私は辿れば皇家とも繋がるというガレマール貴族の三男坊だ。だが優秀な兄達に比べれば何もかも見劣りする私に家での居場所はなく、いつしか口をつぐみ目立たぬようにすることが習慣となっていた。
しかし、この記憶に残りにくい顔と存在感の薄さこそを活かせると見出され、軍属となり辺境の動向を探る任務についている。表に出ている職務は辺境部隊の書記官だが、実際は民に紛れ情報を探る、いわばスパイだ。
とはいえ私の任務は中、長期的なものが多く荒事は多くない。大抵は行商人を装って敵地の村や町へ通い、信頼を得て情報を仕入れたり流したり…そんなところだ。
特に黒衣森の民は閉鎖的で余所者になかなか心を開かない。私は数年の間、何度も何度も通い、やっとグリダニアに程近い集落での立ち位置を得た。
1932