Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ボロコシ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 13

    ボロコシ

    ☆quiet follow

    『月見酒』ごだるかネタバレ有。世界が月見酒してるだけ。

    『月見酒』起床。
    人の声一つ聞こえぬ、静かな夜だった。

    己は時々、月見酒をする。


    世界隊の隅に置かれている、一つの椅子。
    「グイド」が覚醒したときのみ使われる、特別な物。
    その存在を確認した後、のそりと棚を物色しにいく。
    うむ。必要な物は全てあるな。
    湯を沸かし、必要な物を盆に乗せる。

    椅子と丸机を、窓際まで運ぶ。
    手にはとっておきの葡萄酒を。
    薔薇の水で割ったそれは、一等良い香りがした。

    一口、口に運ぶとアルコール特有の風味が身体に広がる。
    夜空を、見上げる。
    大層明るい、満月であった。


    「世界ーー!帰れたらあのお茶の作り方教えてくれよーーーーー!代わりにオレっちのとこの美味しい紅茶持ってくからさーーー!」
    「わかったー!!たのしみにしてるー!!」
    その約束が、果たされることはなかった。

    「月光…」
    「そんな顔するなって〜!最期に美味しいお茶が飲めてオレっちめっちゃラッキーだし嬉しい!!!!」
    あの時の己は、私は、どんな顔をしていただろう。

    「世界のとこ美味しいもんいっぱいだなーーー、せっかく近かったし行ってみたかったな!」
    それに、返事は出来なかった。
     
    ワイングラスが空になった後。
    封筒を取り出す。
    レシピと、一つの手紙が入ったそれは、灰となって、空へと舞っていった。

    ティーカップに手を付ける。
    あの日、あの時のレシピのミントティーを飲む。


    「ここに立ってるみんな!」
    「全員!!」

    「最高に!!!」
    「カッコ良かったぞーーーーー!!!!」
    それは、確実にグイド・フーシェに届いた。


    「…嗚呼、」
    「本当に、月が綺麗な夜だ」
    月光。雫で火が消えたライター。ミントティー。
    手紙の内容は、月のみぞ知る。


    『月見酒』おわり
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator