東の話 あんたら、いつもそうだよな。そんなシノの不機嫌そうな声が授業中に聞こえてきた。居眠りをしていたネロを注意していたファウストがキョトン、とシノを伺う。シノは声と違わず不機嫌そうにファウストを見ていた。
「なんのことだ?」
「知らない」
「シノ」
窘めるように声をかけたのはヒースクリフだった。ただ彼は、シノがどうして不機嫌なのかがわかっているようで、困ったように視線をさ迷わせる。そんな彼を一瞬視界にいれたシノは、ため息をついた。
「あんたら、どうせまた夜遅くまで酒でも飲んでたんだろ」
眠そうに頬杖をついていたネロが目を見開く。その後、恥ずかしそうに笑った。ちょっとした悪いことがバレてしまった子供のような顔だった。そんな顔すらシノには腹立たしかった。
「いつもそうだ、あんたら二人だけでこっそり何かやってる」
ぽつりぽつりと零した不満は、降り出した雨のように止まらない。きっと、雨宿りをしたところで止むことはない。濡れて帰るしかないのだ、とファウストもネロも思った。
「それがただの晩酌ならいい。たまには俺やヒースも誘って美味しいもの食わせろって思うけど、別に危険な事じゃないから。でもあんたら危険な事でも俺たちに言わないだろ」
隠されるのが嫌だ、とシノは表情をゆがめた。ヒースは何も言わない。ただ真剣な顔でシノの横顔を見つめていた。