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    凪茨のお話は
    「君はきっと知らないだろうね」で始まり「暖かで優しい感情を貴方が教えてくれた」で終わります。

    #凪茨
    Nagibara

    凪茨「君はきっと知らないだろうね」
    「……は?」
    ぽそりと落とされた言葉があまりに唐突だったものだから、拾い損ねてしまった。文脈もクソもなく、抽象的な質問は何に対してだか検討もつかない。わからない、という意味では自分が『知らない』のは紛うことなき事実である。
    ESビルから星奏館までの帰り道。明日のスケジュール確認を終えてジュンが殿下の機嫌を損ねただとか、サークル活動で工芸茶を飲んだだとか他愛ない話をしながら歩いていた。
    話題が途切れ、初夏の爽やかな風が静かに通り抜けたときだった。
    自分がわからない、または理解出来ない言動を閣下がなさるときはまず矢継ぎ早に質問し、会話を繋げ、閣下が仰りたいことを互いに言語で共有することが定石。
    この人が唐突なのはいつものことなので今さら驚くことはない。と、さっそく口を開きかけたところで片手で口をガッと塞がれた。
    「ねえ、茨」
    「……っ!、んっんっ!?」
    「……うん、君の閣下だよ」
    突然の出来事に反射的に反撃しそうになるのを理性と根性で堪える。
    口というプライベートゾーンを抑えられている嫌悪感。自分の主君たる閣下に怪我を負わせるわけにはいかないという矜恃。この2つがせめぎ合いぶつかった。
    自分の口を覆った閣下の手の、熱がじんわりと伝わってくる。何が「うん」なのか全然わからないが、「すん」とも言えない状況で一体どうしろと?
    脳内の引き出しからアンガーマネジメントを取り出し、怒りを6秒間やり過ごす……前にやっぱり耐えきれなくなって閣下の腕を両手で掴み降ろして離し、突き飛ばさないよう自分が後退して距離を取る。
    この間、時間にして3秒。体感15分。荒くなりかけた息を整えて大きく深呼吸をする。両手を前に出した状態のまま構える。
    「……いきなり何するんです?」
    「うん、ごめんね?」
    「まったくもうっ危うく噛みつくところでしたよ!お戯れもほどほどにして下さいね!」
    なんの意図もないこのやり取りは、気まぐれにちょっかいを掛けられたのだと解釈した。じゃないと困る。なににって?なんかにだよ。
    「戯れ……なのかな?」
    「それ以外あります?」
    「いや、うん。茨にとってはそうかもね」
    「なんですかその含みのある言い方は……」
    「私はたぶん、確認したかったんだと思う」
    「自分の警戒心の低さの確認ですか?」
    「ううん、君と私の縮まった距離かな」
    「まあさっきは0距離でありましたね!!」
    そもそもこの方は行動の理由を後付けで考えている節がある。深く考えても無駄だと、この時はそう思っていた。そう、思い込みたかった。

    ****

    (暖かで優しい感情を貴方が教えてくれた。まで行けなかったね。)

    凪茨のお話は
    「君はきっと知らないだろうね」で始まり「暖かで優しい感情を貴方が教えてくれた」で終わります。

    #こんなお話いかがですか #shindanmaker
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