仁科が菩提樹寮の談話室に足を運んだ時、オケメンバーに囲まれる笹塚がいた。ちょうどおやつをいただいていたらしく、笹塚の隣に榛名が居て、彼の見た目よりもずっと旺盛な食欲を彼の相方である弓原が、もうおしまいだと止めていた。それでも諦めきれ無い榛名が、ふっと横を見た。もくもくと、頬を膨らませてオヤツを食べている笹塚を。
「半分…」
「はぁ?」
何を突然と眉を顰める弓原をよそに榛名が続ける。
「半分、笹塚さんに食べてもらう」
これならいいでしょ、と弓原の返事も聞かずに榛名は手にした焼き菓子を半分にして、スッと笹塚の前に差し出した。笹塚は何かを言うでも無く、一瞬だけ榛名を見るとその手から半分の焼き菓子を受け取り、パクリと一口で、口に入れてしまった。
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