坂田銀時は、いや今は坂田銀八か。生まれた時から漠然と知っていることがある。
高杉晋助はどんな世界でも必ず左目を失う、と。
未だ出会ったことのない男だ。高杉晋助という男がどんな見た目でどんな性格をしているのか、年齢さえ分からない。けれど自分が存在する世界のどこかに高杉晋助も必ず存在し、五体満足で生まれた筈なのにどこかで左目を零す。そしてそのことに自分は酷く恐れているのだ。坂田銀八として自我が芽生えた瞬間からそんな認識が自身の中には根付いている。
ただでさえ銀髪に紅目という突飛な見た目で周りから忌避されやすいのに、こんな現実味のない厨二腐ったことを誰に相談できるはずもなく漠然とした恐怖を抱えながらこれまで坂田銀八として生きてきた。
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