イアンには食べる才能があった。
物心ついた時から食べっぷりを親や祖父母から褒められて、十代になった頃には食べても食べても腹の底が感じられなくなった。成長期の子供ならそんなものだとイアンに負けず体の大きな家族らは口々に思い出話をしながら頷いたので、初めはイアンもそうかと思っていた。
すぐ食糧庫を空にしてしまうイアンの為に家族は業務用の大豆缶を倉庫に何ダースも常備してくれた。しかしそれも数日で空けてしまうのが常だった。イアンは親に買い物をさせてばかりで申し訳ないと思っていたのもあって、全寮制の軍学校に進学した時には少しほっとした。加えて、こういう場所には自分と同じ年頃の、ちょっとばかり体の大きい、自分と似たような若者ばかり集まっているに違いないと思った。
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