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    味噌煮(そのみ)

    @omiso_oisii
    🐂🦄、🔥🐕、⚖️✂️、💻🍸、✹🐩あたりが好き。CP固定、解釈固定の厄介オタク!おえかきはみーんなアナログのらくがき。
    ⚠♀女体化絵♀を上げることがあります⚠女体化百合には注意してくれよな!

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    味噌煮(そのみ)

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    2022.12.18開催SHOW TIME でしょ!にて無料配布していたジョ双小説ペーパーを気まぐれ公開します。
    第2弾。今回はクリスマス話。

    今のところは12月いっぱいの公開を考えていますが消し忘れたりして残っているかも。ポイピクの使い方がさっぱどわかりません。教えてください。

    ペーパーに載せていたあとがき等は削っています。会場で手に取ってくださった皆様ありがとうございました!ジョ双、いいぞ

    #ジョ双
    pairOfHangingScrolls
    #BL69

    2022.12.18 SHOW TIMEでしょ! 無配ペーパー仮題『食う寝る所に、』第二章
    ※ジョウ✕双循です
    ※交際&同棲前提なのでわりと結構甘々です。朗報!



    手馴れた様子で三つ編みにされる豊かな巻きの髪は、未だ少ししっとりと湯を浴びた名残を残している。
    光を浴びてつややかに光るそれに伸ばした指先は、まさに今それを束ねていた器用な手にピシャリと弾かれた。そんなに強く弾く事は無いだろうに、じんわり熱を帯びる指先を軽く振ったジョウを緑の双眸がじろりと睨み付ける。
    「上着くらい脱いで来んかい、たわけが」
    喉奥から低く唸るような声からは、この我儘で傲慢な恋人の機嫌の悪さが伺える。幾度も明け暮れた殴り合いの喧嘩の中ではすっかり聞き慣れた声だ。尤もここは廃工場でも校舎裏でもなく、二人で住むには些か窮屈な勝手知ったるワンルームなのだが。
    心当たりは、無くもない。ジョウは何も言わず未だ冷えた外気を纏う上着をハンガーに吊るし掛けた。室内着に袖を通していれば、二人掛けのソファから垂れた豊かな金の尻尾が不満げに床をペシペシと叩く音が耳に届く。
    ウイルスのひとつたりともこの部屋に招くまいと、手洗いうがいも当然済ませている。着替えも済ませたならもう文句は無いだろう。何なら土産すら持ち帰っているのだから少しは機嫌を直せば良いのだが。
    隣に腰掛けたジョウを一瞥し、また双循は不満げにふいと顔を背けた。先程まで結いかけだった金髪はすっかり纏められ、広く引き締まった左肩に行儀良く収まっている。そっと房の先を摘んで撫でれば文句のひとつでも出るかと身構えたが、やはり何か気に食わない様子で噤まれた唇からはいつもの罵倒は出てこなかった。
    「…オレの帰り、待ってたんだな」
    双循は答えない。不機嫌な尻尾が奏でていた音はいつの間にか止み、間もなく日付も変わろうかという秒針の音だけがカチカチとワンルームを包んでいる。
    クリスマスと言うと、サービス業にとっては年に幾度の稼ぎ時と言っても過言ではない。ジョウのバイト先の洋食店も当然その限りであった。何処かの国の浮ついた風習にまんまと浮かれた街の人々が求める特別な非日常を力の限り彩らんと、ここぞとばかりに組まれたシフトには在籍する殆どのミューモンの名前が連なっており、普段より数時間長く刻まれた勤務時間に文句を垂れる暇もなく例年その夜の営業は過酷を極めるのだった。
    幾年もの留年を果たし、急な発作や欠勤等も珍しくない自分を大らかに仲間と迎え入れてくれる店長やスタッフの面々にも強い恩義を感じているジョウにとって、クリスマスという日はまたとない恩の返し時でもあった。もうプレゼントや特別な雰囲気に浮ついてしまう程子供でもない、故にこの日ばかりは普段よりも遅い帰宅となる事を始めから理解しており、その旨を知った上だからこそ双循も無理に帰って来い等とは言わなかったのだろう。
    それでもこうして、黙って健気に待っていた、勝手で愚かで愛おしい歳下の恋人は。
    「…メシは、食うてきたんか」
    「まだ食ってねえよ」
    「何も用意しとらんぞ」
    顔も向けずに低く呟く、その視線が髪束を撫でる指先に落ちる。水仕事に少しささくれた白い指は束の結い目をそっと辿って静かに離れた。
    「だろうと思って色々持ち帰って来たぜ。店の余りもんだけどな、…店長が気遣って持たせてくれてよ」
    ジョウはそう小さく笑って、傍らに置いた紙袋から紙箱を幾つか取り出しテーブルに並べていった。
    赤いソースにバジルとトマトの乗ったシンプルなピザ、端切れとはいえ十分に厚い身の付いた鶏肉のグリル。ポインセチアの真っ赤な花飾りが付いた箱に収まっているクリームの塗装がよれた切り株型のケーキは、いかにも端切れらしく側面から苺が半身を覗かせている。
    余り物と言えど十分なボリュームのあるクリスマスディナーが次から次へと姿を現し、思わずほう、と声を漏らした双循の尻尾はやがて緩く左右に揺れ始めた。
    「…まだ温かいんじゃな」
    「まあ、温めながら帰ってきたからな」
    「ほぉ~、そのクソみたいな炎にも良い使い道があったもんじゃのう」
    「そのクソみてぇな炎で暖取ってんのはどこの誰だよ、クソ野郎が」
    取り皿持ってくる、と席を立とうとしたジョウの腕は強く掴まれ引き戻される。そのまま胸倉を掴み額を寄せた双循の瞳は機嫌良さげに細められていた。
    「クソの自覚があるなら離れず居らんかい、相変わらず鳥頭じゃのう」
    「ハハ、…良かった。機嫌直ったみてぇだな」
    思わず笑って鼻先を擦り寄せたジョウの言葉に、思わず緩んだ胸倉の手を温かな炎使いの手で解かせて、そのまま柔く指を絡めた。意図しない動向にムッと唇を結ぶ双循にぐいと肩を寄せて座り直し、少し離れた位置に置かれた空調機器のリモコンを取ると温度設定を確認しては普段通りの低い数字に戻す。気の抜けた電子音に軽く頷き用済みのそれをまた放り投げた。改めて目の前のご馳走に向き直る。不死鳥の炎に守られて憩いの我が家に辿り着いた色とりどりの料理達も、若い男二人の胃袋の前では数十分と持たないだろう。
    「じゃあ今このまま食おうぜ、チーズ固まっちまう」
    箱から直接一切れのピザを摘み上げては、糸を引くように伸びるチーズを器用に纏めるジョウの表情もすっかり緩んでいる。開いた口に運ばれかけたそれは、ふと動きを止めて目の前の噤まれた唇へと運ばれた。
    「オラ。先食えよ、…待たせて悪かったな」
    「…ん、」
    素直に開かれ齧られた大きな一口は、謝罪へ対する素直な返答と受け取っても構わないだろうか。
    伸びるチーズを何とか千切り行儀良く咀嚼をする恋人の口端に付いたトマトソースを眺めて、ジョウは徐々に温まる繋いだ指先を確かめていた。

    『…オレの色、だな』

    そんな、惚けた事を考えながら。

    *****
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    味噌煮(そのみ)

    Reuse Christmas2022.12.18開催SHOW TIME でしょ!にて無料配布していたジョ双小説ペーパーを気まぐれ公開します。
    第2弾。今回はクリスマス話。

    今のところは12月いっぱいの公開を考えていますが消し忘れたりして残っているかも。ポイピクの使い方がさっぱどわかりません。教えてください。

    ペーパーに載せていたあとがき等は削っています。会場で手に取ってくださった皆様ありがとうございました!ジョ双、いいぞ
    2022.12.18 SHOW TIMEでしょ! 無配ペーパー仮題『食う寝る所に、』第二章
    ※ジョウ✕双循です
    ※交際&同棲前提なのでわりと結構甘々です。朗報!



    手馴れた様子で三つ編みにされる豊かな巻きの髪は、未だ少ししっとりと湯を浴びた名残を残している。
    光を浴びてつややかに光るそれに伸ばした指先は、まさに今それを束ねていた器用な手にピシャリと弾かれた。そんなに強く弾く事は無いだろうに、じんわり熱を帯びる指先を軽く振ったジョウを緑の双眸がじろりと睨み付ける。
    「上着くらい脱いで来んかい、たわけが」
    喉奥から低く唸るような声からは、この我儘で傲慢な恋人の機嫌の悪さが伺える。幾度も明け暮れた殴り合いの喧嘩の中ではすっかり聞き慣れた声だ。尤もここは廃工場でも校舎裏でもなく、二人で住むには些か窮屈な勝手知ったるワンルームなのだが。
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    ※ジョウ✕双循です
    ※交際&同棲前提なのでわりと結構甘々です。朗報!



    手馴れた様子で三つ編みにされる豊かな巻きの髪は、未だ少ししっとりと湯を浴びた名残を残している。
    光を浴びてつややかに光るそれに伸ばした指先は、まさに今それを束ねていた器用な手にピシャリと弾かれた。そんなに強く弾く事は無いだろうに、じんわり熱を帯びる指先を軽く振ったジョウを緑の双眸がじろりと睨み付ける。
    「上着くらい脱いで来んかい、たわけが」
    喉奥から低く唸るような声からは、この我儘で傲慢な恋人の機嫌の悪さが伺える。幾度も明け暮れた殴り合いの喧嘩の中ではすっかり聞き慣れた声だ。尤もここは廃工場でも校舎裏でもなく、二人で住むには些か窮屈な勝手知ったるワンルームなのだが。
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