楽屋でッチする話 今日の予定は、高校で一日授業を受けてから、そのままラジオ番組の収録だ。マネージャーが運転する車内で台本を確認していると、あの、と不意に声を掛けられて頭を上げる。
「なんでしょうか」
「その……すみません。一織さんの学校の時間も考えると、どうしても夜の時間ギリギリまでお仕事を入れなければならない状況で」
恐る恐るといった様子で告げられたのは、謝罪だった。
「いえ。入れてほしいと言ったのは私ですし、体調管理はしっかりしていますから謝らないでください。あなたはあなたの仕事をこなしてるだけでしょう」
この言葉は本心だ。定期テストが近いのと単位を考えて暫くちゃんと授業を出席したいと申し出たのは自分で、だけど仕事量を減らして調整するのをやめてほしいと頼んだのも自分だ。マネージャーが申し訳なさそうにする理由がない。
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