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    金カム尾形。尾杉・杉尾・リバ好きです
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    バーで出会い仲良く恋愛の話をする杉と尾のお話の続き18
    ちょっと仲良く恋愛の話をする話

    バーで出会い仲良く恋愛の話をする杉と尾のお話の続き18アパートを出ると日差しが輝いていて、尾形さんと心を交わらせるにはぴったりの天気だった。待ち合わせは電車に乗って大きな公園のそばにあるカフェ。二人の気持ちは昨日通じ合ったばかりで、そのことを思い出すと頬がむず痒くて、そわそわして、跳ねたり叫んだり駆けたりしたくなってしまう。昨日の夕方はスマホ越しにおちょくられ、そして夜にはあんな燃えるような痴態を見せつけられて、信じられない事ばかりで、俺の頭は沸騰したまま熱を逃せていない。早く尾形さんにこの熱を移してふらふらの身体になったところを抱きしめたい。こんなに浮かれて、俺はまるでガキみたいだ。腑抜けた自分を諫めるべく人でごった返す土曜日の狭いホームに立つけど、みんなに自慢したくてにやけてきてしまう。今日だけは駆け込み乗車を狙ってぶつかってくるやつも許してやるかと寛大な気持ちになる。
    君たち、俺には尾形さんが待ってくれてるんだぜ。羨ましいだろう。


    木漏れ日の眩しいテラス席に尾形さんは静かに座っていた。肘をついてメニューを見ているだけなのにまるで一枚の画のように目に映る。黒いタートルネックに黒のパンツはシックな合わせ方でいつも通りだが、茶色のローファーは昼間の陽に照らされて丁寧に磨かれている様子まで見て取れた。合わせている赤茶色のソックスが意外にお茶目だ。
    「尾形さん、お待たせ。待ちました?」
    「いや、俺がゆっくりしたくて早く来たんです。杉元さんこそ早かったですね」
    「…早く尾形さんに会いたかったから」
    目がキュッと細まったあと白い肌がふわっと赤らみ、嬉しさが空気に交じって伝わってきた。俺もこんな風に気持ちが染み出しているのだろうか。
    「俺はエスプレッソ。杉元さんは?」
    「うお、苦そう。格好いいですね。俺はクリームマシマシの甘いのが良いなあ」
    「エスプレッソは砂糖を沢山入れるのがうまいんですよ。むしろクリームマシマシのが凄いな。杉元さんに似合ってますけどね」
    カウンターでドリンクを買う。席に戻ると尾形さんがドリンクにストローを差して渡してくれた。
    「なんかめっちゃサービスが良いっ。ありがとうございます!」
    俺が驚いたふりをして笑うと、尾形さんもはずむように笑う。
    「サービスねえ。俺は杉元さんに媚びてるんですよ。今はこうするしか近づく方法がないし」
    周囲の喧噪は儚いBGMになって遠ざかり、二人の空気が濃くなるのを感じる。尾形さんが片眉を上げてじっと見てくるので俺は仕方なしに棒状に袋詰めされた砂糖を取る。
    「二つです」
    尾形さんは足を組んで顎に手をやり、何の恐れもなく促してくる。さらさら砂糖を入れて俺がエスプレッソを混ぜるのを見て目を細める。
    「はい、できた。どうぞ召し上がれ!」
    ありがとうございます、とカップごと俺の手を両手で包んでははあと笑う。頭の先までが過熱されてゆくのを嫌でも感じてしまう。尾形さんが重なり合う手からエスプレッソカップだけを抜き、俺の指を握りながら一口飲んでうまい、と一息つく。
    「これからどうしましょうか。特に何も決めてなかった」
    尾形さんは右の肘を付きながら公園を見まわし、左手で俺の中指を揉む。小指を絡めたり親指の付け根をさすったりせわしなく遊んでいる。俺は会話と愛撫され続ける手と飲み物とこれからの予定と何から思考すればいいのか理解不能でもう泣きそうだ。気休めにドリンクを啜ろうとしたら冷たかったはずのマシマシのクリームはどろんと溶けていてますます泣けてくる。
    「あっちの動物園てリ、リスが沢山いるみたいですよ。尾形さんリス好きですか?」
    「好きです」
    「俺も好きなんです。見に行きませんか?」
    「リスじゃなくて杉元さんが」
    俺の目を見つめて当然のように尾形さんが言い切る。この目の前にいる格好良くていい匂いがして仕事出来そうでお洒落で照れ屋で自信家でスケベで可愛い男が俺を好きだって言ったのを俺は今絶対に聞いた。心臓がびりびり麻痺するせいで継ぐ言葉を探し出せない。少しあがいて、そして諦めるしかなく両手を上げて屈伏する。
    「なんですかそれ」
    「降参してるの。叶わないなって思って。言っておくけど俺も尾形さんが好きですよ。多分、尾形さんが思ってるよりも」
    「え…」
    唐突な告白が自分に跳ね返ってくるとは思い至らなかったのだろうか。途端に小さくなって尾形さんは髪の毛をすりすり撫で始めてしまった。こんなテラスなんかで毛づくろいする彼はリスよりもずっといじらしい。いけないことだけど指でつついて苛めたくなる。
    二人の好意についてもっと深く話したいけれど、それには二人の間にあるテーブルが邪魔過ぎた。
    「これ飲んだら、本当にリス見に行きましょうよ」
    「俺、一回もそういうとこ行ったことないんですけど楽しいんですか?」
    「えーっ楽しいですよ。それに少なくともこの店よりは手を繋ぎやすいし」
    子どもよりも顔を輝かせて尾形さんはエスプレッソを一気飲みした。口の周りを黒くしながら慌ててジャケットを羽織っている。そんな姿を見ると頬が緩んで、やっぱり苛めたくなってしまう。


    小さな林に囲まれた動物園はこじんまりと佇んでいて小さな生き物たちが沢山住んでいた。丸くなって眠る狐やひっきりなしに木に登っては降りる山羊、細かく震えて餌を食べるハムスターの群れ。ハムスターの赤ちゃんも遠くから見られるように展示されており、尾形さんは不思議そうな顔でガラスを覗き込んでいた。大きな目を見張って動物を見る尾形さんはいつもよりリラックスしていて俺も嬉しい。そしてハーレムを作るシカの群れを見て、子ザルが遊ぶ猿山を見て、鶴を見て、山猫を見た。
    山猫はそっそ、そっそと檻の中をうろうろ歩いていた。俺は可愛い模様だなんて思っていたんだけど、尾形さんの鬚や頬の傷、それから濃いまつげに縁どられた黒目は山猫に似ている気がした。それを言ったら臍を曲げそうだけど。尾形さんは「山猫なのに山の中に居られなくて可哀そうだな」と平らな声で言い顎髭をさすっていた。だから黙って尾形さんの指先に触れた。太くて張りのある指が偶然みたいな振りをして俺の指に触れて、それを何度か繰り返してから手を繋いだ。
    退屈そうな山猫と別れてリスを見に行く。普通の家がすっぽり入るほどの大きな檻に人間が入る形の展示だった。リスたちの暮らしを間近で見ることが出来て面白い。50センチ先の果物や木の実やドライフルーツにリスが駆け寄ってきて、食べたり喧嘩したり騒がしくも微笑ましい。尾形さんもあらゆるものを見回して楽しそうにしている。
    「あっこいつ、どんぐりを持って逃げたぞ! なんて卑怯な奴だ」
    「尾形さん、動物は弱肉強食なんですよお」
    こんなにテンションが上がる尾形さんは初めてじゃないか? めちゃくちゃ楽しい。
    「あんな高い天井にいるっ。あっ杉元さん、助けてください、俺のジャケットにリスが入ったんですけどっ!」
    「ヤダかわいい~!」
    勿論リスは可愛いけど、今のは脚から登られ、リスタワーと化した尾形さんがって意味だ。ふわふわ尻尾に驚いて硬直しながら叫ぶ様子は普段とのギャップがあり過ぎて、心をぎゅうぎゅう鷲掴みにされてしまう。尾形さんの可愛いの引き出しがまたひとつ増えていく。
    すっかりへとへとの尾形さんの手を引きながら、貴重な思い出をくれたリスに感謝して園を後にした。尾形さんからはリスが忘れていったどんぐりを貰った。


    「面白かったですか?」
    「いやあ、予想以上にすげえ面白かったです。もっとつまんないと思ってた」
    ひどい、すみません、と二人で笑い合うだけで身体の隅々まで幸せだ。午後のふんわりとした木漏れ日の中、公園のベンチに深く腰掛けてゆったりと池の水を見る。今なら聞ける気がした。
    「尾形さんはさあ、どうして俺を好きだって思えたんですか」
    「? 変ですか」
    「昨日とかさっきもだけどサラッとす…好きとかいうじゃん。いつから俺のことが好きなの。どこを好きになったの」
    自分が混乱していることは気づいているけど感情が雪崩ていくのを止められなかった。
    「結構色んなことあったじゃあないですか。最初え~と、あの」
    「セックスの仕方教えた時ですか」
    尾形さんがこらえきれずに噴き出して肩を揺らす。
    「そんな言い方…! まあ、そうですけど。結局最後までしちゃって」
    「してませんけどね」
    「だから何なんですかそれ。俺とやったでしょ!」
    「ふふん。まあ良いじゃないですか。しかし杉元さんの台詞は酷かったなあ。あれには傷つきましたよ」
    「誤解とはいえホントにすみません…」
    「でもそこなんですよね」
    「?」
    尾形さんは身を乗り出して両ひざに両肘をついて真っ直ぐ前を見ている。過ぎていった幾つものシーンの一体どれを思い出しているのだろう。
    「多分、俺の性格上まじで腹が立つと興味を失うかどうでも良くなるかどっちかなんですよ。でもそうじゃなかった」
    表情を失った横顔からは何も読み取れないけど、ただひどく真面目に見える。
    「石橋を叩いて渡るとか言いますけど、あの夜、杉元さんと一緒に橋どころか川を飛んだような気がしたんですよ。世界が変わったというか。そして、別にそういうことしたく無かったって言われて、杉元さんにボチャンて俺だけ川に突き落とされた気がしたんです。いやー困ったよこんなことになっちゃってって嫌がられたみたいに。言ってること分かりますかね?」
    言葉をきって息を吸い込む。
    「きっと俺傷ついちゃったんですよ」
    寂しそうに俺に顔を向けた。何を言ったらこの人を少しでも良くしてあげられるだろう。
    「裏切り者って思いました。そして忘れられなくなっちゃった」
    「…」
    「ずっと忘れようと頑張ってたのに、先週クラブで実は違ったってあっさり言われたでしょう。俺、かーッて頭おかしくなってとにかくムカついて。あの時は杉元さんに乱暴して本当にすみませんでした」
    申し訳なさそうに目を伏せる。わざわざ言葉にして謝罪するなんて律儀なんだなあ。
    「いや、元はと言えば俺が悪いから…あと正直尾形さんの気が済むならと思ってたし。そんで彼氏さんどうしたんですか? 昨日別れたって言ってましたけどマジ?」
    あ~、と白目を剥く。こんな時に剝かないでくれと思うが尾形さんと元の彼氏さん(今は他人である)の間にも色々な事情があるのだろう。
    「鍋の時以降ほとんど一緒にいたのは確かですよ。でもずっと杉元さんが頭にちらちらして。変な話なんだけど、杉元さんに乗っている時、ああ俺、捨てられたみたいで悔しかったんだな、杉元さんと一緒にいたいんだな~って気づいたんです。で、昨日、杉元さんの顔を見た時ああ、て確信しました」
    「なるほど、ぶっ飛んでる」
    「ははあ、やっとここまできたんです。褒めてくださいよ」
    にこりとも、にやりともいえる笑顔で俺を見て肩を竦めた。言われなくとも、褒める役を賜りたい。俺にしかそれは務まらない。
    「俺、ちゃんと尾形さんを好きです」
    もう言葉が残ってない。尾形さんの心をもてなすにはちっとも足りないけど、少しでも分かってもらえたらと思う。
    尾形さんは薄く笑って軽く頷く。許されるか分からないけど肩に両手を回すと尾形さんの両手も俺の背中に張り付いた。少しづつ力を入れて抱きしめると、反対に尾形さんが俺をぎゅっと抱きしめた。切ない気持ちに押し出されて、すきなんだ、と腕の中に囁く。これで、俺にはもう本当に何もすることが残っていない。
    尾形さんは何も答えをくれず、代わりに俺の耳たぶを噛んでため息をつく。公園には冬の風が吹いているけど俺たちの吐息ばかりが温かい。泣きたい気持ちでそっと身を剥がして顎髭をくすぐると尾形さんが気持ちよさそうに目を細めた。冷たい鼻先が擦り合わされた瞬間、付き合ってるからもうキスしてもいいんですよ、と低い声が小さく響いた。
    一応周りを気にして目を閉じて冷たい唇をすりっと一度だけ合わせる。目を開けた尾形さんがめちゃくちゃ恥ずかしそうに、あーキスしちゃった、と笑った。

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