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    417fgo

    @417fgo

    よねくらしいな。20↑。
    CP:テスデイ、ジュオカル(ジュナカル)、カドアナカド、ポルカス、ぐだ攻めなど
    内容:パロディ・クロスオーバー、軽度のエログロホラーなど

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    417fgo

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    7主従聖杯戦争ネタの進捗。
    前回上げた物の続きです。
    (テスデイの民が書いています)
    聖杯戦争の説明してるだけですまない…
    尻叩きとしてしばらく置かせてください

      *

     見知らぬ生活感を漂わせた、見覚えのないリビングルーム。廊下の方には何枚かの扉、備え付けらしい家具の他に小物類や掲示物と複数の人物の痕跡を残すそこは恐らく、学生寮のシェアルームといったところか。しかしその学生らの気配がこの部屋どころか棟内どこからも失せているのは、恐らくは日中の騒ぎの影響だろうとデイビットは推測する。ユニバーシティの広い敷地内で、例の博物館を中心とした一部区域が封鎖されているとも考えられた。不法侵入は善くないことだが、今回もやはり状況が状況であったならば止むを得ない。
     木製のシンプルな椅子に前傾で腰掛け、組んだ指に顎を乗せて正面を見つめるデイビット。その右手にはくっきりと焼きついた赤い刻印がある。遮る物のない大きな窓から差し込むのは冷めた月光だ。その明かりだけで充分と照明も点けず、向かいには滔々と語る声が一つ。
    「……と、オマエが巻き込まれた“聖杯戦争”ってのはそういうもんだ」
     ソファに身を預け長い脚を組み替える姿が、まるでムービースターのように様になっている。ロックファッションに身を包んだ金の長髪を持つ男は、大型獣のように深い吐息に紫煙をまとわせ、二人の間の空間を白く濁らせた。
     聖杯戦争、それがデイビットが巻き込まれた戦いの名だった。今まで魔術世界とは無縁の暮らしを送ってきた者には、願いを叶える金の杯と、それを巡った魔術師達の争い、そして使い魔たるサーヴァント・英霊などの存在は、いくら当事者になったとして俄かに信じ難いものだろう。しかし男の説明にデイビットは耳を疑うような素振りも見せず、時折頷く程度であった。先程の窮地でも見せたような、高い推察能力と洞察力を併せ持つが所以だろう。
    「なるほど。説明感謝する、テスカトリポカ神」
     デイビットの謝意に、アステカの神の名で呼ばれた男は「これくらい構わんさ」と気さくに答えた。
     あの博物館での襲撃時にデイビットが呼び出した男は真実、古代アステカにて祀られし主神が一柱、煙る鏡・テスカトリポカであった。彼の説明によれば通常の英霊召喚で神霊をサーヴァントとすることはまず不可能であるはずだが、本来霊子を編んで構成される器を“今を生きる人の体”を作ってそこに憑依する形をとり、高位の神はここに現界したと言う。そもそも魔術師でもないデイビットの、詠唱も術式も何も無い“ただの呼びかけ”に応じたというのも相当異例なはずだ。実際、デイビットは先程まで召喚時の魔力消費に耐えられず意識を失っていたのだから。
    「……質問をしても構わないか」
    「ああ、いいぜ」
    「先程『ルーラー』と言っていたな。あれは?」
     まずは自己紹介からと握手を交わした際、テスカトリポカが名乗った、恐らくは彼のクラス名だ。サーヴァントは英雄をクラスという型にはめることで、召喚を可能とする。剣士であるセイバー、弓兵であるアーチャーなどの主要なクラスはテスカトリポカの説明にあったが、彼が現界するために発行されたパスポートに印字されたのは、そのどれでもないらしい。
     テスカトリポカはサングラスの奥で片眉を持ち上げるような表情をすると、一つ溜息を吐き出してからその問いに答えた。
    「本来、聖杯戦争ってのは七人のマスターと七騎の英霊が戦うものだと言ったが、例外というのはいくらでも存在する。ルーラーってのはその名の通り“裁定者”だ。儀式が正しく行われるよう、監督するための存在。聖杯によって選ばれ、聖杯によって召喚される」
    「……しかし、契約しているのはオレだろう」
    「そこなんだよ、兄弟。ったく、イレギュラーにイレギュラーが重なっちまった」
     煙草の灰を灰皿に落としつつ、やれやれと肩を竦めるテスカトリポカ。
    「ほんと、厄介なことになってるな、オマエは」
     気さくな声色とは裏腹に、睨むような鋭い眼光。中心に斬り込むナイフに似たそれに、心臓が胸郭から飛び出そうと強く拍動する。思わず胸を押さえるとそこで自身が動揺したことに驚き、デイビットは緩慢に手のひらに視線を落とした。神には、何かが見えているのか。
    「……こうなっちまっては、仕方がない。しばらくは身を潜めて期を待つべきだろう。監督役とやらに捕まるのも困るしな」
     煙草を揉み消し立ち上がるテスカトリポカは、「行くぞ」と顎をしゃくり、“煙る鏡”その名の通り鈍色の煙を纏い始める。説明も足りぬまま唐突に話を切り上げたのは、どうやら扉の向こうから近づいて来る足音がその監督役ということらしい。捕まるとどう困るのかは知らないが、不機嫌そうに見える神にわざわざ抵抗するほどデイビットは愚かではない。椅子から離れて歩み寄り、テスカトリポカの煙に包まれるままに任せる。
    「おまえにも聖杯にかける願いがあるのか?」
     親し気に肩を組んでくる己のサーヴァントを見やり、デイビットはふと浮かんだ疑問を投げかける。そんなマスターの度胸の据わり具合にテスカトリポカは一瞬呆気に取られると、くつくつと喉奥で笑った。
    「ルーラーにそんなモノは無い。オレたちはただ、生存を懸けて戦うのさ」
     二人の男の姿を包み隠した煙はやがて空間にほどけるように消えていく。聖堂教会から派遣された監督者が扉を開く頃には、室内には煙草の匂いが残されているだけだった。

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