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    @BanriSuzu
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    Webオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。
    国家警察に採用されてから刑事課に行き先が決まるまでのジェ警部の話ですがルークは不在です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。

    #BMB
    ##BMB

    どこにも行けない「ジェイスン警部、ちょっとよろしいですかね」
     大会議室に向かう途中、廊下で呼び止められた。振り向くと、ファイルを手にして立っていたのは警務部所属の警部だった。
    「会議がある。手短に済ませて欲しい」
    「ああ、はいはい。──異動の件なんですが。実は少し、厄介な新人がいましてね。刑事部志望らしいんですが、周囲から浮いた変わり者のようで」
    「ほう?」
    「論文と面接で熱弁したらしいんです。国家警察は、市井の人々を守るヒーローたるべきだ、と」
     ヒーロー。
     久しく聞かなかった単語に、ジェイスンは眉を寄せた。書類を見ていてジェイスンの反応には気づかなかったのか、警部が書類を指先で叩きながら鼻で笑う。
    「警察学校の成績はまあ、悪くはないんですがね。洞察力や分析力、推理力も十分なレベルです。まあ、キャリア組の中じゃそこまで光るわけでもないですが……」
     それはそうだろう。国家警察を志望するような若者は、そもそもがエリートたる才能と素質を十分に備えているものばかりだった。
    「ただ、射撃のスコアが抜群で。術科の成績もかなりのもんです。特に射撃は首席の候補生さえ上回るんで、SWAMが色めき立ってましたね。刑事部に行かせるより、三年くらい警備部でやらせれば青臭いことを口にする余裕もなくなるかと思ってんですが」
    「書類を、見せてもらってもいいかね」
    「あ、はい。どうぞ。最後の方の奴です。名前は……」
     ジェイスンは差し出されたファイルをめくった。ページごとに、入庁したばかりの新人たちのデータが整理されている。付箋の貼られたページが、今回の人事異動の対象者なのだろう。ファイルの終わりにさしかかり、ジェイスンの指が止まった。
     最初に目に止まったのは、緊張気味の面持ちをまっすぐにカメラに向けた若い警察官の写真だった。誇らしげに取り澄ました顔の新人の写真が続く中、茶を帯びた金髪と翠の瞳からはまだ学生らしさが抜けていない。地味な外見で、あまり特徴がない若者だった。
     外見の印象からは、ヒーローなどと子供のように稚拙で、それでいて大それたことをこの国家警察内で口にするイメージが湧かない。
     ジェイスンはつまらなそうに唸りながら、氏名の欄を見た。
    「ルーク・ウィリアムズ……『ウィリアムズ』……?」
     我知らず、ジェイスンは名前の綴りを口に出していた。
     途端。ふと、白のイメージが脳裏を過った。
     花だ。澄んだ水のような香りの白い花が溢れた、清潔な葬儀場の記憶が甦る。年配の刑事たちに付き添われて、棺のそばで泣いていた少年がいた。父親の遺品が並んだ白いクロスのテーブルを前に、形見となったグレーのコートを抱き締めて、黙って肩を震わせていた。
     顔も覚えていない。少年は涙を堪えようと無駄な努力でずっと俯いていて、ジェイスンどころか棺の中すら見ていなかったのだ。
     だが。
    「──君たちの目は、節穴なのかね」
    「え?」
     もう見る必要もないと、ジェイスンはファイルを閉じて同僚に突き返す。
    「こんな男、現場の刑事以外に向いているものか。うちで引き受けるしかなかろう」
    「……はあ」
    「この期に及んで、面倒ばかり増やすものだ」
     話は終わったと、警部に背を向けて歩き出す。背中からうんざりとしたため息が聞こえたが、無視した。もとより、警務部相手に言ったわけではないので気にするようなことではなかった。
     大会議室に向かうジェイスンの靴音が、次第に速くなる。
     本当に来た。あのクリスマスの日から、あの男の背中をずっと追いかけていたのか。国家警察に属するほどの努力を重ね、父の死の真相を確かめに来たのか。いずれその死が、本当はどんなものであったのかという事実を知るのだろうか。
     誰がそれを装ったのかを、突き止めるのだろうか。
     口の中で奥歯が軋む音を立てた。不安よりも、言いようのない不快感がある。
     知られてはならない。エドワードの息子は手元に置いて、監視を──そう、監視をしなければならない。父の死に余計な詮索をしないように。父親のように、愚かな道を歩まないように。
     所詮ヒーローとは簡単に現実に潰される幻想に過ぎないのだと、教えなければならない。そしてこの道を選んだ以上、ここ以外に行き先などないのだと。
     たとえ、既に翼も星も地に堕ちた国家警察の真の姿を知らせることになったとしても。
     大会議室の前で、深呼吸する。会議の予定時刻の三分前だった。忌々しさを噛み締めながらもいつものように襟を正し、ジェイスンは扉を大きく開いた。 
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    odgr

    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。国家警察エントランスで迷子の面倒をみるルークと通りすがりの警部の話です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    きっといつでも迷ってる 国家警察のエントランスは、いつでも相談を待つ人々でざわついている。真冬で暖房が効いているのも手伝い、混雑でより蒸し暑くなっている。
     この混雑こそが、国家警察が市井の人々に頼られ、信頼されている証だった。部下から混雑緩和の要望や改善案も上がってきていたが、そんなことは刑事部が時間を割くような話ではない、警務にでも任せておけばいいとデニス警視にも一蹴されていた。
     年齢も性別もさまざまな人だかりの中、ジェイスンはふと子どもの声を聞いた。対応するつもりはなかったが、聞きつけた反応を市民に見咎められていたら厄介だった。
    か細い泣き声の在処に視線を巡らせ、辿り着いたその先で眉を顰める。グレーのコートを羽織った若い警察官が、幼い少年の前に膝をついて笑顔を向けていた。
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    odgr

    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。
    国家警察に採用されてから刑事課に行き先が決まるまでのジェ警部の話ですがルークは不在です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    どこにも行けない「ジェイスン警部、ちょっとよろしいですかね」
     大会議室に向かう途中、廊下で呼び止められた。振り向くと、ファイルを手にして立っていたのは警務部所属の警部だった。
    「会議がある。手短に済ませて欲しい」
    「ああ、はいはい。──異動の件なんですが。実は少し、厄介な新人がいましてね。刑事部志望らしいんですが、周囲から浮いた変わり者のようで」
    「ほう?」
    「論文と面接で熱弁したらしいんです。国家警察は、市井の人々を守るヒーローたるべきだ、と」
     ヒーロー。
     久しく聞かなかった単語に、ジェイスンは眉を寄せた。書類を見ていてジェイスンの反応には気づかなかったのか、警部が書類を指先で叩きながら鼻で笑う。
    「警察学校の成績はまあ、悪くはないんですがね。洞察力や分析力、推理力も十分なレベルです。まあ、キャリア組の中じゃそこまで光るわけでもないですが……」
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    odgr

    SPOILERチェズルク版ワンドロワンライ第38回提出作品です。お題は台詞お題の「逃がしませんよ」で。
    暮らドメバレ、チェとルで某スタイリッシュな軟体動物たちでインクを塗り合うシューティングアクションで遊ぶ話です。今回はチェズルクっていうかチェ+ルというか……チェはハイ〇ラントの面白さに気づいたら大変なことになると思う。
    「やばっ」
     現実でルークが発した声に、画面の中の小さな悲鳴が重なる。
     まっすぐに飛んできた弾丸に貫かれ、携帯ゲーム機に映っていたキャラクターが弾け飛び、明るいパープルのインクがステージに四散した。
    「フフフ……。逃がしませんよ、ボス」
     リビングのテレビの画面では、楽しそうに笑うチェズレイが操るキャラクターが大型の狙撃銃を構えている。スナイパー役のチェズレイが睨みを効かせている間に、テーマパークを模したステージがチェズレイのチームカラーにどんどん塗り替えられていく。スタート地点である自陣に戻され、ルークは焦りと感嘆とを長い溜息に変えて唸った。
     夕食後、ルークがリビングで一息ついていた時、そわそわとした様子のチェズレイにゲームに誘われた。一週間ほど前にルークがチェズレイの前でやってみせたゲームをルークの不在時に練習したので、一緒にやって欲しいという。海生軟体動物と人型を自由に切り替えられるキャラクターを駆使して広大なステージ中を駆け回り、カラフルなインクを射出する様々な種類の武器を用いて、ステージのフロアをチームカラーで侵食しあい陣取り合戦をするその対戦アクションゲームを気に入ったようで、仲間たちと同時プレイが出来るように携帯ゲーム機本体とソフトまで買ってきたという気合いの入れようだった。携帯ハードの方は既にルークの自宅のWi-Fiにも接続してあり、インターネットを介した同時プレイの準備も万端だった。
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    odgr

    SPOILER2014.4.14開催、ウィリアムズ親子オンリーイベント「My Shining Blue star」での無配ペーパーでした。雨で外に出られない休みの日、父さんの身の上話したり『父さんの父さん』の話をしたりする親子の話です。実際こういうシーンがあったら、父さんは『ヒーローを目指すきっかけになった人』みたいな感じで己の父親像を語ってくれそうな気もしつつ。市民を守って殉職した警官だった、みたいな…………
    水底の日 雨樋からひっきりなしに流れ落ちる水が、排水溝に飲み込まれていく。
     あまりにも量が多すぎて溢れそうになっているのか、空気を含んだ水が排水管の上で波を立て、とぷとぷという音がしている。まるでプールに潜っている時に聞くような音に、ルークが唇を尖らせた。
    「午後だけど、全然止まないね……」
     カーテンを開けて確かめるまでもない土砂降りの音に、ルークは八つ当たりのようにソファのクッションに背中から重さを預ける。雷こそ鳴っていないが、春の空は昼前ごろからずっと厚い雨雲に覆われていて暗い。それがまた、憂鬱に拍車をかける。
    「久々の父さんの休みだったのに」
    「まあな。だが、外に行けなかったのは残念だが、こんな風に家でのんびり過ごすのもいいもんだぞ」
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