『月見酒』起床。
人の声一つ聞こえぬ、静かな夜だった。
己は時々、月見酒をする。
世界隊の隅に置かれている、一つの椅子。
「グイド」が覚醒したときのみ使われる、特別な物。
その存在を確認した後、のそりと棚を物色しにいく。
うむ。必要な物は全てあるな。
湯を沸かし、必要な物を盆に乗せる。
椅子と丸机を、窓際まで運ぶ。
手にはとっておきの葡萄酒を。
薔薇の水で割ったそれは、一等良い香りがした。
一口、口に運ぶとアルコール特有の風味が身体に広がる。
夜空を、見上げる。
大層明るい、満月であった。
「世界ーー!帰れたらあのお茶の作り方教えてくれよーーーーー!代わりにオレっちのとこの美味しい紅茶持ってくからさーーー!」
「わかったー!!たのしみにしてるー!!」
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