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    金カム尾形。尾杉・杉尾・リバ好きです
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    バーで出会い仲良く恋愛の話をする杉と尾のお話の続き12
    杉と尾がもだもだするお話。長いです。

    バーで出会い仲良く恋愛の話をする杉と尾のお話の続き12次に店で顔を合わせても二人は一切あの夜の話を口にしなかった。記憶に残り過ぎて何を話していいのか、何を秘密にしなければならないのかを選び取ることができないからだ。二人は少しの隙間もなく抱き合ったのに、今日は笑顔でいつも通りの隣に座る。
    杉元は正直あの夜を思い出して7回抜いていた。しかしおくびにも出さず爽やかにカウンターに席取る。
    「友人に勧められて出会い系やってみようかなって。尾形さんやったことあります?」
    「ありますよ。長いスパンの恋愛に向いているか分かりませんが、条件付きでマッチング出来るので便利ではあります」
    「出会い系、尾形さんみたいなかっこいい人でもするんですね、質問はしたけどちょっと意外」
    「やりたい時は相手が見つかるので手っ取り早いです」
    「もう~! 付き合う出会いが欲しいんですよ俺は。尾形さんはそこから恋愛になったりしましたか?」
    「無くは無いですが…、俺は恋愛系よりワンナイトの方が向いてるみたいです」
    「おお…尾形さん絶対落とすテクニックありそう…教えてください!」
    「杉元さんくらいモテる人に教えることなんて何もありませんよ」
    「まさか、俺振られっぱなしなんですよ。お願いします」
    「まあまあ。まだ一杯目じゃないですか、もう少し飲みましょうよ。俺は同じのダブルで」
    「俺は生ビールの黒」
    二人の好みの酒が届いて、しばらく酒の話に花が咲いた。氷は丸氷に限る、黒生はやっぱりギネスに限る、干しブドウも合うけど干しいちじくにも合う、などなど。杉元は友人同士ではこういった店に来ないので、お酒自体の楽しさや好みや知識を気軽に話せる相手がいることが純粋に嬉しかった。肉を買うにも悩んでいた若いころは、洋酒にも縁遠かった。だから常連になったこの店には愛着があり自ずと毎週足が向く。この店にいるだけで楽しい理由には尾形の隣に座れることも含まれているが。
    「氷なしのウイスキーも好きなんですけど、これぐらいの氷溶けた味も好きなんですよね」
    尾形がダウンライトに飲みかけのグラスをかざし、氷が解けて色の薄まったウイスキーを透かしてみせた。滑らかな丸い氷がグラスの中で澄んだ音をたてる。杉元にとってウイスキーは特別な日にだけオーダーするものだった。いつも以上に喉を焼きたい日。最近で言えば尾形が恋人を連れてきた日にちびちびと飲んだのが最後だった。
    「ほら、この角度から見れば金色だ」
    尾形はグラスを斜めに傾け、薄茶色の酒が金色にも見える瞬間をうっとりと眺めている。
    「ほんとだ。綺麗~! 尾形さん結構ロマンチストですね」
    「ふふ、そうかなあ。でもこの色、杉元さんの瞳の色に似てますね。普段は薄い茶色だけど時々金色に見える」
    「たまに聞かれるんですけど生まれつきなんですよ。尾形さんの目はキレーに黒いですよね」
    「綺麗に見えるでしょう。実はこの右目、義眼なんです。近くでよく見ないと分からないんですけど。ほら」
    「えっ全然気づかなかった。ちょっと見てもいいですか?」
    「どうぞどうぞ」
    この店は間接照明がメインだから普段は気づかないのかもしれない。杉元が目を覗き込みやすいように尾形は顔を傾けた。聞いた通りに右目を見つめた瞬間、尾形の顔がわずかに近づいた。指先で顎をなでられ、ほんの鼻先で尾形の瞼がゆっくりと閉じてゆくのが見える。杉元の頭は真っ白になった。鼻先に尾形の体温が触れる。尾形のキスを受け止めるべく杉元も目を閉じようとした瞬間、唇にフッと息を吹きかけられた。
    「…とまあこんな感じです」
    「は?」
    「テクニックを教えてくれってさっき言ったじゃあないですか」
    「えっ今の何? え? 俺と…えっ? うそのやつ?」
    「ははあ、懐かしのテクニックですよ。手相見てあげるから手を貸して、ってのと変わりませんよ」
    「ああ~~~びびったあ~~~! 俺てっきり」
    そこまで言って杉元は口を押え、尾形は髪を撫でつけながらにまにまと笑っている。
    「てっきり、何ですか?」
    二の句が継げなかった。この間、二人は「キスをしないこと」というルールを一晩守り抜いたばかりだ。それはベッドの中だけの規定なのだろうか、じゃああの晩以外ならどうなのだろう。しかし今は聞く時ではない。
    「てっきり、本当に義眼なんだと思いました。あんまり綺麗だったから」
    不自然に思われない程度に会話を整え、笑顔で返す。尾形はちょっと面食らったような顔をして、そんなことない、杉元さんの瞳の方が綺麗ですし…とグラスの中の氷をがらがら回しながら早口で言った。
    杉元は俯いてしまった尾形のぴょこっとした一筋の髪を見ながら、すっかり楽しくなって片肘をつきビールを一口飲んだ。いつもここだけまとまんないんですよね、と鼻に皺を寄せていた横顔を思い出す。ちょっと抜けている尾形の一面を知った気がする。尾形さんの側にいる人ならとっくに知っていることかもしれないけど。今楽しい時間を過ごしているのは自分だ。
    「尾形さん、明日予定あります? 何も無かったらこの後居酒屋とか行きませんか。俺腹減っちゃって」
    「すみません、明日早いので今日は帰ります。またの機会に」
    「おっ休日出勤ですか」
    「うーん、まあ、小旅行みたいなもんです」
    尾形は言葉を濁した。きっと恋人との小旅行だろう。わざわざ聞くのも野暮であると察し、杉元は旅行いいですね楽しんでくださいと言うに留めた。この瞬間なぜかほんの少しだけがっかりした自分がいた。きっと、本当に本当に居酒屋に行きたかったのだ。そうでなければ、こんなにも心がすうすう空っぽになるはずがない。



    次の朝、尾形は杉元に言ったとおり朝の8時には車を出していた。今日はきっと風が強いだろう、海の側の、尾形の実家へ。一人で車を走らせて、家族サービスという名目で母と祖母にこき使われにいく。季節ごとの実家の味を堪能したり、年々年老いていく家族を感慨深い気持ちで眺めたり、絶対に使いきれない量の野菜を押し付けられるのも分かっていながら懐かしの家に急いだ。
    「おかえり百之助。早かったのね。おばあちゃん裏の畑よ」
    「ああ、後で」
    未だに古ぼけた瓦屋根の一軒家。家の前の舗装の両脇にはねこじゃらしが風に乾きかさかさと束になって揺れている。落ち葉を踏みながらシーツを干す母親が尾形を見て顔をほころばせた。入ってなさい、あんたの湯飲み出してあるからお茶でも淹れて飲んでて。母の声を背中で聞き玄関サッシを開けると懐かしい土っぽい我が家の匂いがした。この年になってもそれを覚えているものだなと感慨深く思えた。
    お茶を啜っているとバタバタ母親が入ってきた。
    「あたしにもお茶淹れてちょうだい。あんたの淹れるお茶が一番おいしいわあ」
    「自分で淹れろよ」
    そう不貞腐れつつ尾形は母親の為にポットから急須に湯を淹れてやる。熱い茶を渡すと同時に、母親が尾形の顔をつと見つめた。
    「何があったの? あんたが何か考え込んでるときは髪の毛こう撫でて話聞いてほしそうな顔してっからな。恋人?」
    「そんな訳あるか」
    「その様子じゃああんまりいいことなさそうだねえ。あ、私も大福よばれよっと」
    母親ならではの軽い空気を作って話を促している。尾形は離れて住む親に心配をかけるのも面倒になり、自分の湯飲みに茶を足しながら話す。
    「付き合ってると思ってた男が、俺を大事にするとは言いつつ、どうやらキープされてただけだったらしい」
    「血は争えてなくてウケる!」
    「ウケねえ。全く馬鹿馬鹿しい話だぜ」
    「そんな男別れなよ。あんた見た目はそんな髭面なのに肝っ玉小さいとこあるんだから。母さんが言ってやろうか?」
    「やめろ! それにまだ本当に別れる気は無え」
    「何で?! まあでも母さん気持ちは分かるわあ。私はあんたにばかり辛い思いさせてしまった」
    尾形の母は、若くにして尾形を身ごもったが尾形の父親は本妻の下へ帰り、追いすがる寂しさから何年も泣き暮らした過去がある。祖父母の支えがあったため尾形は生活に事欠かなかったものの、ずっと母親の愛情を感じた覚えは無かった。時々、それが元で自分が愛することが不器用なのではないかと責任転嫁することすらある。実際にそうなのだろうが、尾形はもういい大人で過去を過去として見つめることが出来た。
    「追い求めても、手に入らないときは手に入らないものだよ。あんたを大切にしてくれる人を探した方がいいわよ。一緒に住めるくらい一緒にいて落ち着ける人とかさ。……知らん人のところに毎晩出ていかれるのは辛いんよ?」
    眉をしかめる母親には異常なほど説得力があった。こんな母親を見たことが無かったので尾形はとても驚く。自分は、この恋愛に没頭し家庭を持ち崩していた母親に心配されるような状況なのか?
    「あんた、我慢しいで耐えること出来てしまう子だからね」
    内心、当たっているかもしれないと尾形は素直に思う。
    「一回だけ、あんたがまだ小さい頃にあんたの父親のところに会いに行く時があってね。一か月も前からあんたお手伝いよくするようになってさ、おかしいなと思ってたら、前日の夜あたしの布団とこきてさ」
    全く覚えていなかったので大人しく耳を傾ける。
    「俺のことあっちのおうちに置いてくるの、おっ母と別々に住むの、って目にこおんな涙溜めてさ。ああ、あんたずうっと言えなかったんだなってやっと分かったの。あたしもあの頃勝手してたから、せめて父親に会わせてやろうって段取りつけたんだけど当日取り消してさ。せっかくいい服着たからって駅前行って鯛焼き食べた時、おっ母と一緒だとおいしいねえってにこーって笑ってんの。鯛焼き一個でそれは嬉しそうでねえ。次の日夜の仕事辞めて簿記とったわ」
    全然覚えていないが、いつからか母親が夕食を作り始めたことだけは覚えている。
    「そんなことあったかな」
    それからも母親は尾形を説教したり宥めたりしてきたが、最後に
    「あんた、我慢するのはよしなさいよ」
    とだけ柔らかく言った。お茶はもうすっかり冷めていた。




    二日後、杉元は再びバーのドアを開けていた。いつもの席に尾形はおらず、カウンター横のテーブルに坊主頭で目の大きな男と一緒に座っていた。
    尾形と連れに会釈してカウンターの席を陣取る。いつもは尾形の隣に座るけれど、今日は全然違う席を選び取った。
    生ビールをトマトジュースで割ってくれるようにオーダーする。爽やかで甘くもなくちょっとスープみたいなこのドリンクも尾形から習ったものだった。肘をつきながら店員と世間話をする間も、どこか自分のアンテナが張っているような気がする。
    「ばあちゃん元気だった? まだ畑やってんでしょ」
    「ピンピンしてるぜ。また髪の毛伸ばしてんのかって言われたし、お小遣い寄こそうとしてくる」
    「優しいじゃ~ん。今の内だけだよ元気なのも。うちは稲刈りしに来いって言われるけど仕事忙しいって言って無視る」
    「稼業なんだからそこは行ってやれよ!」
    尾形たちが声を上げて笑うのを背中で杉元は聞いた。尾形さんがこんなデカい声で他人の笑うの初めて聴いたな。
    店員から飲み物が届き、それを喉に滑らせて味わう。相変わらず酒の味は美味しい。が、一人だけで飲むのもどこか退屈になりスマホで白石と通信会話する。今、房太郎と白石は二人で街をぶらついてるんだよ、鍋するつもり、杉元も来いよと声をかけられて、それもいいかなと赤い酒をごくりと飲んだ。腰を上げるとちょうど尾形たちもチェックするところだった。
    「今日は早いですね」
    ドアをくぐる杉元に尾形が声をかけてきた。
    「あー、なんか友達が鍋しようって言うから行こうかなって。すぐその辺にいるらしいし」
    「こちらお前の彼氏?」
    面白そうに眺めていた坊主頭の男が尾形の肩からぴょこんと顔を出した。
    「全然違う。飲み友達の杉元さん。杉元さん、こっちは同僚の宇佐美です。即忘れていいです」
    「いつも百之助がお世話になってま~す!」
    と尾形の頬っぺたをみょーんと引っ張る。そうそう、俺は飲み友達の杉元です。
    「鍋いいね! 百之助も実家から帰ってきたばっかりでご飯まだだろ?鍋系の店探そうよ」
    「ああ」
    えっ、泊まりって彼氏さんと一緒じゃなかったんだ。急に杉元の身体に温かい気力が満ちる。ちょっと迷って、頭を掻いて提案してみる。
    「あ~、よかったら尾形さんたちもうち来ます? 鍋は人数いた方が楽しいし。場所俺んちだし」
    「いやさすがに友達の鍋に参加するのは遠慮しますよ」
    尾形が苦笑して断ったところで白石と房太郎が歩いてくるのが見えた。
    「杉元~!」
    「おう白石。房太郎も久しぶりだな」
    しかし久しぶりに会ったにも関わらず房太郎は杉元を通り越して後ろを指さしている。
    「もしかして、宇佐美さん?」
    「あれ~海賊くんじゃん!」
    全員が目を丸くする中、ひとまず鍋を囲むことだけは決定した。



    鍋の湯気を浴びながら、男たち5人はそれぞれのテンションで乾杯する。杉元の家は大学の時から宅飲みの場になることが多く、人好きな杉元としては家に誰か来るのは嬉しい。めいめいに肉や野菜を取り分けてはふはふと食べる。
    「宇佐美さんはうちの美容室のお客さんでさ。お互いノリがあって何回か飲んだりしたんだ」
    「海賊くん話してて飽きないんだよねえ」
    あっという間に皆打ち解け、わあわあと、だらしなくも活気づいて食べて飲む。酒が無くなれば誰かが冷蔵庫を開け、勝手に食べ物がテーブルに並べられる。
    「ぼくちゃんと杉元と房太郎は大学で同い年なの~!」
    「白石お前一浪だろッ」
    テヘッと舌を出す白石。房太郎は宇佐美との再会に美容トークの花を咲かせている。白石は尾形に尾形ちゃんって呼んでい~い? と距離を詰めて杉元にアホかと釘をさされていた。尾形は様々な会話を聞き、笑いながら酒を楽しんでいる。
    「海賊くん、今は恋人いないの?」
    「うん、特定はいないかな、みんな可愛いからさ。宇佐美さんは? てかみんな恋人いるの?」
    大分酒も進んだ頃、若い男たちならではのプライベートの話が始まった。
    「僕は鶴見専務をどこまでも愛しているからね! そこは譲れないけど…たまには色々あるかな」
    「ふーん。ツルミさんって上司に一途なの変わらないね。白石は…どうせいないだろ」
    「ちょっと! 房太郎!」
    「ははは、まあまあ。杉元は? 最近会ってなかったけど恋人出来たのか?」
    房太郎はからっとした性格で、良くも悪くも人の心に一足飛びに入ってくる。誰とも朗らかに話せるが白石とは違うタイプで、自分のペースに巻き込むのが上手い。
    「ん~~~上手くはいってないな。全然モテねえ」
    「女も男も?」
    房太郎が興味津々で聞いてくる。が、自分の恋愛はこのところばらばらすぎる。会社の先輩とも駄目だったし、かと思えばぬくもりを求めてSNSで出会いを探したりもした。何も話のタネになるようなことは無かった。尾形とのことは死んでもバラす訳にはいかない。
    「いないとはいっても今は男の方が好きだけど」
    「あれ? でもこの間女の人とデートしてませんでしたっけ」
    杉元の隣には酒瓶や野菜の入ったボウル、様々な食器が雑然と積んであり、その向こうの距離から尾形の笑うような声が投げられてきた。
    「杉元もバイに戻ったか。俺も変わらずどっちも好きだぜ。てかうまくいってるんじゃあねえか! 」
    「そんなんじゃあねえよ…」
    尾形がそんなことを言い出すとは思わなかった。何だか尾形とほんの少しの、薄い膜のような距離が出来たように思う。そのことを気にするのは杉元だけだとは思うが、どこか寂しい。
    「そうだよ! 杉元さあ~、こんなことばっかり言うから出会い系やれって話したのに、こっそりお持ち帰りしてたんだよ。お風呂でコンドーム使うようなことしてっからね! モテるやつは何だかんだこれだよ」
    「うおおおお~杉元お~やるじゃん! お前ホントそういうとこだぞ!」
    「シャワー借りた時みたもんね!俺は悔しいよ」
    「へー杉元くん、可愛い顔してやることやってんだあ」
    「違いますよ! そんなんじゃないですから! 全然いいことなんて何も無かったんだよ。別にドキドキするとか付き合いたいとかじゃねえから、誤解すんなよ。キスもして無え!」
    確かにこの間SNSで会った人とはデート止まりだった。ベッドを意識したのは恥ずかしながら事実だったが、キスはおろか手を握ることすら1ミリも思いつかなかった。
    ただ、最近の杉元に経験があるとすればそれは、
    「そういう流れになったけど、やりたくてそうなった訳じゃあねえ!!」
    杉元のかけがえのない大切な経験は、尾形と過ごした一夜だけだった。
    杉元がハッと気づいた時には周りが嵐のように盛り上がってしまっていた。
    「あ……あの」
    杉元の声は掻き消される。
    「ま~時にはやらざるを得ないこともあるよな、俺だって似たようなもんだぜ。やる時もクラブで知り合った後すぐホテル行くこともあるし」
    「ぼくちゃんも努力はしてるんだよ~? お店にも行くけど」
    「アプリもヤリモクだったら悪くないよね。百之助は今彼氏いるしねえ。あ、浮気性の彼ともうラブラブになった?」
    杉元は左を向くことが出来なかった。
    この言い方ではまるで尾形との一夜をやりたくてやった訳じゃないと否定したも同然だ。みんなには分からなくとも尾形にだけは通じる。誤解だ!そうじゃあないんだ!でも、どうやって伝えればいいのか分からない。
    心臓がきゅうきゅうと鳴く。あんなに味方になってくれたのに、自分が恥ずかしいと思う。二人であんなに楽しかったのに。やりたくてやった訳じゃないって? あんなに腕の中にいてくれて嬉しかったのに。
    背中に冷たいものを感じながら、尾の言葉を待つ。
    一拍あいて、こんと缶ビールを置く音がした。
    「まあ最近は仲良くやってる。セックスもうまいしな」
    おお~と一気に盛り上がる一同。どこで会ったの? セックスは仲良しの基本だもんな当然だぜ、死ぬほどキモいけどおめでと。会話が過熱していくのに杉元の頭はどんどん冷えていく。
    「あの人は浮気性でも……絶対に俺を傷つけるようなことを言わない」
    ぽつりと尾形の声が聞こえた。笑うような寂しいような、乾いた声だった。
    うまく頭が働かない。俺、さっきなんて言ったっけ? 
    少しずつ形になってきた気持ちにようやく気がつきそうだったのに、自分のしたことの意味が理解できない。
    おれなんていった?

    杉元に分かるのは、自分の恋は始まる前にもうゲームオーバーしたということだけだった。尾形を傷付けるという最悪の形で。
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