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    082musume

    @082musume
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    10/30予定のsuntan本、最初の小説部分出来たので晒しときます。文が多くなったらpixivにも置く予定。

    笑顔の魔法使い(suntan、過去捏造)笑顔の魔法使い

    「ケルの笑顔って不思議だよね」
    まだ学校に行くよりもずっと前に、兄貴のヒロからそう言われた。
    「んー?そうか??」
    「うん、そうだよ」
    「ふーん、別に普通なんだけどな。……ヒロだって笑うじゃん」
    「俺のは違うよ。ケルの笑顔はね、特別なんだ」
    俺よりも大きな兄は、俺の頭を優しく撫でて、クシャッとした笑顔で言った。
    「まるで、んー……そうだな、……魔法みたい」
    「へ?ま、魔法……?ぅえ??」
    「ケルの元気な笑顔を見ているとね、自然と元気になれるんだ。辛くても悲しい時でも、お前がいるだけで周りも笑顔になれる」
    「……っ!!」
    ヒロの言葉が、胸に染みるように、じんわりと俺を熱くした。
    「俺、……な、なれるかな?魔法使い」
    「ははっ、ケルならなれるよ!俺が保証する!」
    俺の一番尊敬している兄が満面な笑みで言ってくれた。俺はその言葉が何よりも嬉しくて、俺はその日から笑う事を意識するようになった。
    悲しい奴がいたり、独りぼっちの奴がいたら俺が笑って元気になれるように!俺の笑顔で世界を明るくするんだ!って意気込んだ。

    そんなある時、俺の前に強敵が現れたんだ。俺より年下(数ヶ月だけど)の癖に背がちょっぴり高くて、無愛想な奴!名前は、サニー!たくさん間違えて怒られたからやっと覚えた奴なんけど、ヒロが最近仲良くしてるマリって女の子の弟らしい。
    こいつが本当に曲者なんだ。何をしても笑いっこないし、そのくせ大好きな姉をヒロに取らたからなのか、よく寂しそうにしてる。あまり人付き合いも好きじゃなさそうだし、物静かで俺となにもかも正反対。
    こんな奴だからこそ、俺のライバルに相応しい。

    「サニー!」
    「うわっ!?」
    「へへ、今日も遊ぼうぜ!」
    一緒に砂場で遊んでから、どうにかしてまたサニーの笑顔を見ようと、俺は積極的にコイツを遊びに誘うようにした。いつも独りでポツンといるのが、どーしても気になってしまうんだ。放っておけない。
    「え、やだ」
    「なんで!?」
    「何でも」
    「えー!じゃあ、俺もサニーのやだは嫌だもんね!」
    「ちょ……、あぐ……」
    隙をみて、サニーに抱きついて頭をグリグリ押し付けた。お日様の匂いがする。サニーは眉間に皺を寄せて迷惑そう唸って。
    「君ね、そんないきなり」
    「へへ、サニィ〜!」
    「……っ、はぁ……もう」
    しょうがないな、とでも言うようにため息ついてから、俺の髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。
    「わー、なんだよー!」
    「仕返し」
    「なんだとー!じゃあ俺も!」
    「うわっ!」
    俺もこいつの髪の毛をわしゃわしゃと撫でてやり、笑ってやる。いつもは無愛想な奴だけど、こういう時は満更でもなさそうなんだ。こいつの近寄り難い雰囲気が和らいでいくのを感じる。それがなんだか嬉しくて、もはやこれは挨拶みたいになっていた。やってやられて、してされて。
    俺はすごく楽しかった。今までは、俺の行動や言動でよく叱られる事や鬱陶しがられて無視されたり、あっち行けと言われたり、無言で離れられる事も多かった。けど、こいつは口では悪態ばかりつくけど、俺を受け入れてくれる。
    何だかんだ言うけど、弟が出来たみたいで、俺はサニーをめちゃくちゃ可愛がってやろうって密かに心で決めていた。
    「サニ〜、にー」
    「また?」
    「いいだろ?に〜」
    「にー」
    「にかっ!」
    「……にか。……恥ずかしいんだけど」
    「そうか?俺は楽しい!」
    悪態付きながらもこうして付き合ってくれるのが、やっぱり嬉しい。嬉しいから、つい手が伸びてまたギューってサニーを抱きしめる。
    「……あのさ、前から思ってたけどなんでそんなにくっつくの?」
    「へ?」
    「今もこうしてさ……暑苦しい」
    「いいじゃんかよー、ダメか?」
    「……別に駄目って訳じゃ……」
    「ならいいじゃん!ぎゅー」
    「……そ、それにさ、僕って君からしたら変な奴、なんだろ?」
    「……変?誰が?」
    「君が、僕に!」
    「……俺、そんな事言ったっけ?」
    「言いました!!……はぁ、君といると疲れる」
    「うーん……、あ、思い出した」
    顔を上げて、サニーを見つめた。しかめた眉で、気まずそうに目を背ける。
    「お前、あん時笑わなかっただろ?」
    「……笑う要素なんてあった?」
    「俺が笑ったじゃん」
    「……はぁ」
    「なんか、オドオドしてたし、怖くねーぞ!って笑った見せて真似っ子したら元気になるかなーって」
    「強引」
    サニーがジトッとした目で俺の頬をつねる。まだ根に持ってるらしい。
    「だって、お前みたいな奴初めてだったんだもん」
    「どうせ僕は笑わない変人ですよーだ」
    「え?んな事ないだろ?サニーの笑顔、俺は好きだぜ?」
    「……え?」
    サニーは、目を見開いて俺を見た。
    「サニー?」
    「……僕、……笑っ、てたの……?」
    「おう!すっげーいい顔だった!また見たくて、つい構っちまうんだよなー俺」
    ははっ、と笑いながらそう言ってやる。サニーの笑顔ちょっとぎこちなくてちょっと変だけど嬉しい。
    「…………」
    「……サニー?」
    なにか反応あるかと思ったが、何も無くて少し不安になる。
    「おーい、どうした?腹でも痛いか?」
    「……うそ、でしょ?僕、ママやパパとか、マリにも小さいのにあんまり笑わない、無表情だよねって、昔から……」
    「え?そうなのか?俺といる時は表情コロコロ変わるけど」
    「……ねぇ、君といる時の僕って、どんな感じなの?」
    「どんな感じ?うーん……」
    頭を捻って考える。何となく、普段のサニーをイメージして顔を変えてみる。
    「こう……か……?」
    「うわ、変な顔」
    「サニーの顔ムズいんだもん!……あ、そうだ!」
    ここで天才のケル様はある事に閃いて、サニーの手を掴だ。あそこならいけるだろ。
    「あ、ちょっと、いきなり」
    「サニー、こっち!」
    混乱するサニーを尻目に、俺はハルバル町を二人で駆け抜けた。

    「シシシ!とーちゃくぅ!」
    「ぜぇ、はぁ、……ぜぇ、はぁ……はや、すぎでしょ……うぇ、走り過ぎて気持ち悪い……」
    「軟弱者だなぁ、サニーは!そんなんじゃ、大きくなれねぇぞ?」
    「はぁ、……ぜぇ、僕よりチビの癖に」
    「これからビッグになるんだ!ヒロだって追い抜くぜ!」
    「へぇ、それは一体いつになるんだろうねぇ?やー、楽しみ楽しみ」
    「言ったなー!そんな奴はこうだ!」
    「あっ、ちょ!今やっと落ち着いて、……ひひ、くすぐったいよ止めてよ、っう……くく」
    減らないお口のサニーに、脇腹のくすぐり攻撃をしてやる。涙目になりながら抵抗するサニーに思わず口の端っこが上がっていくのを感じる。
    「へへ、サニー!」
    「もー、今度は何?ちょっとくっつかないでよ!汗が……」
    「窓、見てみろよ!」
    「?……あっ!」
    イセカイスーパーの窓を指さしてサニーを誘導した。サニーは窓を見つめて、目を丸くしていた。
    「……っ」
    「サニー、どうだ?」
    「……僕」
    「うん」
    「こんな、顔出来たんだ……」
    「そーだぞ!俺、正しかっただろ?」
    呆然と窓を見つめるサニーに、そのほっぺたをつんつんしてやる。
    「……」
    「どーしたんだ?驚いて声も出ないのか?うりうり」
    「…………」
    「おーい、サニー?おー、あぶっ!」
    反応ない事をいい事に、イタズラしてたらサニーから抱きつかれた。サニーのいい匂いがする。俺から抱きつく事はあったけど、兄貴以外のハグは久しぶりでましてや友だちからは初めてだった。心臓が暴れてる。
    「サニー……?」
    「君はさ、本当にいつもうるさくて、鬱陶しくて、臭くて、暑苦しくてさ……、迷惑なんだよ」
    「お、おう?……ごめ」
    「でも、どこまでも真っ直ぐで、……馬鹿正直で、っ……こんな僕と付き合ってくれる変な奴……っ」
    「……、……サニー」
    抱きしめてくれる腕に力が入り、震えている。寒いのかと思い抱きしめ返すと、ぐずっ、と鼻をすする音が聞こえて焦る。
    「え?!サニー!泣い……」
    「ケル」
    「っ!!」
    耳元で名前を呼ばれた。サニーが、初めて呼んでくれた。
    「ありがとう」
    涙声で囁かれる。たった二言。俺の名前とその言葉が、温かくて優しくて、俺の身体に染み渡る。目頭が熱くなって、視界が歪む。ダメだ、このままだと泣いてしまう……、そう思って空いてる手で自分の頬を叩いた。
    「ケル?」
    「……っ、当たり前だろ!!俺たちは友だち何だから!」
    「……!とも、だち……?」
    「な、なんで疑問系なんだよ……、流石に傷付くぞ」
    「……初めて、……っ、だから」
    「!……へへ、そっか!!シシシ、俺もお前が初めてのダチだぜ?」
    「え、ケルが?それこそ嘘でしょ」
    「あー、疑ったな!」
    「だって……」
    「疑っちゃう悪い子ちゃんは、……こうだ!」
    「わー!ちょっと、また!?っ……ひー、やめてー」
    密着して隙だらけの脇にコショコショとくすぐってやる。そしたら仕返しされたり、店の前で騒ぐなってスーパーの人にちょっとだけ怒られたりした。

    「なぁ、サニー」
    「なに?ケル」
    「これからも、よろしくな!」
    「……うん、こちらこそ」
    夕暮れになって家に向かいながら、帰りは手を繋いで帰った。友だちと手を繋いで帰るのって、夢だったから嬉しい。
    「んじゃ、またな!サニー」
    「ハイハイ、またね」
    目と鼻の先だけど、サニーを見送ってやった。だって俺のが兄ちゃんだからな!バタン、と扉が閉まって、サニーの庭を出てすぐの所で、サニーの言葉を思い出した。
    『ケル、ありがとう』
    「こっちのセリフだって」
    鬱陶しがられて煙たがられて、兄貴と違ってうるさいし笑顔しかない俺に、渋々ながらもこんなに付き合って構ってくれる奴、兄貴とサニーだけなんだ。だから……、パン、とまた両手でほっぺたを叩いた。
    笑って家に帰れるように。
    「よし!」
    今日もきっと、母親に小言を言われるだろう。「ヒロはこんなにお母さんを思って早く帰って来てくれるのに、お前ときたらこんな泥だらけで帰ってきて」って言われるかな?でも、兄貴にサニーと友だちになったって報告したらきっと喜んでくれるだろう。
    だから今日も大丈夫。俺は家の玄関の扉を開けて言った。
    「たっだいまー!!!!」
    笑顔で大きな声で。

    【おしまい】
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