わたあめの海 今思えば、わたあめの中に入り込んだような、淡い色の世界だったと思う。
◇
ベージュ色の砂浜は、なめらかな触り心地で、一歩足を踏みいれた私を優しく包み込んでくれる。
頭の上に広がる青は、いくら目をこらしてみても建物の影は見えなくて、教科書で見たことのある「空」と同じ色をしていた。一部分だけ強い光源があるが、あれが「太陽」だろう。
目の前に広がる水源は、教科書で見た「海」の想像をはるかに超え、気が遠くなるほどの広さであった。電子音でしか聞いたことのなかった波の音からは、奥行きと強い生命力が感じられた。
「あの線のところが行き止まり?」私は海の奥に向かって指をさして言った。
「あれは地平線、だよ。マチュ」
1866