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    moe3na0

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    高校生御→沢。さっわが吸血鬼の末裔

    その血の所以吸血鬼。人の血を糧とする怪物。しかも血を吸われた被害者も、吸血鬼化する恐れがある。
    そんな簡単に数を増やせる危険極まりないモンスターなど、見つかれば即排除されるに決まっている。何しろ彼らはメジャーすぎて、弱点すら広く知られているのだ。
    そこで、日本に住むある吸血鬼の一族は考えた。一度敵に回せば殺すまで追いつめてくるだろう人間と、敵対ではなく共存できないかと。何も日本全国民と和解しようとは望まない、ごく一部の地域で構わない。むやみに襲わない、吸血鬼の労働力を提供する代わりに血を少し貰えないかと、そういう契約をしたかったのだ。
    もちろん、交渉は当初上手くいかなかった。辿り着いたある山奥の村で吸血鬼の怪力を見せた時点で、当然ながらひどく怯えられてしまったのだ。一家で村はずれの小屋に隔離され火をかけられそうにもなったが、その前に吸血鬼が訴えた。自分たちは逃げようと思えば逃げられるがそうする気はない、村人が望むのならこのまま焼け死ぬ、しかし自分たちの死をもって吸血鬼側が本気であるのを理解して欲しいと。
    自分たちの後にもし同胞が訪れたら、彼らの話を聞いてやってくれ。
    それきり、さあ燃やせと静かになった吸血鬼たちをすぐ燃やすことはせず、とりあえず村人たちは一週間時間を与えた。相手は、子どもの姿をしていても牛を軽々と持ち上げた吸血鬼だ。やろうと思えばあんな粗末な小屋、蹴って破って抜けられるのに、松明を持った村人が迫っても彼らは逃げなかった。
    彼らの願いは本気なのではないか、だとしたら化け物とはいえ一方的に殺すのは寝覚めが悪い。化け物であっても、まだ彼らは悪事を働いていないのもある。だから一週間は村人たちが話し合う時間であり、本当に吸血鬼が安全かどうか試す期間でもあったのだ。
    そして吸血鬼たちは、一週間後解放された。その間に襲われた村人がいなかったのと、血の対価になる労働力として借りた怪力があまりにも魅力的だったからだ。
    だが、他にも。おおっぴらには出来ないもうひとつの魅力が、彼らにはあった。
    「御幸先輩だって、もう知ってるっすよね…」
    キレた俺が余程怖いのか。俺の部屋の角にうずくまり目を逸らしたままボソボソと話す沢村に、おかげさまでと吐き捨てる。
    「確かに、俺もクセになってないとは言わねーけど。実際、気持ち良いしな」
    「らしいっすね。噛む方専門の俺には分からないけど、血を吸われるのって性的な快楽?ってのがあるみたいで」
    だから沢村の祖先たちは労働力の対価として血を貰うこともあれば、気持ち良くなりたいから血を吸って欲しいと逆に頼まれることもあったらしい。しかもそれは現代まで続いていた。
    「田舎なんで先祖代々、そういう情報が受け継がれてるんすよ。気持ち良くなりたきゃ沢村に血を吸って貰えって。それで」
    「それで、俺以外の血を吸うから外出したいって?」
    「契約なんで仕方ないでしょ。俺んち、人間と婚姻を繰り返してるうちに人に近くなってって、今や血を必要とするのなんて、俺くらいしかいなくて…今回の人はまだ若いのに奥さん亡くして落ち込んでるから、ちょっといい夢見させてやりたいって」
    それだけだと沢村はいうが、でもダメだ。連れ合いを亡くしたって男には同情する。でも沢村の唇がその男の首に触れるのかと考えると、我慢出来ない。
    どうせこいつのことだから腕を広げて抱き締めて、大丈夫って囁いて背中撫でたりするんだろ、いつも俺にするみたいに。痛いのは一瞬です、怖くなくなるまで待ちます、嫌ならやめるんで、そう優しく宥めて覚悟が決まるまで待ってくれるんだ。密着した身体の温かさを、野球をしている時の騒がしさとは比べ物にならない穏やかなあの声の心地良さを、何度も味わっているから知っている。ともすれば血を吸われる快楽よりも、もっと快いあれを。
    だからこそ、許可出来るものか。
    「おまえ、俺以外の血は飲まないって約束しただろ」
    「でも、先祖代々の契約なんで」
    「ダメだ、絶対ダメ。おまえだって言ってたじゃねーか。知らない人間の血は吸いたくないって。薬や酒浸りだったらその成分が血にも混じってるから、下手したら悪酔いするんだろ」
    「今回はあながち知らない人じゃねーですし、それにその人、ここ数週間は酒ばっか飲んでたみたいですが、俺に会うから断酒するって」
    「信じられるかよ。おまえ、自分の立場分かってんのか。もしアルコールが残っててみろ、酔ったところを誰かに見られたら大問題だぞ。そもそもだ、親の借金だって放続放棄すりゃ払わなくていい時代なんだよ。そんな大昔のカビの生えた契約、ぶっちぎったって誰も怒らねぇだろ」
    「けど――っひ」
    あまりにも聞き分けがない沢村に、心底腹が立つ。衝動のまま沢村の顔の横の壁を蹴れば、強情な吸血鬼はびくりと身体を竦ませた。部屋の角に追い詰めて傲岸に見下ろしてる俺と、へたりこんで小さくなって震えてる沢村。ぱっと見、これで沢村のが吸血鬼だって言われても、誰も納得しないだろう。
    「御幸先輩…約束破って怒ってるのは分かります。でも今回だけは許して下さい。本当に気の毒な人なんです。一回だけなんで」
    いつまでもこうしていても事態が進まないと判断したのか。俯いていた沢村が、おずおずと顔をあげた。琥珀色の目は血のような深紅に、そして口からは鋭い牙が覗いている。高校生の沢村でなく、吸血鬼がそこにいた。
    「御幸先輩だって、気持ちいいから俺に血をくれてるんでしょ? めんどくさいこと忘れられて助かるって言ってたっすよね。あれと同じ気持ち、他の人にもちょっとだけ分けてやって下さい。お願いします」
    吸血鬼らしく、人間の俺なんて制圧して出ていけばいいのに。異形の姿を見せながら、あえて見知らぬ誰かの為に頭を下げる沢村を見て、限界だった。
    「っ、俺が本当に、その程度で血をやってると思ってんのかよ…っ!!」
    「えっ、うわっ!?」
    腹立ちのまま沢村の腕を引っ張って、床に引き倒す。油断していた沢村は呆気なく転がったので、その上に覆いかぶさった。逃げられないように。
    「性的な快楽なんてな、貧血覚悟で痛い思いしておまえに血を吸われないでも、いくらだって簡単に手に入るんだよ」
    自惚れてる訳じゃないが、これでも結構モテる方だ。青道だけでなく、他校にも。街で年上の女に声を掛けられることも珍しくない。その気になれば遊び相手には不自由しないのにだ。
    「それでもおまえを選んでる意味を、少しは考えろよ!!」
    先輩だから、相棒だから。そんな理由で一年以上も血をやれるものか。
    紅い目を大きく見開いてる沢村に構わず、強引に唇を重ねる。口と口が触れ合ったのは初めてだからだろう、くぐもった悲鳴が聞こえたが、無視して舌を捻じ込み咥内を舐った。鋭い牙に舌が触れて血が出たが、相手は吸血鬼、構わずにキスを深くする。
    「沢村…」
    たまたまこいつの秘密を知ってしまったことから、興味本位で始まった関係。それだけの筈だった。
    けれど途中から、気付いた。男に首に吸い付かれても平気って、普通ならあり得ない。沢村より付き合いの長い倉持やゾノがしてきたら、気持ち悪いって即行蹴り飛ばす自信がある。降谷や小湊弟でも同じだ。でも沢村だけは平気な理由。
    「考えてくれよ…」
    俺をこれ以上傷つけない為にか、牙をひっこめて普通の犬歯に戻った歯の先端を舌で撫でる。真っ赤な顔をした沢村の熱を持った頬を撫でながら、血の混じった唾液をたっぷり流し込んだ。
    摂取した薬品やアルコールの成分が血に影響するように。俺の体内に満ちている沢村への想いも、血にしみついてこいつに伝わればいいのにと思いながら。


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