、ぐっと男を睨みつける。男はあー、と低い声で唸った。

    「直球勝負は苦手なんだけど、でもねえ、直球要求には直球でしか応えられないよねえ」
    「……っ」


    「俺も脳みそ溶けちゃうほど愛してる。結婚して?」


    (応える時には可能な限り婉曲に)
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