Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    417fgo

    @417fgo

    よねくらしいな。20↑。
    CP:テスデイ、ジュオカル(ジュナカル)、カドアナカド、ポルカス、ぐだ攻めなど
    内容:パロディ・クロスオーバー、軽度のエログロホラーなど

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 👍
    POIPOI 43

    417fgo

    ☆quiet follow

    7主従で聖杯戦争。
    並行世界の現代北米、推敲途中だし設定ふわふわなのでそのうち書き換えたりするかも。
    テスデイにしたいんだけど…そこまで書けていない

     深夜、路を走るのは一人の男だけだった。
     冷涼な風を切って、闇夜に黒いトレンチを靡かせながら、男は全速力で何かから逃げている。寝静まった街。広い車道はまっすぐで遮る物は何も無い。男が振り返るも背後には何も見えず、それでも道の端に溜まっていた落ち葉は突風に巻き上げられて宙に舞っていた。
     風の刃が男の肩を掠める。心臓を狙っていたそれを読んでいたとでも言うように、男は身を捩った勢いで体を回転させ、車道から逸れて民家の隙間に飛び込んでいく。細道に入れないらしい不可視の追手は、並木を揺らして離れて行くようだが、先程も迂回して待ち伏せされていたので油断はできない。緊急時なればやむを得まいと敷地に無断で侵入し、男は冷静に進路を北へ調整する。
     歩道に足を踏み入れると同時に横に飛び退くと、やはり待ち伏せていた何者かの攻撃がアスファルトを抉るほどに振り下ろされた。足先数センチ、ギリギリでの回避にも表情を変えず、男は目標地点までの距離約五十メートルを確実に詰めていく。襲い来る鎌鼬を潜り抜けて、丁字路の突き当たりへ。足元に飛んできた斬撃を跳躍で躱し、そのまま柵を上って向こう側、広大な墓地の中へ。
     鉄柵を超えて男が振り返れば、不可視の追手はその場で足踏みをするように枯葉を撒き散らす。突っ込んでくるか、諦めて引き返すのか。緊張を緩めずに注視していた男の頭上を飛び越してそのまま、風は奥に見える教会堂へと吹き抜けていった。
    「……縄張り争いを優先したか」
     男は抑揚の無い声で小さく呟くと、疲労の滲む安堵の溜息をこぼす。ふと下ろした視界に入った己の手の甲を撫で、男は墓地を後にした。

      *

     デイビット・ゼム・ヴォイド。彼は人並外れた洞察力により、この街で何か、常人には知られぬ儀式が行われるだろうことを予見していた。けれど一介の留学生であるデイビットには、異国の街で執り行われようとしている、その秘匿された儀式の詳細を知ることは困難だ。下手に探ろうとすれば身に危険が及ぶ可能性もあるため、深入りはせず、警戒するだけに留めておくつもりだった。
     詳細は分からないと言っても、どうやらその儀式では複数の陣営による争いが行われるらしいことは把握していた。数週間ほど前から街に見慣れぬ人物が増え、緊張が漂っていることを感じ取っていたからだ。違法な武器や危険物の類があれば通報も考えられたが、それらが見つからないのであれば一般市民が打てる手はほぼ無いだろう。ただ争いに巻き込まれないよう、不用な外出などは控えていた。
     それでもあの日、夜遅くに外出してしまったのは、パーティーで酒に酔ったという友人を彼のホームステイ先に送り届けたからだった。話を聞くに、彼のステイ先を知る別の友人が所用で帰ってしまい、迎えを呼ぼうとしてなぜかデイビットに電話をかけてしまったという(それは勿論ひどく酔っていたからだろう)。パーティー会場までは割と近かったのだが、友人のステイ先へはメトロを使った上に、無事に送り届けた帰路では時間帯的にバスも無いので歩いて帰ったのだ。どんなに面倒であろうとも善いことをしようとするデイビットに、彼を見捨てるという選択肢は端から無かった。だいたい、歌いながら車道に飛び出したり寝転がったりするほど酔っ払っていた友を放っておくのは殺人とほぼ同義だったし、それこそ彼の方が何者かに襲われる可能性だってあったのだから。
    「デイビット、まだ怒ってる……? ご、ごめんって、この通り! コーヒー奢るから許して!」
     逸れていたデイビットの意識が現在に戻ってくる。目の前では件の友人が拝むように両手を合わせ、頭を深々と下げていた。ジャパニーズスタイルの謝罪を受けるのは、これで何度目になるだろうか。
    「怒っているわけじゃない。だが、反省はすべきだ。酔っ払った君は危険だから」
    「ごめんってば……次からは気をつけます! 今回は色々懐かしくてハメ外しちゃっただけで、もう大丈夫だから! たぶん!」
     決意を露わに顔を上げた友人のよく分からない主張と、力強い「たぶん!」の言葉に、デイビットは思わずクスリと笑った。
     昼前のコーヒーチェーン店は朝に比べればいくらか列に並ぶ人数は少ないが、駅中というのもありなかなか騒がしい。白い駅舎内は窓から差し込む日の光を反射して眩く、高い天井の下を多くの人が行き交う。その中でもやはり日本人男性、藤丸立香の声は高く明瞭に聞こえた。
     彼と出会ったのは二、三ヶ月前だったか。博物館でとある展示を見ていた時に、彼の方から話しかけてきたのだ。どうやらその時は人違いをしていたらしかったが、そこから色々話し込んで仲良くなり今に至っている。この国に留学してきてまだ半年も経っていないと言うが、人懐こい立香はデイビットに比べてとても広い交友関係を持っている。恐らくデイビットにしたように、多くの友人にも会って間もないうちから、すっと懐に入り込んだのだろう。
     立香の奢りで購入したカフェモカを飲みながら、彼の友人たちの話に耳を傾ける。外向的な立香と個性豊かな友人たちとのエピソードは、人間関係の構築を苦手とするデイビットにとって大きな刺激となっていた。先日のパーティーも立香の友人宅で行われたというが、参加者は国籍も人種も多様でそれはもう賑やかで楽しかったとか。確かに迎えに行った際にも、ロシア系の青年やインド人の家族とすれ違ったのを覚えている。立香の話からもサッカーだの舞台演劇だのナノマシンだのと、様々な話題が飛び出してくるものでどういった集まりなのかは分からないが、「次はデイビットも行かない?」と誘われれば、好奇心から頷かざるを得なかった。
    「それじゃあ、俺そろそろ行かなくちゃ。またねデイビット。何かあったらメッセージ送るよ」
    「ああ。君、もうすぐ試験があるだろう。良ければ手伝うよ」
    「うっ、そうだった……。またご指導お願いします、デイビット先生……」
    「了解した」
     話題の尽きない様子の立香だったが、午後からカレッジに行くということで残念ながらここでお別れだ。笑顔で別れを告げようとする彼に少し待て、とデイビットは真面目な表情で引き留める。
    「ここ最近、噂になっているだろう。夜間の異音騒ぎや不審な目撃情報を」
    「そういえば……今朝だかも見たな、その話題」
     立香は寝ぼけ眼を擦りながら見た、ニュース番組の内容を思い出す。市内で起きているいくつかの騒ぎは、パーティー会場にいた友人たちも話題にしていた。
    「知っているなら、しばらく夜道には気をつけた方が良い」
    「夜道にってデイビット、言い方! ……ふふ、ごめんごめん。心配してくれてありがとう。デイビットも気をつけて」
    「うん。ではまた、立香」
     改札に向かう友の背を見送る。自分と同じように異国の地に身を置き、自分とは違う言語の壁や孤独と戦っているだろう彼に、正体不明の不安とも戦えというのは酷かと、あの夜の襲撃を話すのは憚られた。コミュニケーションに関してデイビットはあまり自信がないのだが、それでも用心を促すことはできただろう。立香があの得体の知れない脅威に遭遇することのないよう、あとは祈るしかない。
     空になったカップを屑籠に捨てて駅を出る。丁度左手の方から近づいて来たバスに乗り込み、デイビットは行き慣れた目的地へと向かった。

      *

     デイビットは幼い頃から映画鑑賞と博物館巡りを趣味としており、故郷にある数々の博物館にも幾度となく足を運んでいた。知的好奇心旺盛な少年が恐竜などの古生物に強く関心を寄せるのはよく見られるが、聡明なデイビットの視野は更に広く、関心は多岐に渡った。古生物への知識をある程度深めると、そのまま地質学、天文学、物理学、生物学……と修める学問は増えていき、その中に人類学もいつしか加わった。人間の歩みというものに、興味が湧いたのだ。
     この街に来てから文化人類学博物館を訪れるのはもう何度目だろうか。先住民の遺したパワフルなオブジェクトを見上げながら、デイビットはふんだんに外光を取り入れた明るい館内を進んでいく。平日の昼間に訪れている人影は疎で、以前訪れた時から展示の変更はあまり無いらしい。ならば今日は目当ての地域の展示にじっくりと時間を使うことができそうだ。展示説明を食い入るように見つめる学生らの背を通り過ぎ、解説映像を流し続ける大きなスクリーンを横目に、多くの展示ケースが並ぶエリアを見渡したその時だった。
     館内の照明が一斉に落ちると同時に、ガラスケースが一斉に弾け飛ぶ。突然幾重にも重なった金切り声が聞こえたかと思うと、直後に聞こえて来たのは何かが強く叩きつけられ、砕け、割れ、壊れ落ちる音。脳内で五月蝿いほどに警鐘が鳴らされる。非日常の到来に、全身の肌が粟立った。
     周囲の状況を確認しつつ、低姿勢を保ち一旦壁際まで後退する。先程まで視界にいたはずの一般客は忽然と姿を消しており、床や壁には血と何かが混ざったような液体が多数付着しているのが見えた。そしてあの轟音と異様な声が聞こえたのは恐らく壁の向こう側からだったが、そちらも無事ではないのだろう。暗い壁に背を預けて耳を澄ますと、微かにぴちゃり、ぴちゃりと水音が聞こえてくる。このやり口、被害の出し方からして、先日遭遇したものとは違い明確な悪意を感じ取るのは容易だった。静かに呼吸を整えたデイビットが壁向こうを確認しようと動き出すと同時に、ばたりと分厚い本を閉じるような音が響く。
    「さて、隠れていないで出てきなさい、迷える子羊よ。貴方は殺すなと言われています、安心すると良い」
     大仰な話しぶりで声の主は言う。まるで深淵の闇を満たすタールのように黒く粘ついた狂気の声。硬質な靴音と共に濡れた衣服を引き摺る湿った音がにじり寄ってくる。不快な風が肌を撫ぜていき、血の臭いの濃さに思わず顔を顰めた。背筋を走る緊張、悪寒が如実に語る。それは平和を脅かす悍ましい、悪魔に連なるもの。デイビットは確信する、この男に従ってはならないと。
     勢い良く斜め前方、巨大スクリーン前の座席に飛び込むデイビットの背を追うように、壁を突き破り巨大な触手が姿を見せる。夥しい数の繊毛に覆われて蠢くそれは常人を生理的嫌悪や恐怖で染め上げるに十二分であった。けれどデイビットに恐慌を齎すことはかなわない。飛散する壁の残骸から身を守りつつ、壁向こうから姿を見せようとした男目掛けて、足元に散乱するガラス破片を投擲。当たらずとも良い、男が身を躱すその隙を突いて、デイビットは巨大な触手の攻撃範囲から逃れるべく後退する。壁の穴を突き破り侵入してきた怪物は、尚も畳み掛けるようにその触腕を伸ばした。展示物である槍や木剣を折られるたびに使い捨ててはその攻撃をいなすも、背後に壁は迫り距離はどんどんと縮まっていく。男が壁の裏から姿を見せたのを視界の隅に捉えたと同時に、デイビットの右腕は握り潰されるのではないかというほどの力で壁に縫い止められた。隙を突かれたか、と痛みに蝕まれる思考の中でどこか冷静に分析してしまう。身動きの取れないよう全身が拘束されていくのに抗えないまま、こちらに近付いてくる男を見つめることしかできない。
    「よくもここまで抵抗できたものだ、それは正しく野生の獣のように。……先ほど申し上げたようにまだ殺しはしません。私の美学に反する上、マスターからの命でもある。しかし神に祈るための手は先に頂いていきます、それを咎めるものは、いないのですから」
     おかしな抑揚をつけ、低く狂おしい声で捲し立てる醜男の顔が眼前に迫る。その魚眼にも似た、漆黒よりも暗い二つの瞳にデイビットが臆することはない。ただの人間には絶体絶命としか言いようがない状況に彼は怯えるどころか、ふいに口元に笑みを浮かべたので、男は怪訝そうに眉を顰める。
    「……何を笑っている?」
    「ああ、すまない。我ながら荒唐無稽だと思ってしまって」
     デイビットは淡々と謝罪を述べながら、思い至った一つの可能性について整理する。
     数日前に、デイビットの右手の甲に現れた謎の痣。この街に増えた不審な人物たちは、多くが手袋を身につけていた。おそらくは、『マスター』なる存在。
     そして先日の不可視の追手と、此度の目の前の男による襲撃。現代科学の及ばない次元で行われるのは、命を懸けた戦いだ。
     更に目の前の男の発言。『迷える子羊』や『神への祈り』といった、言葉に滲む神の不在証明への執着。手に持つのは人皮装丁本だろう。壁に空いた穴からちらと見えただけだが、被害者、特に若者の遺体の扱いからもこの男の正体を推し量ることはできた。
     そう、デイビットは全てを理解した。この窮地を作り出した理由も、打開策も。非現実的な推理を裏付ける状況証拠があまりにも多かった。導き出されるのは、自身が秘匿された儀式の盤面に乗せられた一つの駒であるということ。そしてその遊戯に投じる最初の一手が、この涜神を謳う男にとっては皮肉ともとれる内容であることも。
     ——祈る神など、いないと思っていたのだが。
     壁に縫い止められた右腕、その拳の中に、小さな破片が一つ。散乱した展示物の中から偶然拾い上げていた鋭いその矢尻は、強く握りしめられた掌を傷付けて赤い血に濡れる。その煙った黒色をデイビットは知っている。手の甲に焼けるような痛み。その名を口にしろと、自分自身に迫られているような感覚。懐かしい友人の名を呼ぶように、デイビットの声が紡がれる。

    「来てくれ、テスカトリポカ」

     俄かに煙が立ち込めた。どこからか冷たい風が吹き込んで、恐ろしい死の香りを運んでくる。ヨワリ・エエカトル、ティトラカワン、イパルネモアニ、モヨコヤニ、ヤヤウキ・テスカトリポカ。黒き鎧に身を包んだ一柱の神が姿を現す。
     さあ始めよう、オレたちの戦争を。

      ***

     続いたらいいんだが
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤🙏❤🍌❤❤❤❤❤❤❤❤💖💖💖💞❤💖💖💖💖💖💖💖💖🙏💖🙏💖💖💖😍👏👍💴💞💖💖💞💕💖💖💖❤❤❤👏👏💖💖💖❤💖👏🙏😍💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works