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    無理矢理ウツハン🚺の言質を取ろうとするカムラお達者クラブの恐怖
    続きます

    ##それゆけ僕らの因習村

    アルハラ事件(カムラ式)無理無茶無謀。
    才能なんて欠片もない。たたら場で燃ゆる猛き炎?とんでもない。あんな娘、飯屋のかまどでちょろちょろいってるのがお似合いだ。現にあの娘の飯はとても旨いのでハンターより飯場の飯炊き女が天職だ。いや天職というなら我が家のルームサービスに雇いたい。朝晩とあの娘の味噌汁が飲めたなら、俺はどんな便利仕事でもこなしてみせるのに。

     思えば、この日の酒には何かしら盛られていたに違いなかった。仕事帰りにカムラお達者クラブ(定員3名)の会合に強制的に呼ばれ、挨拶もそこそこに口に謎の一升瓶を突っ込まれたウツシの口はそれはもう滑らかに動いた。
     夜の集会場、それも隠れ里のカムラともなれば居るのは身内ばかりだが、だからこそ決して口に出してはいけない事もある。里長にはそれとなく伝えてはいたが、とうとう衆人環視の中ウツシは弟子の、里の希望である猛き炎の才の無さに管を巻いた。

     カムラの里唯一のハンター、猛き炎の娘といえば。幼い頃より一筋に修行してきたにしては、技術も技量も心許ない十把一絡げの雑魚ハンター。一部の人間には周知の事実である。
     日々ヨツワミドウに投げ飛ばされ、ビシュテンゴの柿の的にされ、アケノシルムに燃やされながら、いつもからがら狩猟を達する猛き炎(笑)。オサイズチに服のみを切り刻まれ春画みたいになった愛弟子に外套を掛けながら、それでも笑顔で褒めるところを探しその倍改善点を示し「でもちゃんと狩猟できたね!!さすが俺の愛弟子だよ!!!」で〆るのがカムラの教官の常であった。ネガティブな事など言わず言わせず、只管弟子を盛り上げて盛り立てて。

     そんな熱血教官も日々のストレスと臓腑を犯す薬酒には敵わなかった。これはそんな話である。


    ※※※※※



     さて、居合わせた集会所いつメンの動きは示し合わせたように早かった。実際この日のために示し合わせていたのだし。
     ゴコクの目配せでハナモリが露台の御簾を下ろし、マイドが2階へ駆け上がった。ミノトは本日出立した狩人も期間予定の狩人も居ないことを確認し船着き場への道を封鎖する。報せを受け2階から下りてきたナカゴとコジリが師に頭を下げそのまま出ていくのを確認して、オテマエが集会場の暖簾を下ろした。本日貸切也。

     日頃獣のように警戒心の厚い男がウッカリやらかしたこの日こそ計画を実行に移すとき。心身ともに疲弊させるべく計画的に扱き使った甲斐があったというものだ。
     教官職にある男が、ウツシが、愛弟子である猛き炎に関して公には決して認めることの無かった事実。その言質を取るために、今皆の心はひとつになった。

     周囲が場を整える間も、長年澱のように溜め込んでいた静電気を吐き出す雷狼竜の遠吠えは止まらない。あるいは既に男の許容量を超えてしまっていたのかもしれなかった。


    月のあるなしに限らず夜の哨戒には俺が立つ。逃げるなら今だ追いはしない咎はすべて見逃した俺が被る。さあ逃げろそら逃げろ、可愛くて手なんて振ってる場合じゃないだろう。そもそもあの娘は夜出歩いたりしないんですよ、そうだよ俺が教えたんだよ食事と睡眠!早寝早起き!!もうなんでそんなに素直なの!!!

     空の一升瓶の底を卓に叩きつける。長年ハンター達の食事を見守ってきた頑強な飯台は凹んだし一升瓶はヒビが入った。酒精に酔っている訳ではないのか男がひとくち喋るごとに顔色は失せ呂律も怪しくなってくる。毒をも熟すハンターを侵すようなそれが食堂で供される酒であるはずがなく、共犯にされたオテマエの眉間のシワをハナモリが労るように揉み込む。ハモンが持参した鞄から卓上に新たな瓶を並べ、フゲンが卓上に突っ伏した男を子供にするように後ろから抱えあげ、ゴコクがその口にさらに一升瓶を突っ込んだ。男はされるがままである。

     異様な緊張感が場を包む。多少手荒な方法を取ってでも、この機に男にありったけを吐かせねば。入り口の暖簾を潜ってゼンチを抱き上げたヒノエと、お医者道具を下げたカゲロウがやって来た。予定通りナカゴとコジリが声を掛けたのだろう。場を見回して、男の周囲に乱立する瓶のラベルを見て、屈強な里長が屈強な狩人をあすなろ抱きで膝抱っこしているむくつけき有様を見て、お医者はなぜ自分が呼ばれたのか理解する。理解したくはなかった。

    転がる一升瓶が3本。

    知ってますかゴコク様、あの娘は一度も逃げたりしなかった。こんな役割押し付けられて、文句も弱音も山程吐くけれど、訓練をさぼったことは一度もないんです。何度倒れようと言われたことを成し遂げるんです。俺なんかの言う事馬鹿みたいに守って!全部重要で大事なことしか教えてないけど!馬鹿!

    4本。

    ねえハモンさん、下位ハンターに砦の指揮を取れなんて耳を疑うようなこと、あの娘はべそ書きながら成し遂げたんです。俺が、俺が前線から駆け付けたときのあのぶっさいくな顔!あの場で抱き締めてやれないなんてどんな拷問ですか。ああモンスターと一緒に縛り付けて地下通路に隠してやりたかった!!

    5本。

    里長、里長、なんで俺が行っちゃ駄目なんですか。俺なら俺なら、どれだけ大きな竜でもきっと狩ってみせるのに。狩り場で死ねるなら本望なのに。いっそあの娘が手足を損なえば長老たちも諦めてくれますか。そうだ足でも手でも、小指の一本も落とせば武器は握れまい。えっそんなのいやだ、傷つけたくない。何も損ないたくはない。死んでほしくないのになんで俺は。良いように使われて犬死にするのは俺だけで十分だ。あの子が持つなら太刀より包丁。なんでじじぃどもはそれが分からないんだ分からせてやったって良いんだだって俺もそうだった。俺があの娘に太刀を握らせて、俺がなんにも分かってなかったから。

    6本目の封を開けようとし、ここでお医者のストップがかかった。これ以上は今後の仕事どころか日常生活に響く。男は既にまなでしまなでしとうわ言を呟いて虫の息であった。ゴコクは6本目の一升瓶を粛々と片付た。
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