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    @BanriSuzu
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    チェズルク版ワンドロワンライ第38回提出作品です。お題は『ニュース』で。暮らドメバレ、毎朝の習慣になっているトップニュースチェック中のルにチェが朝ごはん作ってくれる話です。

    #チェズルク
    chesluk
    #チェズルク版ワンドロワンライ
    ##チェズルク

    シークレット・ニュース 誰もいない朝のリビングで、シンクに少しだけ水を流す。コーヒーメーカーの給水タンクに新鮮な水を満たし、カプセルホルダーとともにセットしてスイッチを押す。
     このカプセル式のコーヒーメーカーも、チェズレイが贈ってくれたものだった。クリスマスまでウィリアムズ邸へ厄介になるにあたり、プレゼントがてら新しいコーヒーメーカーを持参するとチェズレイが言い出した時には本格的なエスプレッソマシンが来てしまうのではないかと身構えていたが、実際に届いたのはコンパクトサイズのカプセル式メーカーだった。美味しいエスプレッソも魅力的だったが、各種ブレンドやフラットホワイト、ラテ・マキアートやココアまで、毎日たくさんのカプセルの中から好きな味を選べる楽しさと手入れの簡便さを理由に選んでくれたのだということは、ルークもすぐに気が付いた。
     タンクの湯が湧き、すぐに抽出が始まる。その間に、ルークはリビングのテーブルに朝刊を広げる。朝、家にいる内に二社分の新聞とテレビの報道番組をチェックし、残りの一紙とネットニュースは通勤の間から始業時間までに目を通す。学生時代から続けていたこの習慣は長年の慣れのおかげで、速読とまではいかないまでもかなりの速度で紙面の比較が出来るようになっている。
     チェズレイがリビングに入って来たのは、ちょうどラテ・マキアートの抽出が終わり、ルークがカップを手に取ったところだった。
    「おはようございます、ボス。今日はお早いですね」
    「おはよう、チェズレイ。ごめん、もしかして起こしちゃったか?」
    「いいえ。だいぶ早めに目を覚ましておりましたので。先程は、ゲストルームの窓からパジャマのまま眠い目を擦りつつ朝刊を取りに行くボスを見ておりましたよ」
    「げ」
     チェズレイは既に、いつでもすぐに外出出来るくらいにしっかりと身支度を整えている。身づくろいにはルークよりも時間がかかりそうだというのに、自慢のロングヘアはいつも通り艶やかで、もしかしたらルークよりももっと早くに起きていたのかも知れない。
    「朝食は私が用意しましょう。ボスはそのまま、新聞のチェックをどうぞ」
    「ありがとう。お願いしてもいいかな」
    「もちろんです。フレンチトーストとクロックムッシュではどちらがお好みですか?」
    「フレンチトーストで!」
    「仰せのままに」
     嬉しそうに即答した声に苦笑しながら、チェズレイが冷蔵庫を開ける。心地よい調理の音を背中で聞きながら、ルークはラテのカップを片手に文字の詰まった薄灰色の紙面に視線を走らせる。一面を飾るニュースは先日明らかになった大物二世政治家の政治資金問題だったが、総合面を一通りチェックして一枚捲った先で、ルークの手が止まった。
    「エリントン中央銀行の不祥事……元取締役の男の横領事件、約一億の使途は主に調査中……そういえば、二課のアレクシスの担当だったか。他に報道している新聞は……」
     他の新聞やタブレットのニュースサイトと見比べていると、チェズレイが焼き立てのフレンチトーストの皿を運んできてくれた。新聞をどけてスペースを作ったところに、音もなく品よく皿が置かれる。
    「お待たせしました。冷めない内に、どうぞ」
    「おお……! ありがとう、美味そうだな!」
    「くれぐれもシロップはほどほどに。──こちらの件、被害額が億に上るようですが、借金返済の名目でそのほとんどが内縁の妻に貢いでいたもののようです。この内縁の妻という女性、ガリ国某組織幹部の情婦の噂があるようですよ」
    「……だとしたら、お金の流れが気になるな。アレクシスは突き止めているかな……」
     新聞を畳み、ルークは出来立てのフレンチトーストに向き直った。
    「ベーコンにフルーツに、生クリームに彩りを添えるエディブルフラワー……お店みたいな盛り付けだけど、いつの間に用意したんだ……とにかく、いただきます!」
     ルークが両手を打ち合わせ、カトラリーを手に取る。ラテ・マキアートのおかわりの準備をしながら、チェズレイはたおやかに微笑みながら食べっぷりを眺めていた。


     翌日。
    『中央銀行元取締役の横領金、海外犯罪組織に流入か』
     コーヒーメーカーにセットしたショコラ・ラテの抽出を待つ間、昨日よりも文字とスペースが大きく取られた見出しの面を捲る。小さな見出しに、ルークは目を留めた。
    「貧困層を狙った組織的な身分証売買事案……確か、シリルが担当チームに入ってる事件だな」
    「そちら、最終的には臓器売買ルートに結びついているようですよ。バックにいるのは生半可なマフィアより遥かに凶悪な輩のようですので、決して先走ったりなさいませんように」
     ぷるりとした卵を鮮やかな黄色のソースが覆うエッグベネディクトと温めたマフィンの皿をルークの傍らに置きながら、チェズレイが言う。
    「ありがとう、いただきます!……この卵にかかってるソース、めちゃくちゃ美味しいな ──そうだな。シリルは二年目でやる気があるから、捜査のチャンスがあると思うとちょっと突っ走りそうなんだよな。釘を刺しておくかな……」
     ただ単に言っても納得しないだろうから、方針はチームの先輩を巻き込んで一緒に示しておくべきか、とルークは口の周りを卵で黄色く染めながら考え込む。まるで頬袋に詰め込むように笑顔で料理を頬張るルークを、チェズレイは微笑ましく見守っていた。


     その翌日。
    『悪徳貧困ビジネスの末路 臓器売買組織を一斉摘発』
     フラットホワイトの香り漂う朝のリビングでソファーに座り、とても何か言いたげな顔のまま、ルークが朝刊をめくる。
    「二世政治家の献金疑惑……収支報告書未記載の裏金の全容は未だ掴めず、なあ……」
    「関係先の事務所と、彼のお父上の愛人宅にPCが隠されているようですよ。隠蔽の恐れもありますし、捜査に入るならばお早めに」
     言いながら、チェズレイが皿を運んでくる。フルーツとサラダを添えた焼き立てワッフルの上で、熱々のバターがとろけている。皿が置かれるより先にルークは新聞をきれいに畳み、チェズレイとは逆側のソファーの端に置いて眉を寄せた。
    「ありがとう、チェズレイ。──なんだけど。この間から、新聞の報道より一歩も二歩も先の情報を補足してくれているけど……ていうか、捜査関係者のアレクシスもシリルも君の話は初耳だって言ってたんだけど、君のそれは、どこ情報なんだ……?」
    「僭越ながら、私情報です」
    「聞くまでもなかったな!」
     ルークが腹の底から息を吐いた。しかし、すぐに表情を引き締めてチェズレイに向き直る。
    「いや、ありがとう。──おかげで、被害者をこれ以上増やさずに済んだ」
    「それは、何よりです」
    「まさか、僕の気にするニュースの裏情報をすべて持っている、なんてことはないよな……?」
    「それこそ、まさかですよ。私もネタ切れくらいは起こしますので。ですので、明日の見出しは……そうですね。『新進気鋭の若き国家警察警部補、熱愛発覚』など、いかがでしょう。お相手は民間人につき非公表、とでも」
     ルークが息を詰めた。言葉に迷って少しの間視線をさまよわせ、やがて息をつく。
    「芸能ゴシップみたいな扱いだけど、確かに一応、『民間人』ではあるよな。──君は」
     ルークの言葉に、チェズレイはただ黙って微笑んだ。それから、許しを得たように、ソファーのルークの傍らにそっと座る。
    「……というか、さっきから思ってたけど、君の言うネタは、ニュースっていうより予報だよな……? 翌日の報道を先取りしているわけなんだから」
    「おや。今の話を、天気のごとく『予報』として周知してしまっても、よろしいのですか」
     チェズレイが意外そうに言う。ルークは黙って唇を尖らせ、とん、と咎めるようにチェズレイの左肩に自分の背中を軽く押し当てた。そうしてチェズレイの顔を見上げ、視線を投げかける。
    「事実だとしても、広く知られなくていいことだってある。そうだろ」
    「ええ。ボスのお望みとあらば。事実の隠蔽は、得意な方ですので」
    「物騒な特技だよな……とはいえ、おかげで助かってしまってもいるから、何も言えないんだけどな」
    「ふふ。最も効果的に暴くためには、隠すことも同じくらい必要ですので」
     肩からぬくもりが伝わるのを感じながら、チェズレイの手袋の指先がルークの頬を包む。頬の輪郭を愛おしげに撫でる指先に、ルークが気持ちよさそうに目を閉じた。
    「無論。このすぐあとに起きることも、誰彼の区別なく隠し通しますよ」
     朝の光が満ちたリビングで、囁く声が密やかに約束を取り交わす。そのまま近付けた唇へ、微かに笑ったような吐息が掠めた。
     





    (2024.4.29)
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    odgr

    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。国家警察エントランスで迷子の面倒をみるルークと通りすがりの警部の話です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    きっといつでも迷ってる 国家警察のエントランスは、いつでも相談を待つ人々でざわついている。真冬で暖房が効いているのも手伝い、混雑でより蒸し暑くなっている。
     この混雑こそが、国家警察が市井の人々に頼られ、信頼されている証だった。部下から混雑緩和の要望や改善案も上がってきていたが、そんなことは刑事部が時間を割くような話ではない、警務にでも任せておけばいいとデニス警視にも一蹴されていた。
     年齢も性別もさまざまな人だかりの中、ジェイスンはふと子どもの声を聞いた。対応するつもりはなかったが、聞きつけた反応を市民に見咎められていたら厄介だった。
    か細い泣き声の在処に視線を巡らせ、辿り着いたその先で眉を顰める。グレーのコートを羽織った若い警察官が、幼い少年の前に膝をついて笑顔を向けていた。
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    odgr

    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。
    国家警察に採用されてから刑事課に行き先が決まるまでのジェ警部の話ですがルークは不在です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    どこにも行けない「ジェイスン警部、ちょっとよろしいですかね」
     大会議室に向かう途中、廊下で呼び止められた。振り向くと、ファイルを手にして立っていたのは警務部所属の警部だった。
    「会議がある。手短に済ませて欲しい」
    「ああ、はいはい。──異動の件なんですが。実は少し、厄介な新人がいましてね。刑事部志望らしいんですが、周囲から浮いた変わり者のようで」
    「ほう?」
    「論文と面接で熱弁したらしいんです。国家警察は、市井の人々を守るヒーローたるべきだ、と」
     ヒーロー。
     久しく聞かなかった単語に、ジェイスンは眉を寄せた。書類を見ていてジェイスンの反応には気づかなかったのか、警部が書類を指先で叩きながら鼻で笑う。
    「警察学校の成績はまあ、悪くはないんですがね。洞察力や分析力、推理力も十分なレベルです。まあ、キャリア組の中じゃそこまで光るわけでもないですが……」
    1867

    odgr

    SPOILERチェズルク版ワンドロワンライ第38回提出作品です。お題は台詞お題の「逃がしませんよ」で。
    暮らドメバレ、チェとルで某スタイリッシュな軟体動物たちでインクを塗り合うシューティングアクションで遊ぶ話です。今回はチェズルクっていうかチェ+ルというか……チェはハイ〇ラントの面白さに気づいたら大変なことになると思う。
    「やばっ」
     現実でルークが発した声に、画面の中の小さな悲鳴が重なる。
     まっすぐに飛んできた弾丸に貫かれ、携帯ゲーム機に映っていたキャラクターが弾け飛び、明るいパープルのインクがステージに四散した。
    「フフフ……。逃がしませんよ、ボス」
     リビングのテレビの画面では、楽しそうに笑うチェズレイが操るキャラクターが大型の狙撃銃を構えている。スナイパー役のチェズレイが睨みを効かせている間に、テーマパークを模したステージがチェズレイのチームカラーにどんどん塗り替えられていく。スタート地点である自陣に戻され、ルークは焦りと感嘆とを長い溜息に変えて唸った。
     夕食後、ルークがリビングで一息ついていた時、そわそわとした様子のチェズレイにゲームに誘われた。一週間ほど前にルークがチェズレイの前でやってみせたゲームをルークの不在時に練習したので、一緒にやって欲しいという。海生軟体動物と人型を自由に切り替えられるキャラクターを駆使して広大なステージ中を駆け回り、カラフルなインクを射出する様々な種類の武器を用いて、ステージのフロアをチームカラーで侵食しあい陣取り合戦をするその対戦アクションゲームを気に入ったようで、仲間たちと同時プレイが出来るように携帯ゲーム機本体とソフトまで買ってきたという気合いの入れようだった。携帯ハードの方は既にルークの自宅のWi-Fiにも接続してあり、インターネットを介した同時プレイの準備も万端だった。
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    odgr

    SPOILER2014.4.14開催、ウィリアムズ親子オンリーイベント「My Shining Blue star」での無配ペーパーでした。雨で外に出られない休みの日、父さんの身の上話したり『父さんの父さん』の話をしたりする親子の話です。実際こういうシーンがあったら、父さんは『ヒーローを目指すきっかけになった人』みたいな感じで己の父親像を語ってくれそうな気もしつつ。市民を守って殉職した警官だった、みたいな…………
    水底の日 雨樋からひっきりなしに流れ落ちる水が、排水溝に飲み込まれていく。
     あまりにも量が多すぎて溢れそうになっているのか、空気を含んだ水が排水管の上で波を立て、とぷとぷという音がしている。まるでプールに潜っている時に聞くような音に、ルークが唇を尖らせた。
    「午後だけど、全然止まないね……」
     カーテンを開けて確かめるまでもない土砂降りの音に、ルークは八つ当たりのようにソファのクッションに背中から重さを預ける。雷こそ鳴っていないが、春の空は昼前ごろからずっと厚い雨雲に覆われていて暗い。それがまた、憂鬱に拍車をかける。
    「久々の父さんの休みだったのに」
    「まあな。だが、外に行けなかったのは残念だが、こんな風に家でのんびり過ごすのもいいもんだぞ」
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