階段を降りる足音に目を覚ます。足を踏み外すような感覚にすんでの所で椅子に踏みとどまった。
息を吐いて、眠気の覚めやらぬ身体を手をついて支える。いつの間にか眠っていた身体はぎしぎしと軋んでおり、いつまでも無理は効かないと目頭をきつく抑える。弾力を失った皮膚はそのまま戻る事はない。
端末に表示されている時間を見れば、とっくに夜は明けているようだった。日のささないこの地下ではよく時間の感覚を無くしてしまう。作業に没頭してしまえばなんて事はないが、こんな日はいつまで経っても夜が明けないような気分になってしまう。
人形のようにぎこちなく隣の診察台へ顔を向けると、昨日が嘘かのように寝顔は穏やかだった。目元に残る幼さと、若干痩けた頬がアンバランスな印象を残す。実際こいつが"子供"だった事なんてあるのだろうかと感傷が頭を掠めた。子供だって天下のアラサカを襲うなんて馬鹿げた事はしないが。
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