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    mayuko_lxh

    @mayuko_lxh
    ろしゃお 帝限・黒限 右无なんでも

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    mayuko_lxh

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    孙力さんが擬人化してマツコさんになったら北河くんはなんてツッコむのだろうか?という宿題を提出します

    #北无
    northless

    「ぅお……」

    寝台のある窓ぎわから珍妙な声が聞こえて、俺は薪を割る手を止めた。聞いたこともない響きだったが、誰のものかはすぐにわかる。あまり喋らない謎の怪我人の声だ。くぐもった音にどこか痛めたのかと焦り、斧を放りだして屋内へ入る。

    やや薄暗くしてある部屋には、無限のほかにもうひとつの影があった。ゆっくりと目が暗さに慣れていく。
    それは人だった。男か女かはわからない。太い首と厚みのある手と座った姿勢でもなお高い身長は明らかに大人の男のものだったが、伸ばしてゆるくまとめた髪とたっぷりと幅をとった黒い服は女のものにも見える。白く塗られた顔がぼんやりと浮かびあがり、それがきれいに化粧されていることに気づく。女か。
    じっと俺を見つめる視線は鋭く、物言いたげだった。今にも首根っこを掴まれて問い詰められそうな気がして背筋がこわばる。緊張する。

    「えっ……誰」

    すっかり迫力におされてしまい、間抜けな声がこぼれた。
    この部屋には無限だけのはずだ。ひとりきりで行き倒れていた彼に見舞客などあるはずもなく、訪れるものといえば、庭の鶏や飼っているとも言いがたい無愛想な猫が紛れこんでくるくらいだ。
    孫力という名のその猫はいつも、手のかかる新入りを見るような目で無限を見守っている。たまに長い髪をぞりぞりと毛づくろいしてやったり、隣(あるいは上)に寄りそって寝かしつけていたりもする。母性でも感じているのかもしれない。それとも単なる面食いか。そういえば今日も無限に付いていたはずだが、どこかへ逃げてしまったのだろうか。薄情者め。
    とにかく、知らない奴が侵入しているならなんとかしなければならない。身体を診るかぎり無限は相当に強いはずだが、まだ身体を動かして良い状態ではない。医者として患者を守らなければ、と俺はそれなりに覚悟を決めて不審者との距離を測る。
    改めて見ても、立ちはだかるというにふさわしい姿の人影はとにかく大きかった。半分体重を預けるようにされた寝台が大きく傾いて、たいへんに逞しい肩越しに見える無限まで斜めになっている。先ほどの悲鳴は姿勢を崩しかけたからだったのだろう。
    その寝台をさらに傾けるように体重を預け、そいつが無限に近づいた。大きな手がゆるりと持ちあげられ、斜めになったまま動けず、じっと座っている彼の頭に伸びる。不思議な優雅さで髪を撫でる手つき。動いたことで衣服越しにもわかる腕の太さ。力も強いのだろう。ぐらぐらと頭を揺らされながら無限は目を瞬かせる。その困惑した視線が俺とかちあった。
    俺はその瞬間、我を忘れた。

    「やめろ!」

    自分からこんな大声が出るなんて思わなかった。どうすればいいのかなんてわからないままに駆け寄った俺を、謎の巨漢がゆるりと振り返る。赤く塗られた妙に艶っぽい唇が引きあげられ、そしてそいつは言った。

    「その感じ、かえってヤベェな」

    面白がるような声だった。男のように音が低い。あまりに親近感のある言い方に知り合いか?と立ち止まる。近づいた顔はやはり男とも女ともつかずなかなかの迫力だったが、怖じる気持ちを振り払ってじっと見つめる。
    まっすぐに見返してくる、細く座った目。めんどくさそうな色。無言になるとさらに増す圧力。底知れぬ表情。大きな身体。
    それに、俺はたしかに見覚えがあった。
    孫力だ。
    確実にこれは孫力だ。
    なにがどうしてこんなことになったのかまったくわからないが、いや、俺にはわかる。わかっている。こういうことはままある。こういうのはだいたい老君のせいで起こる。あのひとが「こういうのも楽しくない?」と思えば起こる。あるある。そうしておけば色々と片づく。不思議なことは今回が初めてじゃない。だからこれは、孫力だ。
    がっくりと脱力して床に膝をつく俺の前で、孫力(確定)が流暢に無限を問い詰めている。あんたはあいつとどうなりたいの、ぶってる女みたいなことすんな、あら素敵じゃない、やるならやんなさいよ。
    詰め寄られた無限はめずらしく口ごもり「いや、責任は取るし」とかなんとかもじもじと言っているのが聞こえる。何の責任だ。春の夜が狙い目よとか物騒なことを言いだした孫力と、なぜか熱心に頷いている無限を呆然と見ているうちに、これは止めたほうがいいとようやく気づいた。なにかとんでもない結論が形成されつつある。それはわかる。
    ひとりと一頭の身を乗り出すほどに盛り上がる会話につれて、手作りの寝台が軋んでいる。重量基準を超えているのは間違いない。
    大きく息を吸って、それから腹に力を込める。

    「揃いも揃ってデカいな!?!?」

    会話を邪魔されたやつらが同じ動きで俺を見る。だからなんだという視線を寄越す孫力と、むっと頬を膨らませた無限。こんなにでかくない、とその柔らかそうな頬に書いてあるのが読み取れた。
    一瞬の沈黙ののち会話は再開され、無視された俺はそっと視線を逸らした。窓の外がとても明るい。はやく薪を割り終えてしまおうと思った。
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    mayuko_lxh

    DONE孙力さんが擬人化してマツコさんになったら北河くんはなんてツッコむのだろうか?という宿題を提出します「ぅお……」

    寝台のある窓ぎわから珍妙な声が聞こえて、俺は薪を割る手を止めた。聞いたこともない響きだったが、誰のものかはすぐにわかる。あまり喋らない謎の怪我人の声だ。くぐもった音にどこか痛めたのかと焦り、斧を放りだして屋内へ入る。

    やや薄暗くしてある部屋には、無限のほかにもうひとつの影があった。ゆっくりと目が暗さに慣れていく。
    それは人だった。男か女かはわからない。太い首と厚みのある手と座った姿勢でもなお高い身長は明らかに大人の男のものだったが、伸ばしてゆるくまとめた髪とたっぷりと幅をとった黒い服は女のものにも見える。白く塗られた顔がぼんやりと浮かびあがり、それがきれいに化粧されていることに気づく。女か。
    じっと俺を見つめる視線は鋭く、物言いたげだった。今にも首根っこを掴まれて問い詰められそうな気がして背筋がこわばる。緊張する。

    「えっ……誰」

    すっかり迫力におされてしまい、間抜けな声がこぼれた。
    この部屋には無限だけのはずだ。ひとりきりで行き倒れていた彼に見舞客などあるはずもなく、訪れるものといえば、庭の鶏や飼っているとも言いがたい無愛想な猫が紛れこんでくるくらいだ。
    孫力と 2043

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    やや薄暗くしてある部屋には、無限のほかにもうひとつの影があった。ゆっくりと目が暗さに慣れていく。
    それは人だった。男か女かはわからない。太い首と厚みのある手と座った姿勢でもなお高い身長は明らかに大人の男のものだったが、伸ばしてゆるくまとめた髪とたっぷりと幅をとった黒い服は女のものにも見える。白く塗られた顔がぼんやりと浮かびあがり、それがきれいに化粧されていることに気づく。女か。
    じっと俺を見つめる視線は鋭く、物言いたげだった。今にも首根っこを掴まれて問い詰められそうな気がして背筋がこわばる。緊張する。

    「えっ……誰」

    すっかり迫力におされてしまい、間抜けな声がこぼれた。
    この部屋には無限だけのはずだ。ひとりきりで行き倒れていた彼に見舞客などあるはずもなく、訪れるものといえば、庭の鶏や飼っているとも言いがたい無愛想な猫が紛れこんでくるくらいだ。
    孫力と 2043

    InkLxh

    DONE「春と魂」
    kozさんの素敵なイラストに触発されて書かせていただいた北无。
    魂の話。
    向こうから、春の気配がした。

    おもむろに起き、身支度をする。髪は手つかずのままで、外に出た。
    うららかな匂いが立ち込めていた。肥えた土と、その下に埋まっていた植物が根を張り顔を出し、花を咲かせる匂い。遠くから野火のくすぶる匂いも、風に乗ってやってきていた。

    今年もやることが沢山ありそうだ、と思いながら、天高く腕を突き上げ伸びをする。春がやってきたときの匂いが好きだった。背筋がしゃんと伸びて、深呼吸ができて、自分の中のものが洗いざらい真新しくなっていく感じがする。大地から命が生まれ、芽吹くこの季節に、生活に必要なものをこしらえてつつがない生活をすることを、もう何年も好んで続けている。おかげで野山に関する知識はひととおり学び、ひとりでもなんら問題なくこの場所で暮らしていけるようになった。それでも、人と人との結びつきは強い。縁や結びというものはあるようで、傷負いの武人がひとり、俺の世話になりながらこの地で過ごしている。今は眠っているだろう――春の陽気は滋養をつける睡眠にもってこいだ――、あいつのことを少しだけ逡巡し、そして畑に行こうと思い立った。遠くの山々をなぞる稜線が薄墨でぼかしたよう 2992

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    mayuko_lxh

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    「えっ……誰」

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    孫力と 2043