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    MiraN__suBgamE

    @MiraN__suBgamE

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    MiraN__suBgamE

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    マフィアパロの導入にしたかった。

     夏特有のジメジメした空気が雨と合わさり張り付くような蒸し暑さを呼ぶ。バケツをひっくり返した様な水が地面を跳ね足元を濡らす。屋根は多いが狭く陰鬱な雰囲気の路地裏を泥で汚れた革靴をぴちゃぴちゃと濡らしながら歩いていた。すると、暗いこの場に似合わない明るいオレンジが視界に入り足を止める。
     齢十はあるか怪しいくらいの子供が膝を抱え、微動だにせず天から降り注ぐ水を甘んじて受けていた。手入れはされていなそうなオレンジの髪からはぽたぽたと雫が垂れ、決して良いものとはいえない服は肌が透けるほどべったりとしている。もしかして死んでいるのではないか?そう感じるのも無理はない雰囲気に鍾離は思わず声をかける。

    「少年、ここは冷えるぞ。早く家に帰るといい」

     少年はゆっくり顔を上げる。いっそ病的とも言えるほど白い肌は化膿した傷跡を痛々しく見せ、異国のものと言える青い瞳は光を写さず、その齢で何を見てきたのか悟らせないほどの深さを持っていた。
     じっと鍾離を見つめていた碧眼が顔を伏せる。

    「帰るところなんてないよ」

     声変わりすら終わってない様な高めの音から出た言葉には感情すらなく、ザーザーと雨降る音だけが場を支配していた。伏せられた頭からぼたぽたと雨粒が滴り地面に波紋を広げる。膝を抱える小さな青白い手は寒さなのか孤独なのか分からず震えていた。
     人並みに"可哀想"だと思ったのかもしれない。もしかしたらあの深淵の様な深い碧眼に魅せられてしまったのかもしれない。
     鍾離は膝を抱える腕を掴み器用に片手で体を抱き上げた。思ってた以上に軽い体と冷たい体温に驚いた鍾離以上に驚いた少年がジタバタと暴れ出す。

    「おい!離せ!!ほっといてくれ!!」

     ドンドンと背中を叩きジタバタ足を動かすが大した攻撃にもならない。少ない体力を使い果たした様に少し大人しくなった口から「離せよ…ほっといてくれよ…」と小さな呟きがぽつりぽつりと聞こえる。

    「俺に反撃出来るようなくらい強くなったらその言葉考えてやる」

     せめてもの抵抗で背中を叩き続けていた手が止まる。叩いていた手がぎゅっと服を握りしめ鍾離に体を預ける。

    「……分かった。絶対だからね…」



     大人しくなった小さな体から穏やかな呼吸と脈動を伝える。いろいろ限界だった体力がついに尽きた様で、優しく抱え直すとぴしゃぴしゃ雨音を響かせながら歩きだす。少し広い大通りに出た鍾離を見つけた緑髪の少年が慌てた様子で駆け寄り傘を差し出す。
    「鍾離様!今までどちらに行かれたのですか!?」
    「心配かけたな。なに、少し歩きたかっただけだ」
    「せめて我にお声かけください!ところで、それは一体?」
    「ああ、こいつは暫く面倒みようと思ってな」
    「それは危険です!いくら幼な子とはいえ何をするか分かりません!!」
    「そう心配するな魈。何かあったら俺がなんとかする」
    「はぁ…鍾離様がそう仰るなら我はもう何も言いません」
    「そう言って貰えると助かる。早速だが、食事と湯汲みの用意を頼めるか?」
    「はい。かしこまりました」

     鍾離の命を受けて連絡を伝える部下を横目に腕に抱く少年を見る。まだ一瞬の刻しか生きていないその身に何があって彼をそうさせたのだろう。感情を忘れた暗い顔とすーすーと年相応の寝息を立てる顔を比べる。こんな顔をもっと浮かべて欲しい。もっと笑って欲しい。これが母性…いや父性か?成長を楽しみにする親になったようで少しわくわくする。
     用意周到に車の手配までした魈に案内され乗り込む。未だに降り止まない雨を窓越しに見ながらゆっくりと車が動き初めた。
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