巣食って掬って救われた何事もない平日の昼下がり。
龍宮寺が外回りに出掛け来客もない中、乾はただ店番をしていた。
急ぎの仕事もないから奥に引っ込まなければ何してても良いぜ、と言われていたこともあり、ぼんやりとラジオに耳を傾けていたところで、所用で外出した帰りに寄ったという三ツ谷が顔を出してくれた。
龍宮寺が不在であることを気にもせず、差し入れだという洒落た菓子を差し出してきた三ツ谷は大して美味くもない乾の淹れたコーヒーを「お菓子に合うな」と喜んで飲んでくれた。
些細な言動ひとつとっても良い奴だなと思うし、そういったことに気付けるようになった自分の穏やかな月日を感慨深く思う。
「なあ、イヌピー君」
「ん?」
コーヒーをちびちびと飲んでいたところで、ゆっくりと三ツ谷がマグカップを置いた。
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