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    春園ひなた

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    春園ひなた

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    「どれだけ世界が変わっても」 兄弟弟子
    感情はあるんだけど関係性が変わることもない話 南開拓し始めくらい

    ##pixiv収録済み

    「こら」
     後ろから声をかけると、オズは首だけで振り向いた。何故止めた、と顔に書いてある。実際に口にするなら最初の疑問詞だけだったろうが。
    「そう簡単に地形を変えるな」
     言葉を継いでやると、掲げていた杖が下される。俺に向き直ったオズは、じっとこちらを見つめた。
    「お前が言うのか」
    「昔の話だろ」
    「南は」
    「最初だけだよ。ある程度整えてからは自然に任せてる。生態系が発達しないと意味がない」
     そこでオズは再び黙り込んだ。顔に同じ疑問詞が浮かぶ。
    「できるからってそう簡単に世界を変えちゃダメなんだよ。せっかく人間の反発だってマシになったんだからさ。最近は魔法使いの価値観だってそっち寄りになってる。もう俺たちの天下じゃないんだ」
     軽く講義して、肩をすくめてみせる。
    「それとも今からまた世界征服でもするつもりか?」
    「お前が望むなら」
    「は?」
     冗談ではないのが分かる顔だった。まあ、そもそもこいつが冗談を言うわけもないのだが。
    「私が一方的にやめたことだ。だから、お前が望むなら」
     俺は笑みを浮かべてやる。
    「俺が世界征服を望むと思うか?」
     オズがかすかに眉を寄せる。
    「わからない。だから望むならと言った」
    「望むわけないだろ。冗談だよ」
     眉間が緩む。そうか、と口にせずに告げる。
    「帰る」
     そう言うとひたと視線が注がれた。いつもなら迷惑がられてもオズの城に押しかけて酒でも開けるところだという自覚はある。予想がつくくらいにはこいつの中に俺の蓄積があるんだな、という当たり前のことを確認して、それを裏切るのは何故だか少し気分がよかった。
     視線を外さないわりに言葉も行動もなく、だから俺はその場を箒で飛び立った。今日の北の国の天候は穏やかだった。
    (お前が望むなら)
     声が頭の中で繰り返される。まるで、今度は俺の意志を尊重するとでも言うような。馬鹿馬鹿しい。期待して損をするのは俺だ。たとえオズの側に俺を欺く気も裏切る気もないとしても、結局はそうなるのだ。どれだけ世界が、時代が変わっても、オズは俺の答えにはならないし、俺もオズの答えにもならないだろうことくらい、とっくのとうに知っていた。
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    春園ひなた

    DOODLE「猫の瞳」晶フィ
    ナンジャ第二弾かわいすぎたので、何番煎じかつ自分でも過去に書いてるんですが猫に変身ネタを書きました。
    重心としては猫以外の方に寄っていますが……。
     猫になったフィガロを見て、俺は目を輝かせてしまった。
    「わああ!」
     毛足が長くて、整った顔立ちをしている。ふわふわした尾を優美に振って、こちらに目配せしながら顔を洗ってみせる。サービスの良さも、きれいな榛と灰の瞳も、これがフィガロであることを物語っているのだが、そうやって意識しないと忘れてしまいそうなくらい、俺は目の前の猫に心を奪われていた。
    「触っていいですか? わっ」
     聞き終わる前に向こうから手にすり寄ってきてくれて俺は感動する。うっとりするほどやわらかくなめらかな毛並みだった。
    「はあ……ふわふわ……すべすべ……すごいねえ」
     一度触れてしまうと離すのが惜しくて、俺は両の手で猫を撫で回す。気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らしてくれるのがたまらない。しまいに腹を出してくれたので、かがみ込むように顔を近づけた。このまま頬ずりしてしまいたい。吸ってしまいたい。にゃあん、と甘く鳴かれる。いいよと言ってくれているんだろうな、と思いながらも顔をうかがって、改めてその瞳に見惚れた。
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    りう_

    MAIKINGフォ学オンリーの新作です。
    完成は後日になりますが、登場人物数人で繰り広げられるフォ学サスペンス?のようなもの。
    出来上がり次第、追記していく予定です。
    あんまりフィガ晶♂ではないですが、追々そうなっていくと思います。
    ※開幕で人が死んでいますので要注意。
    フォ学なんちゃってサスペンス「……っ」
     ぴちゃり、と音を立てるものはなんだろう。ぼんやりと足元を見下ろす先に、見覚えのある色が見えた。
     ふわふわと柔らかそうで、けれど冬の海のような、どこか冷たさをはらんだ灰と青。
     暗闇に目が慣れて来たのか、ゆっくりと目の前の光景が像を結ぶ。いつも清潔に整えられているはずの髪が乱れて、その色が床に散っていた。
    「…ぁ…」
     知らず、声が漏れる。視線が、無意識にその先を追う。
     ぴちゃり。もう一度あの音がした。
     その時初めて、嗅ぎ慣れない何かの匂いを感じる。生臭く、空気ごと重くするようなその匂い。
     灰青の先。多分、背中のあたり。ベージュのベストが赤黒くグラデーションしている。
     どうしてだろう。
     鮮烈すぎる光景は思っていたよりも彩度は無い。それでも、『それ』が赤いのだ。赤かったのだと分かる。分かってしまう。
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