ドルパロさめししルート プロローグ(仮)ラブストーリーも厭わない。
~プロローグ
俳優―村雨礼二の自宅はおびただしい棚に囲まれている。
他人と顔を合わせるのが嫌で、それでも、利便性を取って、マンションのワンフロアを自宅にした。初めはエレベーターの待ち時間やたま顔を合わす住人に煩わしさを感じたが、皆、他人と距離を置きたい都会人だ、言葉も会釈も交わさなくともお互い気にしなかった。
それよりも距離感がわかっているコンシェルジュに宅配やクリーニングを頼めるのが楽だった。部屋の掃除も週に一度ハウスキーパーに入れている。おかげで棚に陳列された物には埃ひとつも溜まっていない。
今まで出演した全ての作品の台本に、それらの関係書籍。出演した作品のDVD。出演しなくとも、観劇した舞台の台本にDVDに、小説、演じた役柄のため医療関連書籍に、警察関連書籍、犯罪関連書籍…etcetc。それらは村雨の才能である優れた記憶力により、どこに何があるかまでではなく、どのページに何が書かれているかまで把握されていた。だから、言わば、この棚は村雨礼二の脳であり、記憶であり、記録である。
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