ニキこは(つきあってない)
「あーん」
三色のおはぎが並んでいる。つぶあんのおはぎ、きなこのおはぎ、そしてこれは多分青のりのおはぎ。東日本では緑のおはぎは"ずんだ"が多いが、西日本は"青のり"が多い。そして、さっきからこはくちゃんがお箸で美味しいそうなおはぎを口の前に差し出してくれる。気がついたら食べてしまう。だって、こはくちゃんの手料理。
「ニキはんに食べさすの楽しいわぁ」
「もっもっも。んむんむ。くは。美味しいっすねえ! いくらでも食べられるっす!」
「おおきに。料理人にそう云われるとうれしいわぁ」
「こはくちゃんのおはぎだから美味しいんす!」
「ほんまに?」
「こんなに美味しいんじゃ、こはくちゃん、お嫁さんに欲しいくらいっすね!」
「ん?」
云ってしまった言葉を反芻したら、それは告白にも近い台詞。こはくちゃんは菫色の目を潤ませてこっちを見つめてある。
「あっ、わ、今のナシ! 言葉の綾! えっと……」
あわあわしてたらこはくちゃんが首を傾げて上目遣いの菫とめがあう。
「……お嫁さんにしてくれへんの?」
「んっ!?」
ごくり、と飲み込む。どうしよう、なんで答えればいい? あわあわしてる僕を見て、こはくちゃんは悪戯っぽく、わらった。
(210109)