雨粒 雨上がりの匂いに包まれながら、なんとなく公園へ立ち寄った。朝のランニングは一通り終わったし、息切れも汗まみれだ。隣で走っていたアイツも大人しく俺についてきて、がぶがぶと水を飲んでいる。
木々の濡れた匂い。土の匂い。これが六月の匂いだと思う。厚い雲の隙間からさす光が眩しい。
「……息がしづらい」
「籠るよな、なんか、水分が」
肺のなかが湿ってるような心地になる。もうすぐ梅雨だ。陸地で溺れそうになるこの時期が、昔は嫌いだった。リストバンドが汗でじめじめする。
「……チビ」
「……ああ」
ひと雨きそうだ、と伝えたいのだろう。声色で悟り、頷いた。雨の匂いが濃くなった。
この匂いを嗅ぎ分けられない人が世の中にはいるらしい、ということを最近知った。当たり前のことだと思っていたのに、雨が降りそう、と言うと驚かれたりする。アイツも嗅ぎ分けられるタイプだから、俺たちはよっぽどのゲリラ豪雨でなければ雨を避けられることが多い。
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