人妻(概念) 死蝋の兄貴は本当にわかりやすい。単純で実直で、そして一途だ。
腐乱と死蝋は掠奪した品々のうち、高く売れそうな物を見繕っていた。良い品があればこっそりと懐へ入れることも出来る。普段であれば嬉々としてこなすが、死蝋はやる気がないように、のろのろと手を動かしていた。
腐乱は死蝋の後ろ姿を見やる。屈んだ腰のあたりが微かに震えていた。息を詰めるたびに、肩がわずかに揺れる。そしてそれを隠すように、ぞんざいな手つきで屑を投げ捨てていた。
そんな姿を見るのは、初めてではなかった。昨夜も死蝋は瘴奸の部屋に呼ばれていた。そんな時はいつも、死蝋は少しだけ壊れたようになる。それが、妙に気になって仕方なかった。
腐乱は足音を立てずに死蝋の背に寄った。一瞬だけ躊躇したが、そのためらいは妙な高揚にかき消された。
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