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    stick_typesan

    @stick_typesan

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    stick_typesan

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    ヴィク→男性Vのヴィクターとミスティの話。終盤に近い本編軸、意識の無いまま運ばれてきたVを前に2人が会話してる話。ヴィクターがあまりにも低浮上な感じの話です。
    ネタバレ有

    階段を降りる足音に目を覚ます。足を踏み外すような感覚にすんでの所で椅子に踏みとどまった。
    息を吐いて、眠気の覚めやらぬ身体を手をついて支える。いつの間にか眠っていた身体はぎしぎしと軋んでおり、いつまでも無理は効かないと目頭をきつく抑える。弾力を失った皮膚はそのまま戻る事はない。
    端末に表示されている時間を見れば、とっくに夜は明けているようだった。日のささないこの地下ではよく時間の感覚を無くしてしまう。作業に没頭してしまえばなんて事はないが、こんな日はいつまで経っても夜が明けないような気分になってしまう。
    人形のようにぎこちなく隣の診察台へ顔を向けると、昨日が嘘かのように寝顔は穏やかだった。目元に残る幼さと、若干痩けた頬がアンバランスな印象を残す。実際こいつが"子供"だった事なんてあるのだろうかと感傷が頭を掠めた。子供だって天下のアラサカを襲うなんて馬鹿げた事はしないが。

    「ビックリした!……まだ帰ってなかったの」

    診療室の静寂を破った後、ミスティはすぐにVを目に止めたようだった。
    声を落として近づく彼女はいつものように手伝いに来てくれたのだろう。気怠げで厭世的に見えるがとても義理堅い。ジャッキーと気が合ったのもよくわかる。
    あいにく今日は店を開く気にはなれない。悪いが帰ってもらう方が気が楽だった。年下の男に弱々しくなっている所など見ても気分は良くないだろう。

    「こいつが起きたらすぐ帰るさ。今日の分は俺がやっとくから大丈夫だミスティ。わざわざすまなかったな」
    「ぜんぜん、こっちも暇だったから」
    「ありがとう」
    「お互いさまよ。……よく眠ってるみたいね」

    ミスティが近寄り顔を覗き込んでもV、は未だ起きる気配は無い。瞼がひくりと動いて、夢でも見ているようだった。

    「人の気も知らないで呑気に寝てるよ」
    「いいじゃない。安心してるってことよ」

    実際は鎮静剤のおかげだ。治療が済んだ後、本来なら徐々に覚醒させるために点滴を打たず自然に目が覚めるのを待った。酷い姿で運ばれてきた久しぶりに見た傭兵はずいぶんとくたびれていた。休養が必要だと思ったことに違いはないが、少なくとも眠っているこのひとときは路地裏に打ち捨てられているかもしれないと怯えずに済んだ。あまりにも自分が哀れで笑えてくる。

    「あいつは意外と危なっかしいってジャッキーもよく言ってた。自分もケガばかりしてるのに、ほっとけなかったんでしょうね。あなたもそうじゃない?」
    「俺は怯えて縋り付いてるだけさ」
    「あんまりそうやって自分を愚かに見せない方がいいと思う」

    ミスティの的を得た指摘すらロートルの口は止められないようで、ぽろぽろと弱音が口をついて出る。

    「実際、人の話も聞かないでボロボロになって戻ってくる奴を見ると自分が馬鹿なんじゃないかって感じるよ」
    「でもあなたの忠告以外誰のいう事を聞くっていうのかしら」
    「少なくとも俺じゃないのかもな」

    Vから頼りにされている事は間違いない。しかし背中を叩いて送り出す瞬間はいつだって恐れが滲む。いつか奴が遮断薬を手に取らなくなるかもしれない。苦しみから逃れる事を選ぶかもしれない。何かのきっかけで宿主と入れ替わるかもしれない。
    それでも自分は完璧な傭兵を作り整備し、送り出している。それが自分のやるべき事だと誤魔化しながら。
    リングを降りて平穏を手に入れた俺は、こうやって怯えや弱さと言ったものを実感するようになってしまった。退いたからそうなったのか、そうなってしまったから退いたのかもう知る術はない。リングに上がり、勝利の咆哮を上げ続けていれば、もっと何かできたのだろうか。少なくとも肩を並べて共に戦っていたはずだ。
    希望に溢れた虚しい幻はアラームの音でどこかに消えてしまった。投薬の時間だ。
    注射針を取り出し薬液を仕込む。Vの手を取り注入していく。意識の無い体はどこまでも重く、細く長いため息が漏れた。

    「あまり気に病まないで」

    作業を終えてミスティに向き合う。彼女は心底こちらを心配しているようだった。心配に報いるように言葉を繋げても今は中身がどんどんと溢れていくようだ。

    「……こいつが帰ってきて、ようやく人心地ついてまた送り出してってそれを繰り返してるだけだ。それを繰り返してるだけでどうしてこんなになるのか、たまにどうしようもなくなるんだよ」
    「あなたのウェアは彼を守ってきたじゃない。まだ彼は帰ってきてる……彼の選択はあくまで彼自身の意思よ。あなたが背中を押してるわけじゃない。それにもう私たち、死体を見るのはたくさんよ」

    目を伏せ表情が隠れると、とたんに見てはいけない気持ちになってしまった。ミスティにジャッキーを思い出させるためにこんな話をしたわけじゃなかったはずなのに、心底自分が嫌になる。誰だって大切な人を失いたくなんてないはずだ。どれだけこの街が不条理であろうとそこにある喪失を無視する事はできない。

    「すまないミスティ、君の方がよっぽど辛い」
    「大丈夫。私たち、今はまだやれるだけのことはやっていきましょう」

    未だ眠るVのために、お互いにまだ大丈夫と言い続ける。何も考えずにベッドで眠る事を選んだ自分のせめてものの戦い方のような気がした。
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    stick_typesan

    DONE四肢が欠損した状態でヴィクターの所に運ばれてきたVの話です。特に詳細な描写はありませんが上記の理由為閲覧の際はご注意ください。
    ヴィクターとストリートキッド男性V「V、今のお前さんがどうなってるかわかるか」

    「……あんた今どうやって話しかけてるんだ」

    「お前さんに直接繋いでるのさ」

    「それじゃあ頭は残ってるってこった」

    「おあいにく様な……さて、今の状況の確認と行こうか。右上肢肘、左下肢膝は離断してる。見事に持ってかれたな。頭部はご明察の通り」

    「メイルストロームの連中に高い金出して仕込ませたウィルスのおかげだ」

    「聞かなかったことにするよV。ジャッキー曰く周りに基幹部が焦げた奴らがぶっ倒れてたそうだ。どうせお前さんの端末情報も盗もうと繋げた後にどかんとやられたんだろう」

    「かもな。ジャッキーが運んでくれたのか?」

    「ああ。血相変えてお前さんを運んできたよ」

    ああ悪いことしたなと、今頃はミスティのところで気を揉んでいるであろう相棒を思う。ジャッキーはああ見えて近しい人間にはとても繊細に接する。明日をも知らない人生だったとしても、当たり前のように人の死を悲しむのだ。親譲りなのだろうか。たまにウェルズのあの親子が羨ましく思うことがある。極たまに。
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