花言葉に託して== 花言葉に託して ==
一、
「母さん、その花どうしたん」
「花菖蒲。お隣さんにもろたん。花言葉は」
「『あなたを信じる』やろ。毎年言うてるから覚えたわ」
「菖蒲って5月5日の誕生花なんやって。狂児のお花やねえ」
「はいはい」
狂児の母は花を活けることが好きな人だ。家の近くの公民館で、生花のナントカ流を数年ほど習ったことがあるらしい。おかげで家にはいつも大小何かしらの花が飾られていた。季節の花、節句の花、行事の花。5月5日、狂児の誕生日が近くなると決まって花菖蒲を活けて飾った。柔らかくも深い紫色の花びら、剣のようにスッと伸びる鮮やかな緑の葉。母は花を活けるたび、その花にまつわる花言葉や季語や誕生花の話をしてくれた。狂児がその話に耳を傾けていたのは、小学校を卒業するまでだったが。
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