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    stick_typesan

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    stick_typesan

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    四肢が欠損した状態でヴィクターの所に運ばれてきたVの話です。特に詳細な描写はありませんが上記の理由為閲覧の際はご注意ください。

    ヴィクターとストリートキッド男性V「V、今のお前さんがどうなってるかわかるか」

    「……あんた今どうやって話しかけてるんだ」

    「お前さんに直接繋いでるのさ」

    「それじゃあ頭は残ってるってこった」

    「おあいにく様な……さて、今の状況の確認と行こうか。右上肢肘、左下肢膝は離断してる。見事に持ってかれたな。頭部はご明察の通り」

    「メイルストロームの連中に高い金出して仕込ませたウィルスのおかげだ」

    「聞かなかったことにするよV。ジャッキー曰く周りに基幹部が焦げた奴らがぶっ倒れてたそうだ。どうせお前さんの端末情報も盗もうと繋げた後にどかんとやられたんだろう」

    「かもな。ジャッキーが運んでくれたのか?」

    「ああ。血相変えてお前さんを運んできたよ」

    ああ悪いことしたなと、今頃はミスティのところで気を揉んでいるであろう相棒を思う。ジャッキーはああ見えて近しい人間にはとても繊細に接する。明日をも知らない人生だったとしても、当たり前のように人の死を悲しむのだ。親譲りなのだろうか。たまにウェルズのあの親子が羨ましく思うことがある。極たまに。
    ホロ通話ともリアルの会話とも違う、頭蓋内に反響するように声が、未だに響いているようだった。視界がブラックアウトした状態で、ヴィクターの声だけが雨のようにザーザーと鳴っている。時折ノイズが走り途切れるが、あちらから調整を入れているのかすぐに治った。
    正直視覚とも聴覚とも言えないこの感覚はあまり気分の良いもんじゃない。全てヴァーチャルなのに、頭に直に繋がれるのはあまりにもリアルで、そして自分がこの半機械の体に閉じ込められているのだと思い知らされる。
    全て閉じた状態は重りを抱いて海に沈んでいくような気分だ。
    さしづめ先程の会話は覚醒するための慣らしのような物なんだろう。沈み切った身体は、ヴィクターの手で徐々に引き上げられていく。言葉を交わすたびに意識が水面に近づいていく。
    「……ジャッキーに悪い事をしたな」
    「そう思うなら改めろ」
    掠れた自分の声を耳にしながら瞼をゆっくりと持ち上げた。
    殻に閉じ込められている気分だったが、身体がようやく自分のもののように感じる。今じゃモニターの機械音も、診察台の照明も、ヴィクターの時代遅れのコロンの匂いも何もかもが現実だ。
    起きあがろうと頭を少しもたげるとくらりと目眩がした。急に動くなよ、と言いながら残っている腕に注射器が差し込まれる。瞬間立ちくらみのように目の前が霞んだが、すぐに開けていく。具合が良くなれば自分の体を見渡せるぐらいには起こすことができそうだ。
    そう、目につくのは体にかけられた薄布の、不自然に凹んでいる部分。

    「いいかV、俺だってこんな小言みたいな事をお前さんには言いたかないんだからな。いい加減検診は毎回来い。毎回きちんと来ていたらお前のウェアのパフォーマンスレベルはそんじょそこらのコーポにすら負けん。それこそこんなこそ泥みたいな仕事でちんけなスカベンジャーに路地裏に投げ捨てられるなんて事は起きなかっただろうな。おいV、前回来たのがいつかわかってるのか?3ヶ月前だぞ?俺が来いってメッセージ送ったのはいつだ?」

    「そうだな100年前かもしくは3ヶ月前だったかも。足はどうなってる?」

    「そうだなクソガキ……見事に持ってかれてるよ。左下肢は膝からすぱっとだ。クソッタレあいつらこういう時はきれいに仕事しやがって。明日の今頃には紛争地帯でお前のお下がりを付けてるやつがいるだろうよ。どうせそいつも吹っ飛ばされて終わりだ。Vよそこからはよく見えるか?いくら心配しても報われんロートルの顔がな」

    「心配かけたなヴィクター」

    「言葉より行動で示してくれV」

    俺の目を見ようともせずに、優秀なリパードクは仕事を進めていく。まだ少し焦点の合わない目はしばらくその手をぼんやりを追っていた。
    薄布を暴かれ、傷口を晒す体が現れた。言葉通り左右非対称に欠いた体は未だ生々しい。何かしら言うかと思ったが、ヴィクターは考える様子も無くあらかじめ決まっていたかのように淡々と作業は行なっていった。
    そもそもこんな仕事、街のリパードクのやる事じゃない。担ぎ込まれたところでこの街じゃその辺りに転がされたって文句は言えない。NCPDの遺失物倉庫に運ばれたなんて笑い話もあるくらいだ。

    「俺がどっかで惨めに転がるかあんたがいつか俺に呆れるかどっちが早いんだろうな」

    「お前さんがどこかで野垂れ死ぬなんてごめんだね。間抜けなコソ泥とそいつの能無しのリパードクなんて呼ばれておしまいだ」

    いつものように軽口を返す言葉もどこか固い。それでも手は止めずに会話を続けてくれるのがありがたい。
    片手を使って少し起きようとすると顎でいなされた。大人しくドクターの指示に従おうと再び天井を見上げる。明度を落とされた照明は、それでも目に眩しい。

    「この街じゃ上等な死に方じゃないか」

    「上等なもんか。いいかV、お前が気にすることは口うるさいリパードクでも不相応なウェアの値段でもがめついフィクサーでも何でもない。生きてその生意気な顔を俺にまた見せることだけだ。なんでそんな簡単なことができない?」

    「死ぬために生きてる奴なんてこの街にごまんといるだろ。この街は大口開けて涎を垂らして伝説を待ってる」

    断端から溢れた液体を、ヴィクターが綺麗に洗浄していく。もはやそこに血液は無く、代わりに機能を保持し体内を満たす為の液体が流れている。だらりと汚すその様は、ばくりと一口で食われてしまったようにも見える。

    「惨めな生より名誉ある死か?このままいけばお前さんに待ってるのは惨めな死だ」

    「言ってくれるな。ヘイウッドの野良犬は夢ばかり見てるってか。耳が腐るほど言われたがあんたにまで言われるとはな」

    普段は言わない自虐めいた台詞も、いつにないヴィクターの追及に口をついて出てしまう。しかしこれは彼がいつも言っている事だった。冗談を含めて、挨拶の最後に、いつも会話のどこかでヴィクターは案じている。おそらくは彼自身が決めたラインのギリギリで、心から案じている。そうやって思えるようになったのは付き合いの浅いが何よりも近くにいる相棒や、目の前の男のおかげだとも感じている。
    頭を起こしてみれば案の定不機嫌な顔をしたヴィクターがいた。怒らせたいわけではない。多分お互い。

    「お前さんは腕っ節もある。能力もあるし機転も効く。ナイトシティで名を残そうと言う野心もある。信頼してる仲間だっている。いずれは偉大なる伝説への道も開かれるだろうな。だがそれは踏み外せば地獄への片道かもしれない」

    「そうだろうとしてもここで生まれて育ったからには止まるわけにはいかない。それともヴィク、この足に重しでもつけるか?」

    「つけたところで今のままじゃあスカベンジャーに盗まれるのがオチだってことだV。もっと慎重になれ」

    「わかったよヴィク。さっさとウェアにこう刻んでくれないか?愚か者ってな」

    金属製の台にごとりと器具が音を立てた。聞きたくないため息がここまで届く。その目に怒りよりも悲しみや諦めが映るのはとても堪えた。

    「トルソーみたいに運ばれてきたお前を見た俺の気持ちがわかるのか?わからないならこの話は終わりだ。もうこれ以上惨めにさせないでくれ」

    「悪かった…心からそう思ってる」

    思いがけずに出てしまう言葉は揶揄ってる訳でも無く、反発したい訳でもない。誰もが夢見るその夢の途方も無さや、この街の行き場の無さを当たってるだけだ。諦めの悪さは時に人をじわじわと腐らせる。そこから降りればゆっくりと眠れるのだろう。だがまだまだ自分はその場所へは行けない。一番わかっているのはヴィクターのはずだ。そのくせ自分を心から案じる。自分を伝説にしたい男は、それを一番望んでいない。

    「この話はもう終わりだ」

    「ああ、これで最後にするよ。あんたにそう言わせちまったのも全部悪かった。後悔してる。俺は愚か者だ」

    「愚者はタロットだけにしといてくれ」

    誘導されてアーチ型の装置に門をくぐるように片手を通すと、たちまちプリンタが腕を再生していく。

    「こいつは仮もんだ。今日はとりあえずこれで過ごしてくれ」

    ブロックが積み上がるように作られていくのを眺めていれば、ものの見事に指先まで仕上がっていった。最後にコーティグのように皮膚の色が着色され、借り物とは思えないほど表面に艶がはしる。
    機材を外れ、だらりと下がる腕を動かせもせずじっと見つめていると、俄にヴィクターがその手を取った。
    「お前が生きてて本当によかった」
    祈るように額を当てる手の甲は、まだ彼の温度を感じることは無い。形を成しているものの動かすこともできやしない。
    借り物の腕に祈る言葉を受け止めるには、俺はあまりにも半端で、そして生きてる限りチンケな傭兵でしかない。

    「お前は何者であろうとなんだってできる」

    例えばこんな風に?と、やっとこさ神経が繋がり始めた指先が、ぎこちなく彼の涙を拭った。
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    stick_typesan

    DONE四肢が欠損した状態でヴィクターの所に運ばれてきたVの話です。特に詳細な描写はありませんが上記の理由為閲覧の際はご注意ください。
    ヴィクターとストリートキッド男性V「V、今のお前さんがどうなってるかわかるか」

    「……あんた今どうやって話しかけてるんだ」

    「お前さんに直接繋いでるのさ」

    「それじゃあ頭は残ってるってこった」

    「おあいにく様な……さて、今の状況の確認と行こうか。右上肢肘、左下肢膝は離断してる。見事に持ってかれたな。頭部はご明察の通り」

    「メイルストロームの連中に高い金出して仕込ませたウィルスのおかげだ」

    「聞かなかったことにするよV。ジャッキー曰く周りに基幹部が焦げた奴らがぶっ倒れてたそうだ。どうせお前さんの端末情報も盗もうと繋げた後にどかんとやられたんだろう」

    「かもな。ジャッキーが運んでくれたのか?」

    「ああ。血相変えてお前さんを運んできたよ」

    ああ悪いことしたなと、今頃はミスティのところで気を揉んでいるであろう相棒を思う。ジャッキーはああ見えて近しい人間にはとても繊細に接する。明日をも知らない人生だったとしても、当たり前のように人の死を悲しむのだ。親譲りなのだろうか。たまにウェルズのあの親子が羨ましく思うことがある。極たまに。
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