Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 65

    hiromu_mix

    ☆quiet follow

    付き合ってないのに酔った勢いでラブホに行くオル相の話です。
    続きを書くかどうか未定ですがとりあえずここまで。

    だから酒のせいということにしてしまおうか誰だよこの人に酒飲ませたのは。
    相澤は、目の前で分かりやすく千鳥足で歩く大きな背中を見つめ、額に手を当てた。自分もそれなりに飲んだはずだが、それすら吹っ飛びそうなほど、彼の酔い方は典型的酔っ払いで、厄介だ。
    「相澤くぅん」
    くるりと振り返って、へらりと笑う。いわゆるこの姿がトゥルーフォームだと言う、平和の象徴オールマイトは、そのやせ細ってもなお大きな身体で、器用に上目遣いで相澤を見ると、首を傾げてへにゃりと眉を下げた。
    「相澤くん、どこか具合悪いのかい?」
    「いや……」
    あなたを見てると悪くなりそうです、と言ってやりったくなる気持ちをぐっと堪え、相澤はひらひらを手を振った。
    「それより、ちゃんと歩いてください、ぶつかりますよ」
    普段の、背中にも目がついてんじゃないかって思うような身体能力はどこへやら。ふらふら揺れて、電信柱にぶつかりそうになるのを手で制してやれば、オールマイトはやたら嬉しそうに目を細める。
    「相澤くんは、優しいねえ」
    「そうですか、そう思うならもう少しちゃんと歩きましょうね」
    こちらをきょときょとと振り返るのを、前を向けと引っ張って。先導するように相澤は歩き出そうとして、あの、とオールマイトを見上げる。
    「こっちで、あってんですよね、あんたの自宅」
    こっちだよ、とずんずん進むオールマイトを信じてここまで来たが、少し不安になって相澤がそう聞くと、オールマイトは赤い頬の上にある青い目を見開き。それから眉間に皺を寄せて、うーん?と唸る。
    「違います?なら、どこの通り沿いですか?住所は?俺、この辺は土地勘あるので、教えてもらえれば行けますよ」
    「うーん、ねえ、相澤くん」
    「はい」
    「わたしのうち、どこだっけ?」
    迷子の仔猫のような困惑した顔で、オールマイトは相澤を見つめてくる。これが、本当に迷子のかわいい仔猫ならば喜んで保護するが、残念ながら彼は猫じゃないし、自分よりなにもかもデカい。
    知るか!とそこいらへんにほっぽって、とんずらしたい気持ちになったが、そうはいっても彼はこの日本を代表する平和の象徴だ。酔っぱらってゴミ捨て場で寝てましたとか、そんなことになっては子どもたちの夢が崩れ落ちてしまう。
    相澤は考え、それからため息を吐くとオールマイトをすぐ目の前にあった児童公園へ連れ込んだ。ベンチに座らせ、びしりと指を突き付ける。
    「10分待ってください、どうにかします」
    相澤は、スマートフォンの地図アプリを起動し、検索条件に『ホテル』と入力。そして、ズラリと出てきた中からまずは、一番近くのビジネスホテルの通話ボタンを迷うことなくタップした。



    「はあ、そうですか、わかりました」
    今夜は満室です、と返答する慇懃無礼な声をすでに5回以上聞いた。週末金曜日の、もうすぐ天辺。そりゃあそうなるかとため息を吐く。このあたりのホテルは、雄英高校に関わる業者や来客などの利用も多いと聞いたことがあった。その上この時間だ、普通のホテルならば例え空室があっても迷惑だろう。
    今電話をしたホテルの、説明表示をバツ印で消して。次のホテルに当たろうかと思ったところでふと、検索には出てきたがさすがにどうかと思って対象から外したホテルの、地図上の赤いアイコンを見つめる。場所は、正直ここから一番近くにある。さっき通り過ぎたときにも、空室のランプを見て、一瞬、ここに突っ込んでやろうかなんて物騒なことを考えていた。
    悩むより、行動したほうが合理的か。
    相澤は船を漕ぎはじめたオールマイトの腕を掴んだ。ハッと、彼は顔を上げるが、どこか寝ぼけたような顔だ。まあ、明日の朝びっくりはするだろうが、まだ初夏の、夜は涼しい季節にこんな場所に放置していくよりましだろうと判断。
    「オールマイトさん、歩きます」
    「ん、ううん」
    「すぐ近くなんで、もう少し頑張ってください」
    ぐいと肩に腕を回したところで、身長差のせいで立たせるまではできない。いっそ抱え上げるかと思ったが、オールマイトは少し覚醒したのか、ゆるりと立ち上がった。
    「どこ、いくの」
    「とりあえず、あなたが寝れるところに」
    そっか、と呑気に頷いて、オールマイトは相澤に手を引かれて歩き出す。その手は振りほどかれることもなく、オールマイトは相澤の後ろからとことことついてきたので、ほんの少し、これから連れ込む場所を考えると、なんだか悪いことをしている気分。
    「つきました」
    500メートルほど、戻ったところにあるそれは、その手のホテルにしてはひっそりとしていた。よかった、まだ、緑色の空室ランプがついている。頭を少し屈めて中に入れば、中は意外に天井が高くて広かったのでほっとした。いくつかある部屋の内装が書かれたパネルを横目に、残り二つだった空室の部屋のうち、広い方を選んで相澤は宿泊のボタンを押す。電子音と共にカードキーが出力されたので、相澤はそれを掴んだ。
    「行きますよ」
    きょろきょろと不思議そうにあたりを見渡すオールマイトの手を掴んで、狭いエレベーターに押し込んで、「4」を押す。身体が触れそうなほどに狭いエレベーターは、そう言えば以前、潜入捜査か何かの時に、そうすることで恋人同士の距離が近付いていいのだよと教えてもらった記憶。別にオールマイトは恋人でもなんでもないが、その大きな身体で覆いかぶさるようにされれば、場所が場所だけに多少はどきりとしてしまうのは仕方がない。気にしないようにと顔を背け、のんびりしたエレベーターの階数表示を睨んだ。4階、のところで止まり、ドアが開いたのでオールマイトの服の裾を掴んだまま相澤は廊下に向かって足を踏み出す。深い緑色をした絨毯は、意外にきれいで、その上を足音もなく並んで歩く。一番奥の部屋番号が点滅していたので、ここに入ります、と言えば、オールマイトはぼうっとした顔で頷いた。分かってんのかな、と不安になるが、まあ、後は寝てもらうだけだし。
    鍵を開け、ドアを開ければ、どどんと大きなベッドが目の前に鎮座していた。うん、予想通り、異形型でもいけそうなサイズ。オールマイトの、今の痩躯であれば問題ないだろう。靴を引っ張るように脱いで部屋に上がれば、オールマイトもおっかなびっくりと言う様子で靴を脱いだ。ベッドに腰掛け、部屋を見渡す相澤の隣に座ると、今まで何も言わなかったオールマイトが、ねえ、と口を開く。
    「ここ、私のうちじゃないよね」
    「そうですね」
    「相澤くんち?」
    「んなわけあるか」
    フンと鼻を鳴らせば、オールマイトは酷く不思議そうな顔で首を傾げる。
    「ここ、どこ?」
    「ホテルです」
    「ホテル」
    へえ、とオールマイトは天井を仰いだ。広くて天井が高いのは良いが、何の雰囲気づくりなのか、けばけばしい紫色の天井はところどころが鏡張りで、オールマイトのぽかんと口を開けた顔が写り込んでいた。派手なだけの安っぽいシャンデリアがそのはざまに下がっている。真四角みたいな大きなベッドと、壁にも、ところどころに鏡。部屋の一角にはガラス張りの洗面所があって、かろうじてトイレは胸のあたりまで目隠しがあるが、風呂はまったくの丸見えだ。
    オールマイトは一通り観察したのか、また相澤に視線を戻し。
    「――私の知ってるホテルと、なんか違うねェ」
    不思議そうにそう言うので、内心相澤は、うるせぇ、という気持ち。誰のせいでこんな場所に来てると思ってるんだ、俺だって、来るのは潜入捜査以来。恋人なんてろくに作ってこなかったので、仕事以外で来るのは初めてだ。
    「まあ、そうでしょうね」
    それでも、そんな動揺などみじんも出さずに相澤は答える。
    「ここは、ラブホテルですよ。いわゆる、セックスするためのホテルです」
    ニヤと笑ってそう言ってやれば、あからさまにオールマイトがぎょっとしたので。相澤はどこか胸がすくような感じがした。
    「えっ、っ、え、な、な、んで、わたし、と、きみ、で!?」
    混乱したように、ベッドの上で後退り。指を自分と相澤、交互に向けて、目を白黒させるオールマイトに、相澤はフハと笑った。
    「嘘です。ホテルの趣旨としたらまあそうなんですが、別に寝るためだけに使っても問題はないので」
    「ね、る」
    「ええ、もうこんな時間なんで、あんたは寝てください」
    「おふろ……」
    「ここに入る気ですか?」
    ぐいと親指で示してやれば、うう、とオールマイトはガラス張りの向こうを見て唸る。
    「何で、丸見えなの」
    「そりゃあ、恋人同士なら盛り上がるんじゃないですか?」
    知りませんが、とやけっぱちな気分で応えれば、オールマイトは、へえ、そうなんだね、と一段落としたトーンで呟いた。
    「相澤くん……こういうとこ、慣れてるの?」
    「は?」
    「誰かと来たり、するの」
    誰かって、誰だよ。相澤の交友関係なんて、オールマイトが知ってる面々までだ。その中に恋人も居なければ、そもそも恋愛対象人ある相手すらいない。けれどそれを馬鹿正直に言う気にもなれず、相澤はぼりぼりと頭を掻いた。
    「――それ、あなたに何か、関係ありますか?」
    オールマイトは黙り込んだ。青い目が、けれど何か言いたげにじっとこちらを見つめるので、視線を逸らし、相澤は大きく息を吐く。
    「不毛な会話はやめましょう、オールマイトさん。明日は予定とか大丈夫ですか?俺は、休日出勤で片付けたい仕事があるんで、あんまり寝不足になりたくないんですよね」
    オールマイトをここにおいて、自宅に自分は帰るつもりだった。けれど、それなりに飲んだアルコールが、多少ホッとしたせいか思い出したように血液を巡りはじめたようで、じわじわと眠気が襲ってくる。
    「添い寝してあげますんで。あんたも寝ましょう」
    おおぶりなフリルがついた布団をめくり上げ、真っ白なシーツの上にヒーロースーツのまま横になる。捕縛布は飲み会では邪魔になるだろうと置いてきたから、寝るのに不自由はない。オールマイトは少しばかり逡巡するように自分が座った場所から動かなかったが、ゆるゆると立ち上がると、着ていたスーツのジャケットを脱いで近くのソファの背もたれにかけた。ネクタイも解き、ベルトを外して靴下を脱ぐ。それから、ベッドに乗り上げてきた。相澤の、思ったよりも近くで身体を仰向けに横たえた。相澤はその身体の上に、布団を掛けてやって、自分も引っ張ってもぐりこんだ。
    「電気、消しますよ」
    「うん」
    ベッドの上にあるパネルから、多分ライトだろうと言う表示を探してライトを消す。真っ暗ではトイレにも行けなくなりそうだと、足もとのダウンライトだけ付けた。ぼうっと、オールマイトの姿がぼんやり照らされているが、青い目が開いて、こちらを向いていたので相澤はそ知らぬふりで目を閉じた。
    「おやすみなさい」
    「相澤くん」
    「寝るんですよ、オールマイトさん」
    「ねえ、相澤くん」
    そろ、と肩にオールマイトの指先が触れた。ぱっと目を開ければ、ぎしりとベッドを鳴らして、オールマイトが相澤に近付いてきて。思ったより至近距離にある青い瞳に相澤はぎょっとする。
    「セックスする場所、なんでしょう、ここ」
    「オールマイトさん?」
    「しないと、もったいないんじゃない?」
    する、とオールマイトの手が相澤の頬に触れた。それは酷く冷たくて、近くで見る頬が赤くて目が潤んでて、布団の中の身体が熱くて鼓動が早くて。ああこれは間違いなく酔っ払いだ、と思ったけれど。
    ほんの、少しだけ。
    この人がどんな風に他人を抱くのか、興味あるな、って。寄せられた唇を拒まずに目を伏せたのは、多分、相澤も酔っていたからだろう。そういうことに、してしまおう。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖❤💖😭🌋💴🌋🌋💴💴💘😍💴💖💘💘💴
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works