倒幕しなかった1340年 赤沢常興は恐る恐る閉じていた目を開いた。聞こえていた雑踏の音から察していた通り、そこは賑やかな大通りだった。
彼はまず、自分がどこにいるのか確かめようとした。自分のよく知る、信濃でないことは確かだった。彼が元いた世界の殺伐としていた空気とは全く違う、戦の気配がない穏やかな町並みがそこにはあった。
そして彼はこの風景に見覚えがあると気付いた。鎌倉だ。しかし、倒幕によってこの町並みは一変したはずだ。だが眼前には美しい鎌倉の町並みが残っている。
そこで彼は本来の目的を思い出して慌てた。なぜ信濃ではなく鎌倉へと来てしまったのか。彼は貞宗がいる場所を目指してやって来たはずだ。この世界であれば、貞宗を救えると信じて。
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