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    ポイピクミッシェルさん

    @michelle09_yjmk

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    POIPOI 8

    月イチ企画の第七弾です。

    サイチくんが一人で🚬吸ってるだけのお話です🤭

    #現パロ
    parodyingTheReality
    #sgo

    2023年7月 パンツごわごわ あー、煙草吸いたい。
     普段はあんまりそんなこと思わないのに急にそれはやってきた。なんだかすごく煙草が吸いたかった。俺は隣で眠る尾形を起こさないようにそっとベッドから抜け出した。

     尾形は多分、俺のことがすごく、すごーく好きなんだけど基本態度には出ないから。だから今も俺に背を向けて眠っていた。それがたまに無性に淋しいと思う時もあるけど今はそれがありがたかった。尾形に一ミリも怪しまれず俺は立ち上がり、真っ暗な部屋の中から脱ぎ捨てたシャツとパンツとズボンをかき集め、玄関先でそれを着て、スニーカーを履いて外へ出た。


     今日は夕方に雨が少し降ってアスファルトが冷めて、だから外へ出ても昼間の暑さが和らいでいた。ちょっとだけ涼しくて俺は嬉しくなった。俺のアパートの階段は鉄でできているから歩くとカンカンと音がする。ズボンの右ポケットに入っているスマホをチラッと見たら午前二時で。俺の部屋から階段までは距離があるけどもしかして、ひょっとしたら足音で尾形が起きてしまうかも。時間も時間だし、俺はゆっくり、踵から柔らかく一段ずつ踏みしめながら階段を下りた。
     階段を下りたらすぐ右側に曲がるとそこは俺たちがいつも買い出しをするコンビニだった。つまり、俺のアパートの階下はコンビニだ。煙草は買わない。持っているから。俺は階段のすぐ右側で立ち止まった。今夜は買い物はしないけどここに用があった。灰皿をお借りするんだ。


     ズボンの左のポケットから青いボックスと青い百円ライターを引っ張り出す。ああ、ボックスの角が少し潰れている。多分アパートを出てくるときに踏ん付けたんだ。俺は中身を心配したが開けてみて無事を確認してホッとした。暗い中よく無傷だったな。中には三本の煙草が入っていて、俺はそこから一番奥の一本を取り出した。そしてそれを唇に挟む。
     俺の唇、さっきまでずっと尾形に触れていた。尾形の少し厚い唇に優しく触れ、尾形の白い首筋に強く押し付け、尾形の硬く尖った乳首に嚙み付くように触れ……ああ、多分全身、全身に触れていたんだ。でも今俺の唇を独占しているのは煙草だった。メルヘンな俺はその行為に少しだけ、ほんのひとつまみのスパイスみたいな罪悪感に酔った。ふふ、浮気じゃないんだけどね。


     ボックスを左ポケットに突っ込みながら右手で青いライターに火を灯す。涼しい空気が一瞬ぽわっと温かくなった。それはまるで尾形の真っ白な肌が俺の手でピンクに染まる瞬間のようだった。俺の右手、今夜も頑張ったよな。あの瞬間はいつも俺に自信をくれる。俺がちゃんと尾形を愛せているという自信。尾形がちゃんと俺の想いを受け取れているという自信。愛は心の問題だ、とはいえ俺は欲張りだからそれをちゃんと目で見たいし手で触れたい。
     俺は咥えた煙草をその火に寄せて小さく息を吸い込んだ。煙草に火が移って白い煙が立ち上った。それを確認してから改めて深くフィルターを吸引した。苦くて焦げ臭くて少しだけ甘い、俺がいつも吸っている煙草の味が口と鼻と肺と、全身に染み渡っていって、多分きっと指先までじわりと染みたと思う。そこまで吸い込んでから細く、長く煙を吐き出した。俺の身体を通して出された煙は、煙草から直接出てくる煙と違って白くない。きっと酸化?するのかな。二酸化炭素と混じるから?細かいことはよく分からない。だけど煙は俺の中の良くない感情みたいなもの引き連れて外へ出してくれるんだ、と信じている。だってそうだろ、すごく美味しいんだから。


    「はぁぁぁぁ~」
     俺は子どもの頃憧れた、だけど何故かなりたくなかったおっさんとまったく同じ呼吸をした。
    「お前にはまだ早いよ」なんて言っていたあの頃のおっさんは元気なんだろうか。今どこかで会うことがあったら肩を並べて煙草を吸いたい。で、尾形のことを紹介したい。煙草が吸える歳になってその上恋人までいるって知ったらおっさんはきっと驚くし祝福してくれるに違いない。俺がおっさんだったらきっとそうする。だけど俺はおっさんになるにはまだ早い。どうしたものか。若くなるにはどうしたらいいのか。いや俺、まだ全然若いけどね。
    ……
    ……ハッ。いいこと考えた。俺はふふんと笑ってその場に腰を下ろした。
     どうだ、これで俺はおっさんじゃなくてヤンキーだ。こういうものは形から入るのがいい。俺はヤンキー、俺はヤンキー。ちょっとだけ不愛想に、煙草の咥え方も斜めにして。俺は単純だからこれだけで十分変身できる。
     だけどヤンキーって何だろう。友だちにもあまりいないタイプだよなぁ。あ、別にちゃんとしたヤンキーになる必要はないか。なんか尾形、ヤンキーとか好きじゃなさそうだし。吸い込んだ煙をフーッと空に向かって吐き出してみる。少し薄暗い煙は深夜なのにコンビニのあかりで照らされた不自然に明るい空に溶けるように消えていく。


     俺、何だかんだでいっつも尾形のことを考えている。好きだから当たり前なんだけど。尾形も俺と同じようにいつも俺のことを考えていて欲しい。多分考えていると思う。尾形も俺のこと好きだから。あーあ、それだけで煙草が美味い。セックスの後に無性に煙草が吸いたくなるのってお互いの「好き」を確かめ合って、煙草が美味しくなるって身体が覚えたからかもしれない。
     今夜の尾形も本当にかわいかった。今夜のハイライトはアレだ。俺にしがみついて「離れないで」と懇願しているのにいざ腰を進めようと思ったら「だめだ」「やめて」と弱々しく俺の胸を押したところだ。
    「それはうそ、でしょ」と言い含めるように囁いた時の尾形の顔……嘘、と嘘じゃない、が入り混じって怒りそうな、泣き出しそうな、だけど嬉しそうな、昼間には絶対見られない顔をしていた。これが俺の男かよ、なんて思ったら脳汁が漏れ出すくらい興奮したし、その興奮に任せて尾形をガンガン揺さぶってしまった。あー、煙草美味ぁい。
     セックスが終わってさて寝るか、という時も尾形はかわいかった。布団から顔だけピョコっと出して「手!」と叫ぶから何事かと思ったらどうやら手を繋げ、という意味だったらしく布団の中で手を握ってやったらものすごいドヤ顔をこちらに向けてから気絶するように眠ってしまった。その手は尾形の気分ですぐに振り払われてあっという間に背中を向けることになってしまうけど。それでもそれ込みでワガママ猫ちゃんぶりが堪らなかった。うーん、煙草美味い。
     尾形は寝顔や寝言までかわいい。時々「すぎもと……」と言いながら布団の中でころりと転がって俺の腕に手足を絡めてしがみついてきたりして。これはかなりレアケースなんだけど。おでこをぐりぐりと俺の肩に擦り付けたり俺の項をすんすん嗅いできたりして。はー、煙草美味。


     尾形のことばかり考えていたら二本目の煙草がもう終わりそうだった。そろそろベッドに戻らないと。尾形が起きた時、隣に俺がいなかったら淋しいに違いない。俺はあいつを少しでも不安にさせたくない。なぜなら俺は尾形が好きだから。



     ああ、それにしてもだ。俺は煙草を吸い終わって満足したから気が付いた。
     どうやら間違えて尾形のパンツを穿いてきてしまったようだ。
     おしりのでかい尾形のパンツはなんかごわごわする。

     早く脱ぎたい……
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    ポイピクミッシェルさん

    DONE月イチ企画の第七弾です。

    サイチくんが一人で🚬吸ってるだけのお話です🤭
    2023年7月 パンツごわごわ あー、煙草吸いたい。
     普段はあんまりそんなこと思わないのに急にそれはやってきた。なんだかすごく煙草が吸いたかった。俺は隣で眠る尾形を起こさないようにそっとベッドから抜け出した。

     尾形は多分、俺のことがすごく、すごーく好きなんだけど基本態度には出ないから。だから今も俺に背を向けて眠っていた。それがたまに無性に淋しいと思う時もあるけど今はそれがありがたかった。尾形に一ミリも怪しまれず俺は立ち上がり、真っ暗な部屋の中から脱ぎ捨てたシャツとパンツとズボンをかき集め、玄関先でそれを着て、スニーカーを履いて外へ出た。


     今日は夕方に雨が少し降ってアスファルトが冷めて、だから外へ出ても昼間の暑さが和らいでいた。ちょっとだけ涼しくて俺は嬉しくなった。俺のアパートの階段は鉄でできているから歩くとカンカンと音がする。ズボンの右ポケットに入っているスマホをチラッと見たら午前二時で。俺の部屋から階段までは距離があるけどもしかして、ひょっとしたら足音で尾形が起きてしまうかも。時間も時間だし、俺はゆっくり、踵から柔らかく一段ずつ踏みしめながら階段を下りた。
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    実家から出て2人で同棲してます。
    ライトな「価値基準が違うようだ!」が書きたくて書いたお話です。
    喧嘩したり家飛び出したりしてるけど内容は甘々。
    「君とは価値基準が違うようだ!!実家に帰らせてもらう!」

    近所中に響き渡る声と共に、騒々しく杏寿郎は出ていった。
    またか、と勢い良く閉められた玄関のドアをぼうっと見つめること10分。リビングの方から間の抜けた通知音が響く。重たい足取りで通知を確認すると、それはまさしくさっき出ていった杏寿郎からのメッセージだった。

    『今日は実家に泊まる』

    …律儀と言うか何と言うか。喧嘩して出ていったにも関わらず、ちゃんとこういう事は連絡をしてくるのだ、杏寿郎は。

    先程までどうしても譲れないことがあって口論していたのに、もう既にそのメッセージだけで許してしまいそうになる。

    駄目だ、と頭を振って我に返る。この流れもいつものことだった。実際、今までは俺の方から折れている。

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