Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑪―赤井Side 8月―
赤井と降谷は、記憶を失くし身体が縮んだ日のことを、記録として書き起こしはじめた。
降谷と自分との記憶に不整合はなかった。
毒ガスのようなものを吸い込んだあと、瓦礫の中で一度意識を取り戻すまでの間に、記憶を失くし、身体が縮んだことは間違いなさそうだ。公安とFBIのデータベースから自分たちの情報が消えていることを考えると、自分たちの状況は各々の機関が把握していると考えて良いだろう。
だが、おそらく自分たちが記憶を取り戻したことを知る者はいない。学校では中学生を演じているし、この家にも、外部の人間が置いて行ったような盗聴器らしきものは何も仕掛けられていないからだ。
自分たちが手に入れたデータには二重でパスワードがかかっていた。パスワードはそれぞれ別のパソコンに残されていたので、一つ目のパスワードは降谷が、二つ目のパスワードは赤井が記憶していた。
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