怪□セイント・◯ールパロクロは、怪盗姿の俺がすきなんだよ。普通の俺なんか、多分ぜんぜん興味ないし。そう呟きながらも、唇の先が拗ねるように尖っているのは、多分気のせいじゃない。その指先が手持ち無沙汰にくるくると前髪を弄ぶのも。
「ねぇ、夜久くん、聞いてる?」
「聞いてるだろって。つか、ここ礼拝堂だからな。愚痴ならあとにしろー」
「ちょっとくらい聞いてよ。シスター見習いでしょ」
「牧師見習いだっつの」
小さく睨むと。だって、と拗ねたようにもにょもにょと言葉を萎ませる。人前では絶対見せない素の表情を見せてくれるのは嬉しくもあるが、その言い間違い――に託つけた揶揄は当然許容できない。
むぅー、とブスくれるその小さな少年が、まさか世間を騒がす怪盗だなんて、言ってもとても信じてもらえそうにないなと思いつつ、ご機嫌取り宜しく個包装の小さなアップルケーキを投げて寄越す。
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