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    rupam17wt

    @rupam17wt ワンライ等支部にあげる予定のないもの、続き物を区切りよく書けたときに使います。

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    rupam17wt

    MOURNINGひいあいワンライ お題『雨』『紫陽花』 お借りしました 画像は埋もれてしまうのでこちらにもあげています。お気に入りの傘ほど雨で濡らしたくないと思うのに、その傘を持ち歩いている時に限って大降りになる。雨の日はろくなことが起こらないから藍良は好きではなかった。
    今日は一日晴れと聞いていたのに、十二時を過ぎたあたりで雲行きが怪しくなり、やがて細い雨が降り出し、現在では叩きつけるような激しい雨が降っている。天気の崩れやすい梅雨の時期だからとお守り代わりに傘を持っていたのは不幸中の幸いだが、濡れるのは避けられなかった。
    藍良は足元にできた海のような水たまりをみて、何度目か分からない深いため息を吐いた。水たまりにはうんざりした顔の藍良と、お気に入りのターコイズブルーの傘と、はりきって履いてきたおろしたてのスニーカーが映り込んでいた。
    今日は前から一彩と前から気になっていたお店でスイーツを食べる約束をしていた。オフの日だったから朝から一緒に行動すればよかったけれど、午前中それぞれ用事があったから午後に待ち合わせしようと約束をした。午後三時にお店の最寄り駅前の広場に集合する予定だったのだが、三時を少し過ぎても一彩が約束の場所に来ない。
    空を見上げると、ねずみ色の雲が絶え間なく流れている。しばらく雨は止み 1827

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    MOURNINGいばにゃんとじめにゃんのお話
    オタク仲間と二人の話がチラリと出たので調子乗って書いてしまった
    ノリで書いたので色々許していただきたい
    事務所に向かうためにエントランスホールを歩いていると、馴染みのある後ろ姿を見つけた。
    年齢の割に華奢な体格、春の青空を透かしたような髪。間違いなく彼は紫之創、以前共演したことがあるライバル事務所所属のアイドルだ。
    彼はおっとりとしていてのんびりだなと思うときはある。しかし今日の彼はいつも以上に足取りがフラフラしていて鈍い。それもそのはず、彼は両腕に大きな荷物をいくつも下げていて、薄い腕の肉に袋の持ち手が食い込んでいた。
    「こんにちは、じめにゃん。本日もお仕事ですか?」
    後ろから声を掛けたら、彼は「わあ!」と大袈裟なくらい声をあげて、天敵に見つかった野生動物のように飛び跳ねる。ウサギの名は伊達ではない。
    「こんにちは、いばにゃん。急に声を掛けられてびっくりしちゃいました」
    「いいえ、こちらこそ死角から近付いてしまい申し訳ありません」
    彼はこちらを振り返ってぺこりとお辞儀をする。誰に対しても丁寧で真摯な対応をするその姿勢が、彼の好感度と親しみやすさの秘密で、自分が彼を好ましく思う理由の一つだ。
    じめにゃんもエレベーターホールへ向かっていたようなので、そのまま彼の隣に並ぶ。ほんの少し小柄で歩 2344

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    MOURNINGひいあいワンライ お題『宣言』
    またしてもお題にきちんと添えていない……
    これからワンライはこちらにバックナンバーを登録していきます。ちゃんと運用できれば良いのですが。
    読んでくださりありがとうございます。
    土曜日のお昼どき、一彩からESの食堂に呼び出された藍良は、入り口で待ち構えていた彼の鬼のような形相にびっくりした。どうやら怒っているらしい。一彩はその穏やかさととんちんかんな思考回路ゆえに、滅多に感情を荒げることがないのに。一体何があったのだろうか。
    藍良が状況を飲み込めていないことに構うことなく、一彩は藍良の手を引いてずんずんと食堂の奥の方へと向かう。連行や誘拐という表現が正しく思える乱暴さだった。
    やがて二人はテーブル席に辿り着く。四人がけの席は二人きりで占領するには広くて、これから食事を摂りにくる人たちに申し訳なさを感じる。
    一彩は藍良を解放し、席に座るように促した。彼の異様さに面食らっていた藍良は、言われた通りに椅子に浅く座った。藍良の向かいに座った一彩は、重々しく口を開いた。

    「白鳥藍良、僕は『ALKALOID』の君主として、今から君に厳しいことを言わなくてはならない」
    目が据わった一彩を見て、藍良の背中に日当たりの良い食堂が底から凍りつくような悪い予感が走る。思い出すのは解雇を言い渡されたあの日や、ライブで失敗してしまった時。知らないうちに取り返しのつかないことをしてしま 2004

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    MOURNINGひいあいワンライ お題『一周年』『始まり』
    少し前からきちんとお題に添えていない気がします。
    読んでくださった方、ありがとうございました。
    ESの食堂で昼食にオムライスを食べた後、藍良と次の仕事まで時間を潰すことになった。空いている席が日当たりが良すぎる場所しかなかったため、僕らのいる場所は冷房の恩恵があまりない。昼時を過ぎた現在、座る人はまばらになっていたが、僕たちは日陰の席に移動するのも億劫でなんとなくこの場に居続けた。
    すっかり汗をかいたグラスの中の氷で薄まった麦茶を飲んでいたら、「お待たせしました」と店員が小さなお皿を二つ置いていった。お皿に乗っているのは、黄色いクレープ生地と生クリームが何層にも重なっているケーキ。確かミルクレープというんだったか。つやつやとしていて美味しそうだ。しかし、僕にはデザートを注文をした記憶はない。「間違えているよ」と伝えようとしたら、向かいの席に座る藍良が僕の脛に爪先を当ててきた。
    「これ、藍良が頼んだのかい?」
    店員の背中が遠くなってから聞いたら、藍良は「そうだよォ」と言って、銀色のフォークでひとくち分のケーキを切り取り、小さなかけらを口に運ぶ。相変わらず口が小さい。
    「ん〜〜美味しいなァ。やっぱり甘いものは最高だよォ」
    「どうして二人分頼んだんだい?」
    「え、ヒロくん要らないの?せ 2164

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    MOURNINGひいあいワンライ お題 『桜』『卒業』
    桜の方をお借りしています。当時読んでくださった方ありがとうございました。
    うららかな陽気の三月。授業なし、宿題なし、仕事なし、レッスンなし。穏やかな春休みの一日を、ライブ配信や推しアイドルの出演作を見る時間に充てようと思っていた藍良だったが
    「出かけるよ、藍良。準備して」
    突然現れた赤い悪魔によって、藍良の平和な春休みは終わりを告げられた。


    「ねェ、これどこ向かってんの?逃げないから目的地くらい教えてくれてもよくなァい?」
    一彩に引っ張られるように寮を出発して、知らない路線の下り電車に乗り三十分ほど揺られて辿り着いた終点駅。そこからさらに歩くこと数分。一彩と藍良は道と呼んでいいのか分からないような山道を歩いていた。枯葉が敷き詰められた地面は歩きにくく、藍良は何度か木の根に脚を引っ掛けて転びかけた。
    「それは着いてからのお楽しみだよ」
    すっかり息が弾んでしまった藍良の手を握りながら、上機嫌で歩く一彩は全く疲れている様子がない。鼻歌まで歌っている。山を覆う森は太陽の光が届かず薄暗くて、地面は湿っており、とても不気味であった。藍良は一彩の強引さにうんざりしながらも、置いていかれないようにと繋いでいる手をぎゅっと握り返す。
    「おれついに殺されるの?調子乗りすぎた 1608

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    MOURNINGひいあいワンライ お題 『旅行』『心音』
    当時読んでくださった方、ありがとうございました。
    急な仕事だけど……と『ALKALOID』にプロデューサーが持ってきたのは、沖縄での撮影の仕事だった。旅行関連の雑誌の仕事らしく、プロデューサーも半ば押し付けられた仕事で任せられる人がいなくて困っていたらしい。
    おれたちはたまたまスケジュールを合わせられそうだからと、プロデューサーは申し訳なさそうに言っていたけれど、しかし断られるとは思っていなさそうな顔だった。今はいろんな仕事を受けたいというのが『ALKALOID』の総意だったから、もちろんおれたちはその仕事を引き受けることにした。しかし、やっぱり無茶なスケジュールだっただけに、仕事や学校の都合で、おれとヒロくんは、タッツン先輩とマヨさんより一日早く現場入りすることになった。

    ヒロくんと一緒に旅の準備をしながら、プロデューサーに渡された沖縄の資料の中にあったエメラルドグリーンの海や、鮮やかな自然や、観光名所の写真に、期待で胸を膨らませていたのが、昨日の夜九時。寮を出て車に乗ったのが、早朝五時半くらい。羽田空港国内線に着いたのが、今日の朝七時過ぎ。おれたちの乗る予定の飛行機が旅立つのが、午前九時ちょうど。今は搭乗二十分前の八時四十分少し 1924

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    MOURNINGひいあいワンライ お題『王子と妖精』『結婚』
    当時読んでくださった方、ありがとうございました。
    「花なんて見たことがない」って、彼は寂しそうに笑った。

    藍良と出会ったのはある冬の頃。百合の国なんて言われるこの国の首都の中心に立つ城の中庭だ。彼は雪と一緒にやってきて、冬の間だけ人々に幸せを届けて、凍った川が解け水が流れる頃に旅立つ妖精なんだそうだ。

    「ここへ来たのは初めてなんだけど、どんな所なの?」
    無邪気に聞いてきた妖精に、僕は知っている限りでこの国のことを教えてあげた。どんな人が住んでいるのか、みんながどうやって暮らしているのか、食べ物が美味しいとか……その中でも、彼がとりわけ興味を持ってくれたのはこの国がたくさんの花、特に百合を育てている話だった。
    「花って何?」
    「春になったら植物が綺麗な色の花を咲かせるだろう。僕たちの国は花を育てて売ったり飾りつけたりしているんだよ」
    彼はピンと来ないようで、もやもやした顔で僕の話を聞いていた。どうやら彼は本当に花を見たことがないらしい。僕は新緑の季節にたくさんの白百合が咲くこの街自慢の絶景を、思いつく限りの言葉で語った。首都の道の花壇に綺麗に並んで咲いていたり、街の花屋に服屋のマネキンのように凛と飾られていること。とてもいい匂いがし 1657

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    MOURNINGひいあいワンライ お題 『○○の秋』『色』
    ということでおそらく芸術の秋とかをイメージしてこねくり回したものです。当時読んでくださった方ありがとうございました。
    その絵画に描かれていたのは、穢れなき純白というべき美しい色のドレスを纏う王妃様だった。
    「きれいだなァ」
    隣の藍良がうっとりとため息を吐いた。
    「うむ、今すぐにでも動き出しそうなくらいリアルな絵だね。」
    「ねぇ、この布の感じとかすごくない?この光沢とか。触ってないのに感触わかっちゃう。」
    「触っちゃダメだよ。」
    「分かってるよォ。」
    侵入禁止のラインをほんの少し超えて王妃様に手を伸ばした藍良を嗜めると、ぷうと頬を膨らませながら藍良は腕を下ろした。ちなみに今日は二人でお忍びなので、藍良はいつもの「ラブい」を封印している。
    「絵ってあんまり見ないけど、そんなおれでも『すごい!』ってなるんだから、芸術ってすごいね。」
    「西洋画は僕も馴染みないけど、その魅力に取り憑かれてしまいそうだ。」
    先ほどは藍良を注意したけれど、うっかり絵画に手を伸ばしてしまいそうになる不思議なパワーがあることはよく理解できる。
    「ちなみにこれはフランスの王妃の肖像画だそうだよ。」
    解説のパネルを読みながら僕が言うと、藍良は途端にしかめ面をする。
    「どうしたんだい」
    「別にィ。ただあんまりいい思い出のない言葉を聞いちゃっ 1797