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    ☆ติดตามเงียบๆ

    さにイベ御霊祭展示作品 福島さんの場合

    ふぉろわの言っていた「キスしても落ちないんだって!とリップつけたさにちゃんに特大のキッスかます男士誰!?」というポストに感化されて、落ちにくいリップネタを書かせていただきました。

    福島光忠の場合 福島さん、とやってきた彼女は妙に嬉しそうだった。
    「ああ、おはよう」
    「もうお昼ですよ」
     手を背後で組んで、こちらを見上げてくる主の顔が明るい。これはなにかに気付かなければいけないやつだ、と気付いた福島はじっくりと主の顔を見て
    「……ああ、口紅か」
     今まで見たことのない色で彩られている彼女のそこに気付いた。

    「似合ってるよ」
     福島は落ち着いた笑顔で彼女に告げる。
    「ありがとうございます」
     照れたように笑った彼女は、一番に福島さんに見せたくて、と可愛いことを言ってくれる。それだけで気持ちが浮き立つのだから、恋というのはなんとも面白いものだと思う。
    「聞いてくださいよ。これ、キスしても落ちないんです」
     満面の笑みを浮かべて唇を指差した彼女の前で、引き攣りそうになる頬を必死で抑える。
    「福島さん?」
    「ん? いや、へえ、そうなんだ」
     表情はなんとか取り作ったのだけれど、動揺が抑えられていない。明らかに不審な態度になった福島を、主は不思議そうな顔で見てくる。
    「どうしました?」
    「……いや?」
     笑顔で誤魔化そうとしたのだが、彼女には通じない。むしろ、なにがあったのかとぐいぐい身体を寄せてくる。
    「近いって。胸当たってる」
    「福島さんにしかしませんよ」
     両手を上げて触らないようにしながら言った福島に、主は不満そうな顔になった。
    「なにを隠しているんですか。わかってますよ、なにか考えたことくらい」
    「大したことじゃないから」
     苦笑い混じりにその場を立ち去ろうとすれば、進行方向に腕をつかれて邪魔をされる。くぐることも可能だが、そんなことをしたら彼女の機嫌を損ねるだけだろう。
    「大したことかどうかは私が判断します」
    「頑固だねぇ~」
     少し眉を下げた福島をじとっとした顔で見てくる主の唇は、少し怒っているように固く結ばれている。せっかく愛らしい色に染まっているのに、と思いながらついそこに触れる。
    「あっ」
    「あ……ごめん」
     驚いたように彼女は身体を離す。うっかりしていたが、メイクした顔にさわられるのは嫌かもしれない。謝った福島に、主は大丈夫というように指を左右に振る。安心しながら触れた親指の先を見てみるが、特になにかついている様子はない。
    「へぇ~、本当につかないみたいだな」
     手袋の上ではあるが、なにかつけば質感や色が変わる。指先を擦り合わせてもどうともなっていない。
    「だから、キスしても落ちないリップだって言ってるじゃないですか。そんなに軽く触った程度じゃ落ちませんよ」
    「あー、それさ」
     これ以上誤魔化しても、彼女は許してくれないだろう。仕方なく、福島は重い口を開く。
    「その、キスしても落ちない――っていうの」
    「はい」
    「自分で試してみての言葉?」
     一瞬きょとんとした彼女は「まっさかぁ!」と無邪気に笑って。
    「そういうキャッチコピーなんですよ。300回キスしても落ちなかったとか」
     本当でしょうかね? と無邪気に答えた彼女に、内心とんでもなく安堵したのを気取られないように福島は真面目な顔を作る。
     ――君が自分以外の誰かとキスしたのかも、と思ってこんなに焦るだなんて。
     格好悪くて、彼女には絶対に言えない。
     主の顎に手を掛けた福島はゆっくりと顔を近付けながら低く尋ねる。
    「……じゃあ、俺と試してみるかい?」
    「え?」
     そっと唇を重ねて、離す。
    「まずは、一回」
    「ふ、くしまさ……」
    「ああ、全然落ちてない。俺の唇には移ってる?」
    「ううん、ぜんぜん」
    「そう。じゃあ、二回目ね」
     今度は先程よりも長く。三回、四回と数重ねるにつれ、口付けを深めていく。七回目を越える頃には、舌を絡め合うような濃厚なものになっていた。12回目、とろんとした顔になっている彼女は、息も絶え絶えな様子で尋ねた。
    「ぁっ、本当に、300回……?」
     期待したような、怯えているような目が見つめてきていることに、少しだけ腰が疼いた。
    「可能な限り……かな」
    「や」
     そこまでキスだけで耐えられる予感は、まったくなかった。
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