「きみだけのサンタさんが来たよ」
突然部屋に現れてそう宣言したフィガロに、俺はぽかんと口を開けた。
「ほら、何が欲しいか言ってごらん?」
優しい声に対し、俺は困惑を返す。
「い、いきなりやめてください」
「あはは、冗談じゃないのに」
茶化すような笑い声さえ普段よりやわらかくてますます動揺する。
「俺だけのって……。南の国の子たちはどうしたんですか」
「もちろん、俺はあの子たちのサンタさんでもあるよ。いや、魔法舎全体のサンタさんかも。俺は優しいみんなのお医者さんだからね」
それならやっぱり冗談じゃないですか、と言いかけて、いたずらっぽくきらめく瞳に捕まる。
「でも、今は正真正銘、きみだけのサンタさんだよ。だからきみも、遠慮せずに欲しいものを教えて」
この、長い時を生きてきた、いつも広い視野でみんなを見ている魔法使いが、今だけでも俺だけを見てくれるなら、もうそれだけでプレゼントのようなものだ。それなのにその先まで欲張ってしまって、俺は目の前の男に抱きついた。すぐにこちらの背中にも手が回って、ゆっくりぎゅっと抱きしめられる。
「プレゼントをどうぞ」
耳元に落ちてきたあたたかい声に、俺は胸がいっぱいになるのを感じていた。